第2ー13話 最強にも色々あるのです。

「タマ君、お金好き?」

「好き。」

「死ぬかもしれないけど100万円あげるからダンジョン行ってくれない?」

「断る!!」

「じゃあ、500万円。」

「…断る!!」

「じゃあ、1000万円。」

「…こ…断る!!」

「じゃあ、5000万円は?」

「………こここここ断る…。」

「それにキュー○ーの『卵○味わうマヨネー○』1年分も付けよう。」

「やりましょう!!」

 スパーンと音を立てて丹澤慶子は警策でタマの肩を叩く。

「タマ君、何でお金で断れたのにマヨネーズで落ちてるのよ?」

「『卵を○わうマヨネーズ』ですよ!マヨラーなら1度は夢見る高級マヨネーズじゃないですか!」

 知らねぇな…。レッツ検索!!

「じぁあ、無事に断れたら私が買ってあげるわよ!いくらするの?」

「内容量250gで参考小売価格1,250円(税別)です!」

「た…確かに高級ね…。」

 意味があるのかどうかはともかく欲望に負けないための練習が始まっていた。質問役は第5ダンジョン部メンバーが、そして判定を丹澤慶子が行っている。

「タマが本番で欲望に勝てる気がしないな…。先生、他の手を考えた方が良くないかな?」

 テレちゃんが今までのやり取りを見ていて頭を抱える。

「そうね…。何か良い案はないかしら…。」

 丹澤慶子も頭を抱える。

「以前タマ君が七三分けにした時に何かに取り憑かれたみたいになったじゃない?そんな感じでタマ君を意思の強いキャラに変貌させるっていうのはどうかな?」

 フェミちゃん…それは無茶ってもんだよ。

「やる価値はあるかもね。」

 正気かメガネ!?

「ダメ元でな。」

 テレちゃんまで…。

「よし!タマ君。何かに成りきりなさい!」

 丹澤慶子よ、お前が止めないで誰が止める?

「おう!ちょっと待ってろよ!」

 タマはノリノリでドアから出て行った。


 5分後…。


「待たせたな!」

 タマは麦わら帽子を被って赤いベストを素肌に着ていた。……怒られないよね?大丈夫だよね?

「…なぜ、それをチョイスしたのか分からないけど、まあいいわ。」

 いいのか?

「それどこから持ってきたの?」

「演劇部の部室から盗んできたぜ!なんせ海賊だからな!」

 栃木に海はないのに海賊か…。って海賊って言っちゃったよ!怒られないよね?大丈夫だよね?

「後でちゃんと返してきなさいよ。じゃあタマ君、危険だけどお金あげるからダンジョン行ってくれる?」

「おう!ワクワクするな!」

 スパーン!!

「間違いなくキャラ選択のミスね。」

「先生先生!!私にやらせてもらっていいですか!?」

 フェミちゃんが名乗り出る。遊びじゃないんだぞ!

「もちろんよ。」

 あ、いいんだ…。

 フェミちゃんはタマの首根っこを持って引き摺りながら部屋を出て行った。

 

 5分後…。


「お待たせ~。タマ君入って!」

 フェミちゃんがタマを呼び込む。

 タマは…え~と…何か黄色い。

「フェミちゃん…それは?」

 メガネが恐る恐る聞く。

「なんやかんやでこれが最強だと思うのよね。ねえタマ君!」

「ピカーッ!」

 止めろ!!

「次は僕が!」

 作者の心の叫びが聞こえたのかメガネが慌ててタマを連れて部屋を出て行った。


 5分後…。

 

「これは我ながら自信作だよ。さあ!タマ君入って!」

 メガネも結局ノリノリだな…。

「おい…メガネ、これは誰だ?」

 タマは戦国武将の格好にさせられ手には鉄の棒を持っている。

「誰って…最上(もがみ)氏の家臣の延沢満延(のべさわみつのぶ)に決まってるじゃないか!!怪力で有名で武器は長さ150センチ位の鉄棒なんだ。これで殴られた敵は頭が胴体にめり込んだって言われてるんだよ?」

 第5ダンジョン部のメンバーと丹澤慶子は「へ~…」としか言えなかった。

「メガネ…タマが知らない人に成りきれるワケないだろ?仕方ない…私がやるしかないな。」

 テレちゃんがタマを再び部屋から連れ出した。


 5分後…。


「これだよこれ!!これが最強だ!」

 テレちゃんは満足気だ。

「テレちゃん…何か…気持ち悪いよ?」

 フェミちゃんが軽く引く。

 タマは赤とオレンジの間のような色でどろどろとした何かで覆われていた。とてもオバケ嫌いのテレちゃんがチョイスしたとは思えない姿だ。

「そうかな?なんせ世界を7日で滅ぼしたキャラクターだぞ!」

 まさか…。

 タマは口を大きく開ける。

「コォォォ……。」

 タマの口の中が光り始める。

 スパーンッ!!!

 タマは丹澤慶子の一撃を受け前のめりに倒れた。

「ふう…。まさか本当に出るとは思わないけど、念のためね…。危うく炎の7日間が始まりところだったわ。」

 丹澤慶子は額の汗を拭う。

「あの…先生と先輩…。」

 コンちゃんが恐る恐る話し出した。

「そうね。次はコンちゃんね。」

「違います!あの…言いにくいんですけど…。」

 一同コンちゃんに注目する。

「意思の強いキャラって話でしたけど、いつの間にか『私が思う最強キャラ選手権』になってませんか?」

「あ…。」


 やはりいつも通りの結果を生まない会になってしまったね。いつもと違うのはタマが加害者ではなく被害者だということだろう。


 次回!!五百旗頭さんとの話し合い!!

 ちゃんと断れるのか!?……つづく!!

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