第4話 冒険者ギルドにて-3

 酒場のような施設は、そのまんま酒場だった。小さな丸いテーブルが1,2,3,4,5個あり、椅子が4個ずつ添えてある。

 冒険者だと思われるお客さんがえーと複数人座って、何か食事をしたりお酒っぽいものを飲んでいたりする。リグさんのお陰で絡まれたりすることも無さそうで良かった。



「おーい、リグゥ!こっちだぁ」

 あれ?ギネスさんが手を振っている。

「何やってんだギネスお前、仕事はどうした?」

 そうだよね、本部に問い合わせるとか言ってたじゃないですか?

「いいからぁ、ここ座れぇ。仕事なら済ましたさぁ、問い合わせはしたぁ。返信待ちだぁ」

 ハッハッハと笑うギネスさんに僕たちは白い眼を向ける。


「なんだぁその目は、まぁいいかぁ。おーいプラム!注文だぁ」

「何やってんのマスター! 昼間から酒かい?」

 僕らと年齢が変らないような猫耳の女の子がテーブルに来た、プラムという名前か覚えておこう。深い意味は無い。


「あぁうるせーなーいいんだよぉ、大事な激レアスキル持ちぃの接待なんだぁ。

 俺とリグにはぁ、いつものやつぅ。あんちゃん達にはぁ、なんかジュースでも頼むぁ」

「おいギネス、子供をダシにして酒飲むなよな」

 リグさんがツッコんだ。

「お前もうるせーなー、細けぇこたぁいいんだよぉ。実際に接待ではあるんだからぁよー」

 えっそうなの?僕は話の流れを見守る。

「本当なのマスター?なら、仕方ないか、ちょっと待っててね~」

 プラムさんは注文をとって戻っていった。

「接待って、本当なのか?」

 リグさんは、問う。


「何度も言わせんなぁ、本当だよぉ。

 本部に問い合わせしたらなぁ、スキルの詳細は不明だから調べて返信すっけどぉ、ちゃんとぉ確保しておけと督促されたんだぁ」

「お前そんな大事な話を大声でするのは拙いだろ」

 リグさんが言う、僕もそう思う。周囲の冒険者たちは、静かになって聴き耳を立てているみたいに見える。

「逆だ、逆ぅ。こんだけ大きな声で言ったにも関わらず、妙なちょっかい出すバカは即御用ってこったぁ。増してやぁ、お前が連れてる子供たちだぞぉ」

 ギネスさんなりに気を使って、大声で話していたということらしい。そうだ、リグさんはこの街の兵士長なんだ。



「おまたせ~。オッサン2人にはエールっと、おにいさん達には搾りたてのオレンジジュースよ~」

 プラムさんは、注文した飲み物と炒ったグリーンピースみたいなのを置いていった。

「ほらぁ、かんぱーい」

 大人2人はビールのようなものをグラスを軽く当てた後煽った、僕らはジュースを飲んだ。

「お兄ちゃん、このジュース美味しいよ」

「うん、美味しいね」


「しかし、あれだ。本部も興味津々だぜぇ、あんちゃん達にはよぉ。場合に依っちゃあ、魔王様まで伝わるかもしれねぇぜぇ」

「えっそんな大事になるんですか?」

 僕は慌てて問いただした。『魔王』って響きはなんだか恐ろしいけど、それは僕の勝手な想像だ。皆は普通に暮らしてる僕ら何ら変わらないし魔族の王様って意味かもしれないし・・・頭の中がぐるぐるしちゃう。

「まぁ成るようにしかぁ成らんさぁ」

 そうなんだろうけど、そうなんだろうけど、その答えはひどくない?


「あっそうだぁ! リグ、後で練兵場借りるぞぉ!いいなぁ?領主に許可もらってくれぇやぁ」

「あ~ん?今からか、無理だぞ。明日にしろ」

「明日でも構わねぇけどぉ、早めにぃ頼むぁ。あんちゃん達、明日開けておいてくれぇなぁ。謎スキルの実践だぁー」

 なにそれ?聞いてないよー。

「お前いきなりだなっ、見てみろアキラとカスミが呆気に取られてるぞ」

 霞の方を見ると澄ました顔して豆を齧っている、お前聞いてなかったろ!そんな風な話をしていると、ギルドカウンターのある方からアニタおばちゃんが呼びにやってきた。

「あらまぁ、遅いからどうしたのかと思ったら・・・。ほら、あなた達ダメな大人は放って置いて続きをするわよ」

 残りのエールを一気に煽ったリグさんと一緒にカウンターに戻ることにした。


 ギルドカウンターに戻ると、アニタおばちゃんが注意点を丁寧に分かりやすく語ってくれた。

 

 冒険者ランクFの僕たちは、ランクEに上がるまではギルドのカウンターで職員が適切な仕事を割り振ってくれるそうだ。また、ランクEに上がらないと、入り口手前の掲示板に張り出してある依頼票の仕事は受けられないと説明された。これは、身の丈に合わない危険な仕事から初心者を保護する為だという。

 

 ランクEへの昇級は、ギルド職員の担当者の判断に委ねられるそうだ。特例で本部及びギルドマスターの判断でランクを飛び級することもあるらしい。

 

 ランクD以上の昇級については、同ランクの複数人合同での昇級テストを熟す必要があるのだそうだ。これはギルド職員及び試験官の数が少ないので、大人の事情というやつだとアニタおばちゃんは苦笑していた。

 

 ランクF、職員が主に斡旋する仕事内容は主に街中の雑用が8割を占めるという。残り2割も街門の周囲で事足りる程度の仕事らしい。このランクFの間お金を稼いで、少しでも良い装備品を揃えるようにと注意を促された。


 ランクE以上の仕事は基本的に掲示板の依頼票から受けることになること。依頼票には適正ランクや条件を表記されていて、それを満たしていないと依頼は受けられないのだと教えられた。


 依頼票以外での仕事はというと、依頼者がギルドを通じての指名依頼とギルドを通さないが公的機関を通す指名依頼、それ以外に個人間での指名依頼があるという。ギルド若しくは公的機関を通じての指名依頼は、報酬の面でリスクを伴うことが少ないそうだ。

 個人間の依頼は、少なからず揉め事に関わることがあるそうで、なるべく断りなさいと言われた。

 ギルド及び公的機関の指名依頼は時として、拒否が不可能な場合があると注意された。これはギルド本部主導の依頼や国が主導する依頼で、そう頻繁には無いのだが、喫緊の事情のある場合など。例えば、街に危険な魔物が襲来したりする場合などそれに対処する為の動員であるとかだそうだ。


 冒険者証明タグがあると、街や村への入門料及び所に依り出門料が免除されるとのこと。これが一番役に立つ情報かもね、と笑顔で言われた。



「とりあえず今の段階だとこんなところかしらね」

 アニタおばちゃんは、少しだけ疲れたのか嘆息した。僕たちは揃ってお礼をいう。

「「ありがとうございました」」

「あ~それと、マスターが何か言ってたわね。明日、練兵場で何かするだってね。気を付けてね」

「無理はさせるつもりは無いさ、俺がついていくからな」


 リグさんが力強く返事をした、僕も会釈で返した後ギルドを出てリグさんの家へ帰ることにした。

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