第5話

風呂から上がると新しい下着と着替えの服が置いてあった。今日が日曜日で本当に良かったと思った。また彼女を、抱きたいなど決して思えない。きっと思えないはずだ。思ってはいけないし、思いたくない。ただ、自信がないのだ。一回こうなってしまったため、自分に自信がない。菜穂子を愛している自信はあるし、菜穂子と娘が俺の命のようなものだ。着替えながらまた罪悪感に襲われた。すると、菜穂子が脱衣所の扉からピョコッとかおをだして朝ごはんできたよといつも通りの笑顔で呼びに来た。食卓には俺の好きなものばかり並んでいた。すると美雨が詩音の手を引いて連れて来た。「あー。パパの好物ばっか、、、。ずるいんだぁー」いつもならすかさず「いいだろー。これが愛の力だ!」なんてほざいているのだが、そういうわけにもいかず「あぁ、ずるいよな、、、。」と言った。美雨は怪訝そうな顔をして「パパ具合悪いの?それとも頭と顔が悪いの?」今日ほどこの言葉が刺さる日はない。「パパは頭と顔だけじゃなく膝も腰も悪くて体のあちこちがろうかしてるんだよ。」と返すと美雨だけでなく、詩音まで怪訝な顔をして「ママ〜パパがおかしいよー」と言った。すると菜穂子は笑いながら「元からよ。でもママはそんなパパが大好きよ」と言ったもんだから俺は涙腺が緩んで涙声で「ありがとう。」としか言えなかった。いつも好きや愛してると軽々しく言ってきたけれどほんとうに伝えたい時には言えないもんだということに気づいた。言う資格はないけれど、、、せめて菜穂子だけにでもあいしいると伝えたい。今日はやめよう。俺は今日は愛していると言わないことにした。伝わらないと嫌だからだ。朝帰りのやつにその日中に愛してるとかお前だけだとか言われても菜穂子も呆れかえるだろうし信憑性にかけるだろう。今日の朝ごはんは俺の好きなものばかりだったけれどちっとも味を感じることができなかった。彼女はどうしているだろうか?そういえば彼女には彼氏がいたんではないか、、、。それではとんでもないことをした。ダブル不倫?浮気?ではやいか。なんてことだ。もしそれが原因で別れたら、、、ましてや暴力を振るわれたりしていたら。考えるだけで俺は真っ青になった。家族のことだけを考えようとは思ったがそれとこれとは別だ。とりあえず彼女に 今日は本当に申し訳なかった。俺は 彼氏となにかいざこざのようなものは起きていませんか?こんなことを聞いてすみません。ただ、なにかあってこちらで対処できる場合はお知らせください。 とメールをした。そのときちょうど朝ごはんを食べ終わった美雨が詩音をつれて隣のおばあちゃんちに出かけていったところだったため手の空いた菜穂子が覗きこんできた。「要さんって律儀よね。その優しさがわたしには今はつらい。でもね、今要さんは下心なしに相手の子を心配しているのがいたいほどわかるの。あなたはすぐ顔にでるもの。」やはりバレていたのか。俺は「悪かった。言い訳のつもりはないんだけれど記憶がないんだ。」というと「信じるよ。」と菜穂子は一つ返事で返してくれた。その日の晩は菜穂子から迫ってきて一つになった。そして菜穂子は俺が眠りにつく前にまどろんでいるとキスをして耳元でこうささやいた。「誰にも渡さない。昨晩のこと忘れられた?好きよ、要さん。大好き。」これには俺もやられてしまった。こんな可愛い嫁がいるのに、なぜ不貞を働いたのか自分が不思議でならない。

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×35 阪下梨帆 @ribosome

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