第2ー19話 サイズなど関係ない大事なのは趣なのです。

 大谷ダンジョン探索は続いている。中級ボスクラスがザコであるためタマの活躍の場は今のところ皆無だ。


「しかし、ホシリンの羅刹の格好も見方によっては結構エロいな。」

「そうだろうか?」

 ホシリンは巨大な魔獣ベヒーモスの首を一刀で斬り落としながら答える。恐ろしや…。

「うむ。露出こそ少ないものの体のラインがはっきり見えるし…Cっすか?」

 うら若き女性に何を聞いているんだ!?

「おいタマ、戦闘中だぞ。」

 丹澤慶子が敵後衛のデビルメイジの核擊魔法を蚊を追い払う様に弾きながら注意をした。こいつら化け物だな…。

「いや、Dだよタマちゃん。」

 答えるのか…。

「な…なんと!?B…いや、丹澤先生負けましたね。」

「うるさいわね!!…っていうか何で知ってるのよ!?」

 神野っちとタカリンは聞こえない振りで戦っている。下手に関わるとセクハラになっちゃうからね。大人の男は大変だ。

 そんな会話をしつつ敵を殲滅し、先に進む。

「そう言えばそもそも『羅刹』って何なんすか?」

 タマは前を進むホシリンに向かって声をかける。

「人を食らう悪鬼だな。」

「怖!!」

「まあ、仏教では改心して十二天になる。」

「神様って事っすか?」

「そうだな。職業としての羅刹はこの特殊なボディスーツと全ての武器を扱えるという事だろう。」

「へ~。その刀とさっきのリングみたいなやつの他に何かあるんすか?」

「この『村正』と『チャクラム』それと…」

 ホシリンは胸元をごそごそと探る。

「爆発する『炮烙玉』と『棒手裏剣』、後、敵が多い時の二刀用に『マンゴーシュ』だろ…それと炎属性付与武器の『フレイムダガー』に風属性付与武器の『ウインドナイフ』…それから…。」

 ホシリンは取り出した武器を次々とタカリンに渡す。もう抱えきれない程山盛りだ。

「…もういいホシリン…。そんなピッタリとしたスーツのどこにそんなに入るスペースがあるんだ?」

「さっき言っただろ?特殊なスーツだからな。」

「あ…そう…。」

 納得するしかない雰囲気だった。

「さあ、次の階層が最後だ。行くぞ。」


「もう歩けないよ…。」

 全く戦っていないのにもかかわらずタマはヘトヘトだ。

「情けないわね。あなたはもう少し体力つけなさい。」

 他のメンバーはピンピンしている。日頃飲んだくれているのに丹澤慶子は何でそんなに体力があるのだろうか?

「ほら玉乃井君、ボスの間の扉が見えて来たよ。五百旗頭さん、ちょっと休みませんか?玉乃井にはボス戦で活躍してもらうんですから。」

 神野っちがホシリンに進言する。

「そうですね。では少し休みましょう。」


 ボスの間の扉には人面がたくさん彫刻されており不気味な空気を放っていた。

 全員扉に寄りかかり腰を下ろす。

「ふ~。しかし気持ち悪い扉だな…。本当に人間が埋め込まれてるみたいだ。」

 タマは彫刻された顔をツンツンとつついた。その顔が眉間に皺を寄せる。

「うわ!!動いた!!みんな!こいつら動きますぜ!!」

「うん。知ってる。大丈夫、害はないから。」

 みんなにとっては常識だったようだ。

「あ…そう。…で、こんなに強い皆さん方がいて何でこのダンジョン未攻略なんすか?ここのボスそんなに強いんですかね?」

 タマが言うと一同顔を見合わせる。

「丹澤先輩、タマちゃんに言ってなかったんですか?電話で『私から言っておくから』って言いましたよね?」

 ホシリンが丹澤慶子を責めるように言う。

「アハ…忘れてたわ。ごめんなさい…。ま…まあ、説明したところで勝てるとは思えないじゃない?だから…その…え~と…ごめんなさい。」

 丹澤慶子はたまにやらかすよね。

「まあまあ…。ボス戦前に気付いて良かったじゃないか。」

 神野っちが丹澤慶子を庇う。そう言えばプロポーズの件はどうなったんだろ?

「ギリギリでしたけどね…。私が説明します。」

 未だ丹澤慶子を冷ややかに見ているホシリンが説明を始める。

「このダンジョンのボスは『ブロッケン』。実体のない霧のような敵だ。まず、物理攻撃が効かない…そして魔法攻撃も効かない。」

「へ?それじゃ何も効かないじゃないっすか?」

「そうよ。」

「いや『そうよ』じゃないっすよ。どうやって戦うんですか?」

「戦えない。だから未攻略なんだ。」

「意味が分からん!!俺は帰りますよ!やってられますかってんだ!」

 タマはプリプリ怒りながら道を引き返そうとする。

「今から5時間かけて帰るつもりか?ボスと戦って死亡した方が早く帰れるぞ?」

 そういえばそうだね。タマは足を止め渋々同じ場所に座った。

「さて、休憩は終わりだ。タマちゃんは使えるようになったら『アカラナータフレイム』でも自爆の『肝吸い』でも使ってくれ。」

「『お酒はやめなはれ』は使っても良い?」

 味方1人を半裸か全裸にして敵を泥酔させるスキルだったね。

「かまわんよ。」

「誰を脱がせてもいいんですか?」

「私でも構わないが?」

「え!?いいの!?」

 タマの表情がパッと明るくなる。

「五百旗頭さん!女性がそんな事言っちゃいけませんよ!タマちゃん、脱がすなら私を脱がせたまえ。」

 タカリン、ジェントルマンだね。余計な事言いやがって…。男が脱いでも読者様が喜ばないじゃないか!!

 タマの表情がどんよりと曇った。

「よし…行くぞ…。」

 ホシリンを先頭に一行は巨大な扉を押し開けた。


「あのモヤモヤしたのがボスなのか?」

 部屋の中央に濃い霧の塊が漂っている。

「そうだ。あれが大谷ダンジョンのボス『ブロッケン』だ。ちょっと見ていてくれ。」

 そう言うとホシリンはリング状の武器『チャクラム』をブロッケンに向けて投げた。

 チャクラムは霧を少し乱しただけで通り抜けUターンしてホシリンの手に戻った。

「な?」

「確かに効いているようには見えないっすね。どうするんすか?」

「うむ。我々にはどうする事も出来ない。…と、いうわけでタマちゃん何かやってくれ。」

 何かやってくれってムチャぶりにも程があるぞホシリン。

「そ…それじゃあ、『お酒はやめなはれ』を…。」

 タマがスキルを出そうとした時、ブロッケンは何本も霧を槍状にして攻撃してきた。

 丹澤慶子はタマを後方にぶん投げて他のメンバーと共にその槍を弾く。マー君はタマの盾になってくれている。

「いてて…、護り方が雑だよ先生…。」

 タマがぼやいている間もみんな物理攻撃、魔法攻撃を繰り出す。が、やはり効いていないようだ。

「これ俺がどうこう出来る相手じゃないと思うんだよな…。…ん?」

 

 何かに気付いたタマ。何に気付いたんだろうね?まあ、どうせ下らない事だろ?


 次回!!ブロッケン戦終結!そしてタマを驚愕させる魔物が現れる…。…つづく!!


 …とまあ、話は続くんだけど、この話「性描写あり」にした方が良いだろうか?読者の皆様の御意見求む!

 

 

 


 

 

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