第2ー18話 強者の中にアホ1人…なのです。

「ここが大谷のダンジョンか…やっぱり大谷石で出来てるみたいだな。」


 大谷のダンジョン入り口は高い塀で囲われており唯一の門は重厚な鉄製で出来ていた。その前には2人の自衛官が警備をしている。

 道中には『進入禁止』や『立ち入り禁止』の看板や監視カメラが多くあり未攻略ダンジョンの警備の厚さが見て取れた。


「では早速探索を開始しようか。」

 ホシリンは入り口へと向かう。

「ちょっと待ちなさいよ。私は知ってるけどタマ君に紹介しないの?」

 丹澤慶子は一緒にダンジョンに入る2人の男性を指差す。あれ?1人は神野さん?

「そうか…。そうですね。タマちゃんは神野さんは知ってるよな?」

 ホシリン、ちゃんと『タマちゃん』と呼んでくれているんだね。

「もちろんですぜ!久しぶり神野っち!」

「ああ、久しぶり。…って言いたいところだけど玉乃井君だよね?」

「酷い!酷いよ神野っち!俺の事を忘れたのか!?」

 丹澤慶子がタマの頭をパシリと叩く。

「そういうセリフはそれを取ってから言いなさい。」

「は~い…。」

 タマはナマハゲのお面を取った。着けてたのか!?意外と気に入ってるみたいだね。

「それより何で神野っちがいるんだ?」

「玉乃井君の戦いを生で見たくてね。志願させてもらったよ。」

「神野っち…そこまであたいの事を…。」

 タマは頬を赤らめる。

「タマ君、気持ち悪いから止めて。…そしてもう1人がホーリーナイトの高坂さんよ。自衛官で空手の有段者でもあるわ。」

 高坂と呼ばれた男性はビシリと敬礼をする。

「陸上自衛隊普通科連隊所属高坂彰敏(たかさかあきとし)です。本日は誠心誠意務めさせて頂きます!」

 きびきびとした男前だ。顔はどことなくケン○ロウに似ている。

「そんな気を張らずに気楽に行きましょうよ。俺の事は『タマちゃん』と呼んで下さい。高坂さんの事は何て呼んだらいいっすか?」

 おい、失礼だぞ。

「ではタマちゃん、私の事はタカリンと呼んで下さい。」

 意外とオチャメな人だったか…。

「じゃあ、タカリン、神野っち、ホシリン、三十路慶子先生行きますか!!」

 タマは出発前に瀕死の重症を負ったとか負わなかったとか…。



「なんか凄く広くないっすか?このダンジョン…。」

 タマは大谷のダンジョンの広さに驚いている。通路の幅が約20メートル、高さは薄暗さもあってか天井が見えない程だ。

「そう?この位広いダンジョンなら結構あるわよ。まあ、主に高位ダンジョンに多いけどね。あ…来るわよ…。」

 丹澤慶子が身構える。その他のメンバーも既に身構えていた。

「え?なんもいないじゃん…。」

 タマがそう言い終えるや否や前方上空から火球が降り注いだ。メンバーは易々とそれをはね除ける。

「ワイバーンが5体ってところですかね。」

 ホシリンが言いながらリング状の刃物を指でクルクル回して投げた。遠方で大きな咆哮とドカンと何かが落ちる音が聞こえる。

「一体倒しましたよ。」

「はいはい。神野さん明かりよろしく。」

「おうよ。」

 丹澤慶子に頼まれた神野は光の球を数個出して前方に放つ。薄暗かった通路が照らし出され飛竜が4体こちらに飛んで来るのが見えた。

「え?あれって『記憶力のダンジョン』のボスじゃなかったっけ?」

「そうよ。さっきワイバーンって言ったでしょ?おりゃ!!」

 丹澤慶子は剣を薙いで剣風を起こす。それに続きマー君もアメノハバキリの波動を放った。あ、ちゃんとマー君もいるからね!忘れないでね。

 その直撃を受け、落ちた2体をホシリンとタカリンのリンリンペアが叩き殲滅した。

 それと同時に神野っちが上空に光の輪を出現させそこから無数の光の槍をを落としていた。串刺しになった残り2体のワイバーンはもがきながら墜落する。

「お~!みんなスゲェな!今日の主役の俺が黙ってませんぜ!!」

 そう言うとタマはヒノキの棒をブンブン振り回しながらワイバーンに向かって行った。

「ちょっとタマ君!!」

「へ?…ギャーーース!!!」

 丹澤慶子の警告に振り向いた瞬間、ワイバーンの尾による往復ビンタがタマを襲う。さらにもう1体が火球を放ちタマに直撃した。


 タマ死亡。


 3分後、入口に戻されたタマの元に他のメンバーが帰って来た。

「タマ君…あんた何考えてるのよ!」

 丹澤慶子はご立腹だ。

「いや…なんか皆さん簡単そうに倒してたんで俺にも出来るかな~…って思ったんすけど、やっぱあいつら強いっすね~。」

 タマはヘラヘラ笑う。反省しろ!!

「うむ…。戦力は落ちるが丹澤先輩と魔神の鎧…確かマー君だったか?2人はタマちゃんを守る事に専念してもらいましょうか。」

 ホシリンは相変わらずの無表情で提案した。

「そうね。タマ君、ボス戦まで大人しくしてなさいよ!」

「ふぁ~い。」

 二度目の出陣である。頑張れよ!!


 15分後…


 ダンジョン入口に戻されたタマの元に再び他のメンバーが帰って来た。

「タ~マ~!!いい加減にしなさいよ!!」

 丹澤慶子がタマにケツキックを入れる。

「ちょっと何するんすか先生!ちゃんと言われた通り大人しくしてたじゃないっすか!」

「敵の攻撃は避けなさいよ!」

「ちゃんと護ってくれなきゃダメじゃないっすか!!」

「口答えとはいい度胸ね…。」

「すいませんでした!!!」

 姿勢、タイミング、スピード…どれを取っても素晴らしい見事な土下座であった。

「まあまあ、丹澤さん。タマちゃんは高位ダンジョン初めてなんですから仕方ないですよ。」

 タカリンがフォローしてくれた。良い人だ。

「タマちゃん…、このダンジョンはボスの間まで私達でも約5時間かかるのだよ…。そこのところよろしく頼むよ。」

 ホシリンも無表情ながらさらりと釘を刺した。

「御迷惑をお掛けします。『大人しくする』『攻撃は避ける』を肝に命じましたので今度こそ大丈夫です!」

 本当に大丈夫なんだろうな?


 さて、三度目の正直だ!二度ある事は三度あるにならない事を祈ろう…。

 でも考えてみたらコンちゃんが言ってたタマがダメダメで使えない事を相手に分からせるって作戦を決行している事にもなってないか?


 次回!!大谷ダンジョンを進みます!……つづく!!


 

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