第2ー20話 龍と大蛇とアマガエルなのです。
「ん?」
タマは今しがた入って来た扉を見た。こちら側にも人面の彫刻がたくさん彫られている。裏面も同じようなデザインなんだね。
その彫刻の1つとタマは目が合っていた。
「ん~!?」
タマがまじまじと見ると彫刻は明らかに目を逸らす。
「んん~~!?」
更に見つめると彫刻は口笛を吹きながらゆっくりと移動し始めた。
「先生先生!!何だかこいつ変ですぜ!!」
「ちょっと今大変だから邪魔しないで!!」
丹澤慶子はブロッケンの猛攻を防ぐのに忙しい。
「むふ~。相手にしてくれないか…。じゃあ…。」
タマは『お酒はやめなはれ』を発動する。ターゲットはタカリンと扉の人面彫刻だ。
「キャーー!!」
丹澤慶子の悲鳴が響き渡る。見るとタカリンが引き締まった尻を丸出しで戦っている。
「うん…やっぱり男だと全裸なんだな…。さてそれで…。」
尻はさておき、タマはずっと上の方まで移動していった怪しい人面に『お酒はやめなはれ』を放つ。
人面は顔をしかめると……え~と…吐きました。
それはキラキラと光りながらタマに向かって落下してくる。
「うわっ!!汚ね!!」
すんでのところでそれをかわしたタマ。危なかったね。そして、その直後ブロッケンの動きが止まった。
「ん?止まったな…。」
ホシリンが防御体勢を保ちつつ呟く。みんなも様子を窺うようにその場に留まっている。
「ちょっと先生先生!!」
「うるさいわね!!何よ!」
丹澤慶子が振り向くと同時に人面が身体付きで落ちてきた。ガリガリの老人のような姿だ。
「…え~と……誰?」
「さあ…。何か怪しい彫刻があったんで『お酒はやめなはれ』を使ってみたんですけど…。」
ホシリンが近付き泥酔して倒れているガリガリ老人を見下ろす。
「まさか…。」
「これがブロッケンの本体って事ですかね?」
タカリンもガリガリ老人の元に歩み寄る。
「え?そうなの?………って、タ…タカリンそれは!!!」
タマがガクブルと震え出す。
「ん?どうしたんだタマちゃん?」
「龍だ…龍がいる!!」
タカリンの股間には獰猛そうな龍がそれはそれは立派におったそうな。
「うお!!いつの間に!!気が付かなかった…。」
気付けよ…。タカリンは慌てて剣で龍を隠す。…が、隠しきれていない。
「何ということだ…。タカリンの龍に比べたら俺のなんて…俺のなんてカエル…いや、アマガエルだ…。」
タマはその場に泣き崩れる。それを見た神野っちは哀れむ様にタマの肩をポンと優しく叩く。
「玉乃井君…、男の価値はそこだけじゃない…龍には龍の、アマガエルにはアマガエルの生き方があると俺は思うんだ…。前を向こうじゃないか!」
「神野っち…。」
神野っちに手を取られタマは立ち上がり固く抱き締めあった。ここに1つの男の友情が生まれた。
「茶番は終わった?仕留めるわよ。」
丹澤慶子はポカリとブロッケン本体を叩いた。たったそれだけで本体は消えて行った。
ダンジョンから出るとホシリンは警備の自衛官と一言二言話すと電話をかける。
「大谷ダンジョン攻略しました。はい…はい……了解致しました。では、手続きは私の方でやっておきますので…。失礼します。」
「もう帰って良いのかしら?あなたも忙しいんでしょ?」
丹澤慶子はホシリンが電話を切るのを待って聞いた。
「まあ、そう急がなくても良いじゃないですか。遅くなりましたけど昼食を一緒にどうですか?」
「結構よ。私も暇じゃないのよ。」
「そうですか…。良い日本酒を揃えている蕎麦屋なんですが…。」
丹澤慶子の眉がピクリと動く。
「…いや…、車で来てるから飲めないしね。」
「ウチで運転手を手配しますが?」
丹澤慶子の喉がゴクリとなる。
「そ…そこまで言うなら仕方ないわね。」
タマに欲望に負けるなと言っておきながら自分の欲には正直すぎるな。
「うまい…うまいんだが…。」
タマは上天ざるを食べながら不満そうに呟く。
「タマちゃん、何か不満そうだな。」
ホシリンは高い日本酒をガバガバ飲む丹澤慶子を横目にタマに聞いた。
「完成されていてマヨネーズが入り込む余地がないんですよ。これにマヨネーズをかけては台無しになる…。それはキングオブマヨラーである俺にだって分かります。すなわち!マヨネーズの敗北と言っても過言ではないのですよ!」
「……言ってる意味が私には理解できないのだが…。」
でしょうね。相手にしなくていいよホシリン。
「ちょっと失礼するよ。」
ホシリンは立ち上がる。トイレかな?
