第2ー14話 トリュフは豚さんが掘り当てるのです。

 那須塩原市西那須野支所会議室にタマとテレちゃん、丹澤慶子、そして防衛省国家ダンジョン統治局局長五百旗頭とその部下後藤はいた。

 タマに五百旗頭(以後面倒なのでホシリン)から連絡があったのは一昨日。

「はいタマちゃんです。」

 高校生の電話対応とは思えないな…。

『玉乃井君だね?五百旗頭だが…。』

「ああ、ホシリンか。」

『過日の件だが、明後日那須塩原市西那須野支所でどうだろうか?』

「…間違い電話です。」

『さっき自分で名乗って私を『ホシリン』と呼んだじゃないか?私をそう呼ぶのは玉乃井君しかいないぞ?』

「バレましたか…。」

『……。』

「まあ、みんなの都合もありますんで、話してから連絡しますよ。」

『いや、連絡はこちらからする。待っていても君はかけて来なそうだからな。』

 性格や行動パターンまで知られているぞ!


 …で、今に至る。

「玉乃井君、親御さんがいないようだが?」

 ホシリンは一同を見渡して怪訝な顔で聞いた。

「大丈夫です。」

 タマは真顔で答える。

「いや…これは君の進路や将来にも係わる話だから親御さんにも…。」

「大丈夫です!」

 タマは力強く答えた。その顔には有無を言わせぬ迫力があった。どんな親子関係なんだろ?

「そうか…。なら話を進めよう。」

「その前にちょっといいかしら?」

「何ですか?丹澤先輩。」

 丹澤慶子の問いかけにホシリンが答える。丹澤先輩って知り合いだったのか?

「局長自ら足を運ぶなんて普通ない事よね?暇なの?それともダンジョン統治局はそんなに人手不足なのかしら?」

「暇なのかという質問にはNOですよ。人手不足なのは事実ですけど、私自ら来たのはそれほど本気だって事です。こちらとしては丹澤先輩が出てきた事に驚いてるんですけど…。ダンジョン引退したんじゃなかったんですか?」

「何となくよ。最初に言わせてもらうけど、未攻略ダンジョンの恐ろしさはあなたも充分知っているはずよね?それに高校生を誘うなんてどうかしてるわ。」

 ホシリンは黙るが丹澤慶子をじっ見据える。

「2人とも止めて!!あたいのために争わないで!!」

「タマ、茶化すのは止めろ…。」

「何を言うテレちゃん。俺は本気で言ってるんだぞ!」

 だとしたらそれはそれで問題だぞタマ。

「それと…。」 

 ホシリンが口を開く。

「何か勘違いをしているようですが、私は玉乃井君を未攻略ダンジョン攻略にスカウトしに来たワケじゃないんですよ。まあ、広い意味ではスカウトなんですけど。」

「へ?」

 第5ダンジョン側3人がポカンとする。

「高校生を…しかもまだ2年生をそんな危険な事に誘うワケないじゃないですか。玉乃井君、君のマーベリックとしての実力見せてもらいたい。ダンジョンは我が国の観光資源であり報酬による人材育成、医療効果など重要な役割がある。もちろん強いプレイヤーもレアな職業も資源の1つとも捉えられる。その一環で君を研究したいのだ。」

「ふむ。なるほど!!よく解んないっす!」

 じゃあ、なるほどって言うな!

「要するにタマの『うっかりさん』…今は『宇宙狩り様(うつがりさま)』だっけ?その力を見たいって事だろ?」

 テレちゃんはバカに…いや、タマにも解る様に要約した。

「なるほど…。今度は本当に解りましたぜ。」

 それは良かった。

「それでだ。大谷(おおや)のダンジョンに一緒に行ってもらいたいんだが。」

 丹澤慶子がバンッとテーブルを叩く。

「何言ってるの!?話が違うじゃないの!!」

 丹澤慶子が怒るのも無理はない。

 栃木県の中央にある大谷町、現在は県庁所在地である宇都宮に合併されて宇都宮市大谷町となっている場所である。名産は塀などに使われる大谷石。その採石場跡は観光名所となっており、その壮大さから映画やドラマの撮影地にもなっている。

