第3話 冒険者ギルドにて-2
何かと大事になってしまったが、霞の鑑定は終わったみたいだ。アニタおばちゃんの指示で元のカウンター戻っていく。
問題は僕だ、ギネスさんが手ぐすねを引いて待ち構えている。
「さあ次はぁ、あんちゃんの番だぁ。あぁちょっと待ってくれぇ、今準備すっからぁ」
先程、霞のと一緒にアニタさんが持ってきていた用紙と新品の金属板を魔道具にセットしている。すごく緊張する。
「ほらぁ早くこっち来い。そうだぁ、ここに手を置けぇ」
もうギネスさんはノリノリだ、振り返りリグさんを見るとどうやらワクワクしている様子。覚悟を決め、カウンターの椅子に座り手を伸ばす。
「よーし始めるぞ、動くなよ」
魔道具は音もなく動き始める、金属板を差し込んだ部分に光が灯った。レーザーのような光は文字を描き出す。
「『言語理解』フムこれは嬢ちゃんと一緒だなぁ。っと次はぁ、『精霊召喚LV6』なんだこりゃ召喚しかもLV6。ってまだあるのかぁ? 『魔力の天稟』おいおい見たこともぉ聞いたこともぉないスキルばかりだなぁ。
そういや、アニター! 嬢ちゃんの『精霊魔法』LVいくつになってる?」
アニタおばちゃんは肩をビクッとさせて、こちらに向き直った。
「マスター声が大き過ぎるんですよ、もっと普通に言ってくださいよ。えーと『精霊魔法LV3』ですね」
「あ~すまねぇ、LV3かぁ。そもそもぉ『精霊魔法』自体この大陸じゃ珍しいからなぁ。増してやぁ『精霊召喚』ときたもんだぁ。
今からちっとぉ本部に問い合わせてみら~。じゃあまたなぁ、あんちゃんたちぃ。アニター!あんちゃんのも手続き頼むぁ」
ギネスさんは相変わらずの大声で、アニタおばちゃんに仕事を丸投げして2階へと戻っていった。
「あぁ全くうるさいマスターだねぇ。お兄さんもこっちおいでなさい、一緒にやっちゃうから」
僕とリグさんは、アニタおばちゃんに呼ばれ隣のカウンターに移動する。
「お兄ちゃん、大丈夫?平気?」
霞が心配してくれる、思ったほどショックがないことに僕も驚いている。
「大丈夫だよ、それより早く済ましてしまおうね。それじゃ、アニタさんお願いします」
「はいよー。まずはこのプレートの内容を確認してくれるかい?合ってるはずなんだけど」
レーザーみたいな光で描かれた金属板だ。
『氏名:アキラ コニシ 年齢:16歳
登録ギルド:ニール冒険者ギルド ギルドランク:F
所有スキル-自 動:言語理解 魔力の天稟
所有スキル-半自動:精霊召喚LV6
所有スキル : 』
ちゃんと読める、こんな風に書いてある。それにしても、精霊召喚って半自動スキルなんだな。霞のも横から覗き込む、
『氏名:カスミ コニシ 年齢:14歳
登録ギルド:ニール冒険者ギルド ギルドランク:F
所有スキル-自 動:言語理解 魔物の女王様
所有スキル :精霊魔法LV3 』
霞の金属板には、所有スキル-半自動の欄がないだけで合っていると思う。
「はい、ちゃんと書かれています」
霞は既に確認が済んでいたようだ。
「それじゃ、一旦預かるね。ちょっと待っとくれよ」
アニタおばちゃんは、受け取った金属板を自分の席の後ろにある円錐を逆さにしたような魔道具の上に置き、頂点の下に小さな銅っぽい金属片を置いた。すると、円錐の頂点からまたレーザーのような光が出て、ちょこちょこ動き細工でもしているように見えた。兄妹二人分で2回繰り返し、5分ほど掛かっただろうか。
「よし出来たー、えっと鎖、鎖とあったあった。はい、これが冒険者証明タグね。失くさないように、首にでも掛けておきな、再発行はお金結構いい額取られちゃうからね」
冒険者証明タグは、なんだか軍隊のドッグタグみたいだ。ちょっと格好いい。霞がこちらを見ているので尋ねると、「掛けて」と言われる。仕方なく首に掛けてやる。このくらい自分でやりなさい、全くもう。
「あぁそれでね、ここに血液を一滴ほしいのよね。最初はお兄さんからにしましょうか、人差し指を出して~」
言われるまま、指を差し出す。チクっとした、滲んできた血を金属板に垂らす。すると、アニタおばちゃんが何やら薬品を浸み込ませたであろうガーゼをくれた。なるほど、殆ど予防接種の注射感覚だわ。ガーゼで抑えると血が止まり、傷と一緒に痛みが消えた。スゴイ!
「じゃあ次は、お嬢ちゃんねー。はい、指を出してねー」
霞は怯えているようだ、傷の消えた指を見せていう。
「大丈夫、予防接種の注射みたいなもんだよ。ほら傷も綺麗さっぱり消えてなくなった」
僕は頷き、霞を促した。おっかなびっくり指を差し出す霞、あぁ僕の妹は可愛いな。
血を一滴垂らし終え、ガーゼで傷を押え傷が消えるのを目撃した霞が振り返る。
「お兄ちゃん、スゴイこれ!」
頷いて返す。あぁ兄妹なんだな、考えることは一緒だった。
「それじゃ、今度こそ登録終わりだよ。次は、初心者への諸注意を聞いてね。
長くなっちゃったけど平気かい?少し休憩を挟もうかね」
確かになんだか肩が凝ったような、僕がこんな感じなんだとすると霞はつらいだろう少し休憩しよう。
「少しだけ休憩させてください」
「じゃあ、休憩が済んだらまたここに来てくれるかい」
「わかりました」
返事をして、リグさんと一緒に奥の方にある酒場っぽい施設に行くことにした。
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