~実戦経験編~

戦場に放り出される

 インターネット上に公開するための長編小説「音吹おとぶき璃瑠りるの誕生」

 その作品を書くために、あの人からこう言われました。

「最初は一番大切なことだけ書きなさい。『これだけはどうしても書かなければならない!』ということを優先的に書いていき、残りはオマケでいい。こまかい描写はしなくていい。そういうのは後から学んでいけばいい。こまかい部分にこだわっていると続かなくなる。とにかく書き続けること、それが重要だから」

 長編小説を書くのに最初に言われたのは、「こまかい部分にこだわらず、一番大切なことだけ書く」

 簡単に言えばそれだけでした。


 私はあの人に言われた通り、なるべく細部にはこだわらずに書くようにしました。あの人との出会いからこれまでのことを思い出しながら。

 書き始めた時にはどうしてもこまかい描写もしてしまっていたけれど、慣れてくると段々とコツがつかめてきました。言葉や理論でではなく“感覚”として。

 世の中には「習うよりも慣れよ」という言葉あります。まさに、そんな感じ。ゴチャゴチャと頭の中で考えるよりも、実際に手を動かして書いていく。その方が早かったりするものです。しかも、その方が上達も早いし。

 私は小説を書きながら「小説の書き方」を覚えていったのでした。


 それは、ある日突然ポ~ンと戦場に投げ出されたようなもの。何も知らず、何もわからないまま戦場に放り出され、戦いながら武器の使い方を覚えていく。武器の使い方だけではなく、身の守り方、敵からの逃げ方、食料の確保の仕方などなど。戦場で生き残るためのありとあらゆるすべをその場で覚えていったのです。

 ただし、ひとりではありません。あの人がいつも背後から守ってくれていました。いつも遠くから見守ってくれていて、何かあればサッと飛んできて守ってくれる。援護射撃してくれる。それがすごく安心感になっていて、自由に筆を振るうことができたのでした。

 たとえば、こんな風に。

「君は文章力はまだまだだ。だから、誤字脱字のチェックや文章の校正はやってあげよう。その代わり純粋に小説を書くことに没頭しなさい」

 あの人はそう言って、文章校正の全般を担当してくれました。おかげで、私は小説を書くことに専念することができました。

 他にも、あの人と私が出会ってからこれまでのことで、私が忘れていることがあれば思い出させてくれたり補足してくれたり。いろいろとお話をしてくれて、そこから新しいアイデアを思いつくことができたり。私が最高の小説を書けるように、環境を整え、誠心誠意尽くしてくれたのでした。

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