 その採石場跡近くにあるダンジョンは未攻略ダンジョンなのだ。それが丹澤慶子が怒った理由だ。

「まあ落ち着いて下さいよ丹澤先輩。大谷のダンジョンは確かに未攻略です。しかし、危険はないと判断されてますよ?何か問題でも?」

 丹澤慶子は腕を組みドカリと椅子に座る。

「判断したのはそっちでしょ?まだ分からない以上許可する事は出来ないわ。それにタマ君の進路や将来に係わる事ってあなたは言ったわよね?やっぱり勧誘じゃない。」

「玉乃井君の調査研究が主ですよ。高校卒業後でも大学卒業後でも玉乃井君がやってみたいと思うなら厚待遇で迎える準備がこちらにはあるという話です。

 そんなに心配なら丹澤先輩も一緒に来ればいいじゃないですか?吉祥寺ダークナイトとマーベリック羅刹で玉乃井君を護れば問題ないと思いますけどね。もちろん後2人のメンバーも猛者を用意しますよ。どうかな?玉乃井君。それなりの謝礼は出すが…。」

「ふふん。金でこのタマちゃんが動くとでも?先生や友人が心配してくれているんです。お断りしますよ。」

「そうか…。メ○ン・ド・ラ・○リュフのマヨネーズを1ダース付けようかと思うのだが…。」

「…今なんと?」

「だからメ○ン・ド・ラ・○リュフのマヨネーズだ。」

 

 説明しよう!!メ○ン・ド・ラ・○リュフのマヨネーズとは!フランスパリのトリュフ専門レストランが手掛ける黒トリュフ入りの超高級マヨネーズである!価格は85グラムで2500円(税抜き)!!

 作者もずっと気になっているのだが買ったら怒られそうなのでまだ食べた事はない!宝くじが当たったらジャガイモとかに一瓶丸ごと着けて食ってやろうと夢見ている。あ~あ…、当たらないかな~LOTO6…。


 タマはふらりと立ち上がりホシリンの手を取る。目は虚ろだ。

「やりま…」

 タマが言いかけた時、テレちゃんが羽交い締めにしてタマをホシリンから引き剥がす。

「タマ!!しっかりしろ!!」

「は!!お…俺は今、何を…。」

 マヨラーの心を闇に落とす力がメ○ン・ド・ラ・○リュフのマヨネーズにはあるのだ!!誰が何と言おうがあるのだ!!

「悪い話ではないと思うんだがな…。じゃあ、こういうのはどうだろうか?

 もし今回のダンジョンに行ってくれるのならば今後玉乃井君にはこちらから一切連絡は取らない。勧誘もしない。」




「局長、本当に良いんですか?」

 長い話し合いを終えたホシリンは後藤の運転する車に乗っていた。

「良いんだよ。お前は丹澤慶子…いや、吉祥寺ダークナイトは知っているのか?」

「ええ…。名前だけなら…。」

「そうか。彼女はな、私の命の恩人でもあるんだ。」

「そうなんですか?」

「私が右目を失うだけで済んだのは丹澤慶子のおかげだ。今回は彼女に免じて大谷ダンジョン探索だけで手を打った。…だがな後藤、未攻略とはいえ、安全なダンジョン探索で500万円を高校生が手にしてみろ。必ず味をしめるさ。そうなればこちらから声をかける必要はない。玉乃井から連絡を待つだけで良い。後、もう一度文部科学省には手を出さないように釘を刺しておけ。」

「承知いたしました。それと…玉乃井でしたっけ?最後に『俺だけホシリンと呼ぶのは申し訳ないからホシリンもこれから俺の事をタマちゃんと呼んでくれ』と言ってましたが…。」

 そんな事言ったのか?やっぱりアホだな。

「ああ、呼ぶ事にするよ。」

「そ、そうですか…。」

 やっぱりホシリンも変わってるね。


 結果ホシリンに押し負ける形になっちゃったみたいだね。やはり百戦錬磨の国家権力…。交渉という点ではホシリンには敵わなかったって事かな。ともあれ、とりあえずはダンジョン統治局に取り込まれるのは回避された。


 次回!!平和な日常。……つづく!!


 

 

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