第11話 面倒な事は右から左へ
3人が狩りあげたそれぞれの獲物を持ち帰った男比べの場所。そこには硬く握手をしている長と大将以外立っている者はいなかった。他の参加者は全て燃え尽きたかのように地に並び肌色の野となっていた。
「クッソおもてぇ! 奥鳥羽! おめぇ自分の分ぐらい持てよ。」少年は担いでいたミノタウロスとサーギラを投げ落とす。
「あたきにゃでかすぎてぞろびくごとなるけんさ。今度なんかおごっちゃるけん。ね!」
「ったく。」少年は彼女らにいつも力仕事を押し付けられていた。
「おう、戻ってきたか。」白い歯を見せながら大将が声をかける。
帰ってきたかんな達に気づいた頂の二人は筋肉の野を歩き彼らの元に来るとドカリと腰を落とした。
「もうばか騒ぎも終わったみたいね。ほら。来る!」かんなは鎖をひっぱる。
「ひっぱるなって! わかった。わかったから! ったく!」鎖の先には手枷を付けたイオラがいた。
「ほぅ。サーギラ。お前たちだったか。」転がされた男の顔をみて長は言う。
「この三人以外にゾンビが二十。デュラハンが一人。全部虚体化してしまいました。申し訳ありません。」かんなは状況を長へ報告する。
「いやいや、謝るのは我らの方ですゆえ。いやぁできたお嬢さんだ。」
「さて、どうするかのぅ。そうさのぅ、サーギラとミノタウロスはわしが連れていこう。こいつらを扇動したものがおるかもしれん。」
「それでは、こいつはどうするんです? 今すぐに話が出来そうなのはこの体力お化けの人狼だけですが?」かんなは鎖を引いてあまりものになったイオラを指し示す。
「そいつはそちらに任せよう。」
「なるほど。」大将はその判断から長の考えを一つ理解した。
「ちょちょちょ。なんで俺だけこっちなのさ! 首謀したのは俺じゃないんだぜ!」
「わからんと?」
「あなたは多分予備。多分だけどね。」
「予備? 予備ってなんのだよ。」イオラはクリンと首を傾けて尋ねてくる。
「戦ってる時から思ったけどやっぱ頭は弱いのね。あぁ、身体の方に全部取られてるんだ。」
「何だこのぅ!」ガルルとイオラは牙をむく。
「ああ、予備ってあれか。あの二人があっちで口封じされた場合のってことか?」
「たぶんね。向こうでこいつらに指令を出した奴がいるならそいつらが口封じをするのは十分考えられるし。」
「い!?」予想外の見方から出た暗殺の可能性にイオラは度肝を抜かれる。
「頭に逆らって独断行動やけんねぇ。多分相当上がからんどるんやない?」
(予備っていういい方したけど実質保護ね。)奥鳥羽の言いようからかんなはそう判断する。
「あいわかった。引き受けよう。」大将は膝を打ち即断する。
「面倒をかけてすまない。」長は深く頭を下げた。
「かまわん。その分わしらもこいつを使わせてもらう。組手の相手としてな。」
「じゃぁ、名前つけんと。んーポチとかにする?」奥鳥羽は重くなる空気を思ったのかイオラを茶化す。
「犬じゃねぇよ! 俺は狼だ!」
「いや、怒るのそこじゃねぇだろ。」
「あ?」またも彼女はクリンと首をかしげる。
「名前の方だよ名前の方。あるなら言っとかねぇとトンデモねーのつけられるぞ。こいつらネーミングセンス壊滅なんだからな。ジャンジョーンズ3世とかつけられるぞ。」
「そんなのつけないわよ。ペロとかペコとかショコラ、もしくはベリーでしょ。女なんだから。」かんなはかわいらしい名前を付けようとする。
「そんなあいらしい感じじゃないやろこの毛むくじゃらは。ゴンとかそういうオスっぽいのがよかて。」
「ほら壊滅だろ。」
「俺はイオラだ! 勝手に変な名前つけんな!」犬歯むき出しで吠える。
「じゃぁ愛称かコードネームにしましょう。」
「そやね。」かんなと奥鳥羽は構わずイオラに何らかの呼称を付けようとする。
「お嬢、奥鳥羽。そりゃいくらなんでもひどいでしょう。」
「じゃぁ、あんたがそれの面倒見なさい。責任もってね。」
「え?」180度どころではないアクロバティックな話題の転換をされた少年は言葉に窮した
「散歩とかあたし達したくなかもん。」
「トイレの躾とかわかんないし。」
「まぁ、監視も必要じゃしのう。この二人にはそげな事は無理じゃし。新たに誰か選ぶよりかは早い。儂からも頼む。」大将は端からこの二人に監視などできないとわかっていた。
「……うぃす。」それは彼も重々承知だった。
「よろしくな!」イオラはもうふっきれていた様だった。自分に必要なのはこういうところなのかもしれないと彼は考えた。
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