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 ユウキさんのお祖母さんが亡くなったのは三ヶ月ほど前の事らしく、遺品整理の際に手紙の詰まったお菓子の缶を見つけたらしい。その中には大量の手紙が入っていたそう。

「偶然見つけたんです。多分、一緒に整理していた母は気づいていないと思います。そのまま捨てることも出来たんですけど、ゴミ袋に入れるの躊躇っちゃって。結局自分の部屋へ持って行きました。で、悪いなって思いながら手紙を開いたんです」

 そこでまた、ふふ、と笑った。

「そこには何が書いてあったんですか?」

 続きを催促すると、目を細めて言った。

「庭のイチョウはまるで僕だ。君の事を考えるとポッと色づき、ハラハラと積もる様は君への募る思いのよう」

「え?」

「祖父が祖母に当てたラブレターです」

「・・・なるほど」

 その、すごく、あれだ。

「すごく詩的でしょう?」

「はい」

「ふふ、どの手紙にもひたすらに祖母に向けた言葉が綴ってあるんです。とても詩的な言葉で」

 恋愛にのぼせているでしょ? と笑うユウキさんにつられて口角が上がる。

 確かに。

「素敵なお爺様ですね」

「いや、素敵かどうかは。どちらかと言うと、厳しくて寡黙な人というイメージだったので、僕にとっては少し近寄りがたい祖父でしたから」

「そうなんですか」

「だからこそ、すごく意外で。あんなに怖い人がこんなに詩的な愛を綴れるなんてと思ったら、途端に可愛くなってしまって」

「ふふ」

「考えてみれば、怒りっぽい人でしたが祖母に対して怒っているのは見たことが無かったかもしれません。今になって祖父との距離が縮まった気がします」

「それは良かったですね」

「出来れば生きていた頃に距離を縮めたかったですけど、きっとそれじゃぁ手紙を見つけられなかったから」

 お爺さんは六年前に他界しているらしい。「見つけてよかったです」とユウキさんは残して店を後にした。

 きっと、そのラブレターはユウキさんの宝物になるんだろう。想いのこもったラブレターなんて捨てられないし、大切な思いは捨てたくないはず。だって、それがなかったら彼は生まれていなかったのかもしれないのだから。

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