「そうだ。」
ナレーションに答えなくていいです。
「しかし玉乃井君、みんながブロッケンに集中する中で何で扉の違和感を感じる事が出来たんだい?」
日本酒をチビチビと飲みながら神野っちが言う。
「え?う~ん…扉を見たのは暇だったからですね。違和感を感じたのは何となくです。」
「あ、そう。」
抽象的過ぎて話が広がらないな。
その時、トイレからホシリンが途中のテーブルや椅子にガンガン当たりながら小走りに戻って来る。何か慌ててるみたいだな。
ホシリンはテーブルの横に立つと突然丹澤慶子のブラウスを引きちぎった。どうしたホシリン!?一同その行動に唖然として声も出せない。
「ちょ!!何するのよ!!」
機嫌良く飲んでいた丹澤慶子も一気に酔いが冷めてしまった。
「やはり…。」
丹澤慶子の言葉を無視してホシリンは呟く。そして右目に着けていた眼帯を外した。
「あなた…それ…。」
「無くなったはずの右目があるんですよ。丹澤先輩もほら…傷が消えてますよ?」
そう言われた丹澤慶子は破られたブラウスを広げ傷のあった場所を見る。男性がいる事忘れてないか?
「ない…。消えてる…。」
「大谷ダンジョンの報酬は失ったモノまでも取り戻せる超回復って事ですかね?私も訓練中に欠けた指先が元に戻ってるのに今気が付きましたよ。」
ドラゴンタカリンが自分の右手を眺めながら言った。
「ほ…ホントだ!!俺もダンジョン行く途中で蚊に刺されたのが治ってますぜ!!」
小っちぇえな…。
「ふう…。」
タマは今回のダンジョン攻略について難しい話をしている大人達から離れトイレで小用をたしてした。
「おっ。玉乃井君トイレだったか。」
神野っちがタマの右隣の男性用トイレ(小)に立つ。
「何だか凄い報酬だったみたいっすね。俺はあんま実感ないっすけど…。」
「そうだね。これでたくさんの人が怪我や病気から救われる。玉乃井君、君のおかげだよ。」
「いや~、俺は何にもしてないっすよ。」
「謙遜しなくていいさ。今まで誰もブロッケンの本体に気が付かなかったんだからね。自慢して良いんだよ?」
「そうっすか?フハハハ!神野っち、玉乃井様と呼んでくれてもかまわんよ。」
おい。
「……丹澤も良かったよな…。」
神野っちはタマを無視した。
「そうっすね。でもあの傷カッコ良かったのに………。!!!じ…神野っち!?」
タマは小用をたす神野っちを見て驚愕した。神野っちの股間には龍ほどではないが大蛇がそれはそれは立派におったそうな。
「ん?どうした玉乃井君?」
タマはふるふると震えている。
「おや、2人ともトイレでしたか。」
そこにドラゴンタカリンが現れタマの左隣に立った。
大蛇神野っちとドラゴンタカリンに挟まれアマガエルタマは小さく縮んでしまったとさ。あ…、体が縮んでるんだからね!一部だけじゃないからね!
未攻略ダンジョン攻略しちゃったね。タマはマーベリックとしての能力はほとんど使わなかった気もするが功労者は間違いなくタマだよね。
でも活躍して良かったんだろうか?まあ、丹澤慶子やホシリンの傷が治ったし、これから助かる人がたくさんいるだろうから良しとしよう!!
次回!!タマが大谷のダンジョンに行ってる間に第5ダンジョン部は!?の巻。……つづく!!
後、前回言ったこの話「性描写あり」付けた方が良いかな問題だけど、「別にいいんじゃね?」という意見が多かったので付けない事にしました!…と、気にしながらも今回なかなかの下ネタ…「これはさすがに…」と思った方がいらしたら御意見下さい!!
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