4-4
戦い後、無事に列車は通過した。
もうじき、街に列車のはしゃぎ声が鳴り響く事だろう。
そして、こちらの依頼ももうじき終わろうとしていた。
《蜈峨k》
「これは…… 光る」
ザックが占術師のラーソに願い出た、文字化けの解析である。
《荳九&縺》
「これは…… 下さい」
ザックは息を呑み見守る。
光る。そして、下さい。
ここまででも、荒らしは明確なメッセージをチャットしていた事が判明した。
だが、それらの文字を繋げてみても、適切な意味は見い出せない。
「もう一つありますわ」
《闃ア繧》
「……花を、ですわ」
ふう、とラーソが息を付く。これで解析は終わりだった。
(光る花、か)
その時、ザックは閃いた。
「光る花。ブリザードフラワーのことですね」
それは、夜になり、雪が降った時にのみ見ることが出来るというレアリティの高い花である。
あの荒らしは生前、何かを探しに森に入ったとレリクが言っていた。
ということは、ブリザードフラワーを求めていた可能性が高い。
ザックは、解析結果に満足し、礼をする。
「解析だけでそこまで喜ぶなんて、変わっていますのね」
変わり者に変わっていると言われ、思わず笑いがこみ上げる。
今日はなんとも楽しい日だ。心の中で再びラーソに礼をし、小さく笑う。
そろそろ行こう、そう思い席を立つ。
「あ、宜しければ登録させて貰えますか?」
慌てた様子のラーソに呼び止められた。
登録という言葉に、ザックは悩む。
が、しばらく後、受ける旨をラーソに伝えた。
間を空けず、懐に手を伸ばす。手に取った物は、小さな手帳。
ラーソもまた、同じく手帳を取り出すと、めくったページに人差し指を据える。
「わたくしの周波数は……」
ザックはラーソの言う周波数を、自分の手帳に書き記す。そして自分も周波数を語る。
チャンネル思念にも音があるように、個人の魂にも音がある。
シンクロ・シティにいる間、知っている個人周波数を受信すれば、いつでもその人物と意思疏通(テレパシー)が出来るのだ。
教えられた周波数は基本、〝自分にだけ見える色〟で記録する。そうすることで、他者に情報が漏れることがないためだ。
「今度はゆっくり占って差し上げますわ」
ラーソの右手がザックに伸びる。
「楽しみにしています」
互いの手が重なった。
こうして、違う道を歩く旅人達は知り合いになり、絆を深めていく。
今まさに、新たな絆が生まれたのだった――
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