第2ー5話 新戦力?なのです。

 土曜日。第5ダンジョン部は初めてのダンジョンの地、公民館と図書館のある公園へ来ていた。無論コンちゃんのダンジョンデビューのためである。

「コンちゃんの職業何になるかしらね。私としては回復系になってくれたらバランスが取れて良いと思うんだけど。」

 丹澤慶子は機嫌が良い。おそらくこの後のコンちゃん歓迎会で昼間から酒が飲めるからだろう。まあ、休日はいつも飲んでるんだけど理由があれば後ろめたさがないもんね!

「意外と戦闘系だったりして。」

 フェミちゃんは冗談めかして言う。

「コホッ…わ…私に出来るかな…。剣とか持ち上げられないかも…。」

 コンちゃんは緊張しているようで手と足が揃って歩いてしまっている。

「あ、ごめんごめん冗談だよコンちゃん。可能性はあるけど、そうなったら全力でサポートするから安心してね。」

 真面目に受け取られてフェミちゃんは慌ててフォローする。

「ありがとうございますフェミ部長。私頑張ります!!コホッコホッ…。」

 フェミちゃんの優しい言葉にフンスッと気合いを入れる。

「コンちゃん大丈夫か?疲れてないか?足痛くないか?気分は…」

「うるさいメガネ!過保護も程々にしろよ。」

「だって…。」

「だってじゃねぇ!心配なのは分かるがコンちゃんも高校生だ。自己管理も出来るようにならなくちゃいけないだろ?体調に変化があったら自分で言うのが良い。俺達だってコンちゃんが体が弱いのは分かってるんだから無理はさせないしな。」

 タマがまともな事を…。

「…で、そんなタマは何でパンを食べながら歩いてるんだ?しかも靴下が左右違う柄だし…。寝癖だって凄い事になってるぞ。」

 テレちゃんがツンと立ったタマの髪の毛を寝かせようと撫でるがそんな事はなかったかのように元に戻る。

「いや、テレちゃんが迎えに来てくれた時に実はまだ寝ていてな。30秒で支度した結果がこれだ。30秒で支度って出来るもんなんだな。」

「自己管理が聞いて呆れるな…。まあ、タマの有言不実行は置いておいて、メガネももう少し見守る程度にしておかないか?」

「…そうだね。そうするよ。」

 こんな会話がなされながらみんなは受付を済ませた。

「私はここまでね。みんながいるから…いや、タマ以外のみんながいるから大丈夫だと思うけど、無理せず無茶せず行ってらっしゃい!」

 丹澤慶子はそう言うとみんなをダンジョンへ送り出した。



「わあ!!先輩達カッコいい!!あなたがマー君ですね。新入部員のコンちゃんこと紺野雫です。よろしくお願いします。」

 コンちゃんはマー君に深く礼をする。マー君もペコペコと礼をしている。

「俺も…カッコいいと思うか?」

 相変わらず村人スタイルのタマが遠い目でコンちゃんに聞いた。

「え?あ…カッコいい…とおも…思います。」

 コンちゃんは心にもない事を言った。

「ちょっとタマ君、コンちゃん困ってるでしょ。」

 フェミちゃんがタマに注意するとコンちゃんが光出す。

「お…いよいよだな。」

 テレちゃんが腕を組ながら言う。メガネはオロオロと心配そうだ。落ち着けメガネ。

 光はゆっくりと集束していく。そこに現れたコンちゃんの姿は赤いオランダの民族衣装

のような服だった。

「わあ!可愛い!!」

 テレちゃんはぴょんぴょんと…いやガシャコンガシャコンと跳ねている。

「戦闘系ではなさそうだね。なんだろ?見たことないな。コンちゃん、職業何になってる?」

 メガネがコンちゃんの周りをくるくる回りながら聞いた。鬱陶しいから落ち着け!!

「えっと……『見習い町娘』……です。」

 メガネがぴたりと動きを止めフェミちゃん、テレちゃんと顔を見合わせる。

「どうしたみんな?どんな職業なんだ?教えて教えて!」

 タマだけテンションが高い。

 暫くの間があってメガネが口を開く。

「え~とね…。町娘はレア度はD…スキルは仲間の能力を少し上げる『応援歌』と敵を少し怯ませる『悲鳴』かな…。」


 おさらいしよう!職業のランクは上からタマを含めて世界で5人しかいないマーベリック、テレちゃんのネクロマンサーなどのS、フェミちゃんのアーマーナイトなどのA、その下にB、メガネの戦士などのCと続き最下ランクのDがある。Dランクの職業は言葉を選ばなければ押し並べて使えない。ダンジョンに入りランクDになったプレイヤーは落胆し、2度とダンジョンには入らないと言われる程だ。


「ま…まあ、Dランクだけどコンちゃんは体力をつけるって事と報酬効果で健康になるっていうのが目的だからね!これから一緒に頑張ろう!!それにその格好、とっても似合ってるよ。」

 フェミちゃんが励ますようにコンちゃんに言葉をかける。

「お役に立てないんですね…。」

 コンちゃんは下を向いてしまっている。

「おいおい。そんなに落ち込むなよ。俺だってマーベリックなんて羨ましがられるけど、実質は村人みたいなもんだからな。『アカラナータフレイム』は感謝されるけどその他のスキルは仲間を脱がせたり自爆だから使うと嫌がられるんだぞ?」

 それはお前の使い所の問題だろ?

「そうだよコンちゃん。タマは害があるがコンちゃんはないんだから気にやむ事はない。」

 テレちゃん、それはあんまりなんじゃないのかな?仮にも想い人なんだから…。

「そうですよね!!タマ先輩よりマシですよね!!」

 おいおい。

「そうだよ!」

「そうそう!」

「その通りだ。」


 こうしてコンちゃんが落ち込みから復活した代わりにタマがすこぶる落ち込んだとさ。


 次回!!見習い町娘コンちゃん出陣!!そもそも『町娘』の『見習い』って何だ?そんな日本語的なおかしさは無視しつつ……つづく!!

 

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