小悪魔の誕生

 最初は3人の男の人とだけメッセージのやり取りをしていた私でしたが、5人、10人としだいに人数が増えていきます。

 コツをつかむと簡単でした。3人と関係を持つのも、100人と関係を持つのも同じです。次から次へとお友達の数を増やしていきます。


 最初に「文字のやり取りだけです。実際にお会いするつもりはありません」と断っているにも関わらず、「それでもいいから!」とメッセージを送ってくる男の人の多いこと!多いこと!

 しかも、そのほとんどがちゃんと約束を守って、本当に文字のやり取りのみで、それ以上は一切要求してきません。

 ただ、誰かに相談したりグチを聞いて欲しいだけなのです。そんな人が世の中にわんさかあふれ返っています。


 マッチングアプリのシステムについているメッセージだけでなく、メールのやり取りをすることもあります。


 さらには、チャットアプリを導入して、チャットでやり取りもするようになりました。チャットというのは、元々リアルタイムで短いメッセージをやり取りするサービスだったのですが、今では暇な時に気軽に返信をするのに利用する人が増えています。

 そのチャットアプリに何十人も男の人を登録して、相手から連絡があるたび返信を返すという作業を繰り返します。


 そのほとんどは単なる人生相談です。

「仕事でこんなつらい目にあった」とか「家庭が全然うまくいっていない」とか相談を受けると、「それは大変ね」「つらかったわね」などと共感したり「それでどうしたの?」と質問したり「こうしたらいいんじゃないの?」とアドバイスを送ったりします。

 それだけで、相手の男の人は安心してくれるのです。


 もちろん、中には下心丸出しで「ねえ、ねえ、電話で話そうよ~」「会って、一緒にどこかに遊びに行こうよ~」などと誘ってくる人もいます。

 そんな人は断固としてお断り!あまりにもしつこい場合には、関係を切ってしまうこともあります。

「関係を切られてしまっては大変!」と、ますます男の人たちは素直になるのでした。


 なんだか小悪魔みたいですって?

 そうかもしれませんね。でも、私としては純粋にこの関係を楽しんでいるだけなのです。一流の作家になるため、より多くの情報を集めるために、あのひとの命令に従って大勢の人と文字の世界でやり取りをしているだけなのです。

 ある意味、小悪魔や悪女みたいなものかもしれません。そう思われても構わないので、私は使命を果たします。そのくらいの覚悟はとうの昔にできているのですから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る