長編小説を書き始める

 小説を書き始めたばかりの時は、1日に30分も書き続けることができませんでした。

 けれども、あの人の言う通り毎日続けていると、ちょっとずつ長く書けるようになってきました。30分が1時間、1時間が1時間半と執筆時間が徐々に伸びていったのです。


 内容の方にも変化がありました。

 最初は取りとめのない文章ばかり書いていたのに、徐々にまとまりが出てきて、だいぶ筋道すじみちを立ててお話を作ることができるようになってきました。

 それから、段々と長い小説も書けるようになってきました。最初の何作かは、すぐに読み終わるような超短編とか、長編作品の出だしだけ書いたものばかりでしたが、もうちょっと長い作品も書けるようになってきたのです。

 さすがに本1冊分の長編作品を最後まで書き切ることはできませんでしたが、それでも頭の中でオープニングからエンディングまで構想することくらいはできるようになってきました。

 大きな流れとでもいうのでしょうか?あるいはプロット?そういったものを作ることができるようになったのです。


 ある日、いつものフードコートで会話していると、あの人からこう言われました。

「そろそろ本格的に長編作品に取りかかってもいいかもしれないな。それも、インターネット上に公開して」

「インターネット上に公開?」

「そう。その方がきたえられるからね。きっとストレスはまるだろうけど、成長も早い。今、1日に何時間くらい書けるようになってる?」

「2時間か、長くても3時間くらいです」

「なるほど。目標の4時間にはまだ届いていないけれど、それも実戦経験を積みながら伸ばしていけばいいか。よっし!じゃあ、本格的に長編小説に取りかかろう!」


 こうして、私は長編小説を書き始めることになりました。

「でも、どんなものを書けばいいんですか?」

 私がそうたずねると、あの人は答えました。

「どんなものでもいいさ。ありのままの君の姿、ありのままの君のおもいを素直にぶつければいい。そういうのが一番人を感動させる」

「じゃあ、このことを書いてもいいですか?あなたとの出会いを。一流の小説家を目指す1人の女性の物語を」

 それを聞いて、「ふむ」とあの人は一言ひとことうなると、しばらくの間考えてから続けました。

「完全に空想の物語とはいかないけれど、最初はそういうのでもいいかもしれないな。自分の体験を書くのならば、日記やエッセイを書くのと負担は変わらない。とにかく今は書く“クセ”をつけるべきだ。毎日4時間書くクセを。君には決定的に“筆力”が足りない。今は筆力を身につける必要がある。そういう意味では最適の方法かもしれないな」


 そうして、書き始めたのがこの小説です。

 この作品。「音吹おとぶき璃瑠りるの誕生」です。

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