18「株を守りて」

18―1

 ワイスにあるサムが暮らす一軒家。

 サムと、友だちである〝ちぃ〟により毎日のように騒がしかったこの家も、二人が好きなアニモーションの話で意気投合して以来、その有り様を変えていた。

 ほんわかとした、穏やかな時が静かに流れる。


「サムのバカ! もうイジメてあげないんだから!」


 ……だが、その期間はあまり長くはなかった。


「ちぃなんか居ない方が清々するよ!」


 家を壊すかと思うほどのちぃのわめきに、これまた負けないサムの叫び。 

 それを何度か繰り返した後、ちぃは辛抱ならなくなったのか周りに当たり始める。


(え、ちょ、ちょっと……)


 部屋の隅でうたたねをしていたルシー飛び起きた時、ちぃの姿はなかった。半開きになった扉が、ぎぃぎぃと二三鳴く。

 これまで騒ぎもなかった矢先のこの大喧嘩。ルシーは、混乱する頭を動かし、サムのもとへ向かう。

 当然、サムは泣いていた。しかし、事情を聞くより先に、口は事情を告げだした。


『さいきん新しく始まったコウソク…… なんとかってやつが面白いってちぃに話したら、ちぃは好きじゃないって言って…… そうしてるうちにけんかになって』


 泣いている上に、酷く断片的な内容だっかがそれでもなんとか事情を知る事が出来た。

 好きなアニモーションを勧めたら嫌いだと言われ、ついカッとなりちぃの好きなアニモーションの事を馬鹿にしたらしい。

 それがちぃのかんしゃく玉に触れ、大喧嘩となった様だった。

 サムが馬鹿にしたのは〝千年紀カオ〟という、これまで二人で話し込んでいたアニモーション。ちぃにしてみれば、二人の絆を汚された気持ちになったのだろう…… ルシーは漠然と乙女心を理解した。

 サムを宥めつつ、サム自身にも非はあると指摘し、諫(いさ)める。


「うん…… 確かにボクも悪かったよ」


 サムは明らかに落ち込んでいた。

 落胆は、コラ化した不安定な精神状態をますます悪化させる事に繋がる。あまり良い状態ではない。

 ならば、安定させることが先決である。


(しかたない、かな)


 ルシーは、決意し目を閉じる。テレパシーを送る、その為に――

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