第63話 仕上げと見せかけたデートなのです。

「うむ。だいぶ慣れてきたみたいだな。」

 オバケダンジョンでの『テレちゃんオバケ嫌い克服大作戦』は続いていた。え?名前変わってないかって?気にしない気にしない。

「そうかな?まだ怖いぞ。」

「体の固さが無くなってきてるぞ。これならもう大丈夫だろう。」

「そう…か…。」

 テレちゃんは心なしか寂しそうだ。タマとの特訓が終わっちゃうもんね。

「そうだ。なあタマ。タマはホラー映画とか好きか?」

「おう。好きだぞ。映画館の一番後ろに座って驚かせるシーンの時にみんながビクッてなるのを見るのが特に好きだ。」

「いや、映画観ろよ。今話題のホラー映画があるじゃんか?」

「ああ、あの呪いのブルーレイディスクを再生すると映ってる太陽光発電パネルから幽霊のダサコが出てくるヤツだろ?」

 ずいぶんと最先端な幽霊だな…。

「そう、それ…。オバケ嫌い克服の一環として観に行かないか?ワリカンで。」

「テレちゃんからホラー映画に誘われるとはかなりの成長だな。その意気や良しって事で付き合いますぜ。」


 その次の土曜日、タマとテレちゃんは那須塩原市唯一のシネコンに来ていた。

「タマはパンフレットは観る前に買う派か?観終わってから買う派か?」

 テレちゃんは紺色のワンピース姿だ。

「俺か?俺は人が買ったパンフレットを借りて見る派だ。買ったら見せてねテレちゃん。」

 自分で買えよ。

「お…おう。タマはポップコーンはしょっぱいのと甘いのどっち派だ?」

「俺は人が買ったのをちょこちょこ盗み食いする派だ。」

 だから自分で買えよ。

「…タマらしいといえばタマらしいな。」

「うむ。だが女の子と来たのは初めてだぞ。こんな時は男が出すものだと古より伝わっていると聞く。本来ならば映画代も出すべきなんだろうが、財布の中身が心もとない…故にポップコーンとドリンクだけ買うとしよう。さあ、テレちゃん、好きな物を選ぶがいい。」

「え?いいのか?なんか悪いな…。じゃあ、烏龍茶とキャラメル味のポップコーンがいいかな。」

「了解した。じゃあ、買ってくる。」


「うむ。しくじったかもしれない…。」

 席についたタマは呟いた。

「どうした?何か問題でもあったか?」

「テレちゃん、キャラメルポップコーンとコーラは絶望的に合わない事が判明したぞ。」

「…少し考えれば分かりそうなもんだけどな。」

「口の中がミッチーサッチー状態だ。」

「?」

 分からない人は大人に聞くか検索しよう。

「…と言うワケで烏龍茶を一口くれ。」

 



「いや~。まさかの映画だったな。」

 映画を観終わった二人はランチのためファミレスに来ていた。

「そうだな。あれはホラーだったのか?」

「作り手はホラーのつもりで作ったんだろうな。まさか霊の登場シーンで大爆笑が起こるとは考えもしなかったろう。」

 どんな映画だ?

「オバケ嫌い克服の仕上げには適さなかったな…。でも…今日はありがとうな。」

「ん?まあ、礼には及ばんさ。」

「全高ダン頑張ろうな。」

「ああ。俺も回復役という重大な任務を仰せつかったからな。やる時はやるタマちゃんだから豪華客船に乗ったつもりで存分に戦うがいい。」

「はは…。タイタニック号じゃない事を祈るよ。」


 こうして全高ダンに向けての各々の特訓は終わった。まあ、タマとテレちゃんはデートしただけのような気もするけどね。

 次回!!ついに全高ダン開幕!!



おまけ


「さてと、テレちゃん俺に少しだけ時間をくれないか?」

「ん?どうした?」

「おーい!!」

「わっ!ビックリした…。急になんだよ。」

「いや、テレちゃんを呼んだワケじゃないんだよ。おーい!!いるんだろ?」

 ん?

「そうだよ。お前だよ。作者。」 

 俺か?登場人物が作者と会話するなよ。

「いや、今日は言わせてもらうぞ。」

 な…なんだよ。

「今回更新にだいぶ間があったみたいだな。」

 うっ!!そ…それは本業が忙しくてな。

「うむ。それは知っている。だが、小耳に挟んだんだが、スマホゲームにはまっていたそうじゃないか?しかももう飽きて止めたらしいな。」

 なぜそれを!?誰に聞いた!?

「それを知っているお前以外は誰だ?」

 ……嫁か…。

「まあ、それはいい。問題なのはゲームと俺達の物語を天秤にかけてゲームが勝ったという事だ。」

 え~と…ごめんなさい。

「うむ。これからはちゃんと書けよ。」

 はい。申し訳ありませんでした。

「分かればいいんだよ。…さて、テレちゃん、そろそろ帰るか。」

「……タマ、お前誰と話してたんだ?傍目にホラーだったぞ。」

 



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