第31話 目には目を裸(ら)には裸(ら)を…なのです。
フェミちゃんが大きな扉を開ける。赤レンガで造られただだっ広い部屋の奥にスキュラらしき姿がある。
スキュラは2メートルちょっとしかない。マー君を見慣れているのと今までのボスが大きかったせいで小さく見える。
タマは手のひらを前に突き出し片目を瞑っている。
「何してるのタマちゃん?」
「いや、こうして下半分を隠して見るとなかなかの…。」
女性2人の視線が冷たい。分かるぞタマ。
「さて…、作戦通り行くわね。マー君よろしくね。」
マー君はコクリと頷く。隊列を組み作戦の確認をしているとマー君がグラリと揺れ倒れる。
「え?」
一同が呆然とする中、丹澤慶子が叫ぶ。
「みんな伏せて!!マー君!!スキュラに集中して!!」
マー君は立ち上がり低い姿勢をとる。皆は伏せながらマー君の後ろに回る。
「先生、何が起こったんですか?」
「スキュラの光の遠距離魔法よ。マー君の即頭部にヒットしたわ。幸いダメージは大したことないみたいね。体勢が悪かったから倒れたんでしょ。」
「下半身魚だから水の魔法を使うのかと思いましたよ。」
「スキュラは全属性の魔法を使うのよ。」
「先に言って下さいよ。」
「聞いたら答えるわよ。聞きなさいよ。」
大人気ないぞ丹澤慶子。大人気のなさなら作者も負けない。2才児にも猫にも同じレベルでケンカをするぞ!!それで社会生活が出来ているのが自分でも不思議でならない。ケンカした相手は猫から90過ぎのおじいさんまで幅広い。自慢にもならねぇや。
「ごめん、みんな。迂闊だったわ。作戦開始よ。」
フェミちゃんの言葉で低い姿勢のままスキュラに近付く。その間もスキュラは多種多様な魔法を繰り出しマー君にヒットする。その度に立ち止まるが、徐々に近付き攻撃範囲までたどり着いた。
「よし!!攻撃開始!!」
フェミちゃんが号令をかけフェミちゃん、メガネ、マー君は攻撃を始める。丹澤慶子も配置につくが、流している感じだ。丹澤慶子が本格的に戦闘に参加したら瞬殺だもんね。
ハンクスはマー君を回復した後、くまなく回復に勤める。タマは…あれ?
「うぉい!!なんだよ!!『オタマジャクシ』って!!」
気付きましたか…。
「さっきからなんかカサカサすると思ったらこんなもん貼ってあったのか!?マー君だな?」
「ちょっとタマちゃん、後にしてくれる?」
「いや、こういう事はその場その場でハッキリさせておかなきゃいけないだろう?それが大人だろう!!」
時と場合を考えるのが大人だと思うぞ。
「ほんと、マジで後にしてくれる!!」
フェミちゃんがややキレ気味だ。
「むう…。ちくしょう。覚えてやがれ!」
雑魚敵みたいな事を言いながらタマは攻撃に加わる。その時スキュラが動きを止め、何やらブツブツ呟き始めた。スキュラの背後に紫色の魔方陣が回転しながら出現する。その回転は徐々に速くなってきている。
「闇の広範囲魔法よ!!みんなマー君の後ろに隠れて!!ハンクス君はマー君を回復し続けて!!」
マー君の後ろに隠れるとすぐに衝撃が襲う。
「これは…キツい…。マー君大丈夫!?」
メガネがマー君に声をかける。ぴくりとも動かず返事はない。まぁ、喋れないんだけどね。
「あら、石化ね。鎧も石化するのね。」
丹澤慶子が呑気に言う。
「石化解除のアイテム誰か持ってたっけ?」
ハンクスが皆を見回す。
「ない。」
「私は持ってるけど、使わないわ。自分たちで何とかしてみなさい。」
丹澤慶子が突き放す。
「出たよ。ケチケチ慶子…。」
タマお前本当に懲りないな。
「おい。オタマジャクシ、私も石化スキル持ってるんだけど、1回石になってみる?」
「え…遠慮しておきます。」
「仕方ないわ。ハンクス君!!マー君の代わりに盾になってね。」
「えぇ!!」
「最初はその作戦だったでしょ?頼んだわよ!!」
フェミちゃんが最近丹澤慶子化してきてる様な気がする…。
「分かったよ~。」
「じゃあ、再開!!突撃!!」
再び攻撃を仕掛ける。攻め手を一人失って与えるダメージは大幅に減ってしまった。
「まだ倒れないのかな?」
今日のメガネはよく喋るな。
「半分位は削ったわね。」
「まだ半分…。勝てますかね?」
「微妙ね。スキュラが広範囲魔法を頻繁に撃ったらマズイかもね。」
「先生!!僕に出来る事なら何でもするんで何か良い案はないですか!?」
メガネが丹澤慶子と話しているのが面白くなかったのかハンクスが割って入る。
「よく言ったハンクス!!覚悟を決めろ!」
タマがヒノキの棒を天高くかかげる。
「タマちゃん!!まさか!!」
ハンクスが光に包まれる。光は球となりタマへと飛んで行った。光が去ったハンクスは一糸纏わぬ全裸だ。
「うわぁぁ!!タマちゃん!!何するんだよ!!」
「ん?『お酒はやめなはれ』だよ。何でもするんだろ?」
「だからって…。」
「安心しろ。誰もお前の裸なぞに興味はない。」
確かに現実社会では自分が思っている程まわりは見ていないってのはよくある事だが、全裸はさすがにみんな見るだろう…そして通報する。
「さあ、酔うがいい!!」
タマはスキュラにスキルを放つ。白い肌のスキュラが青みを帯びる。そして…
「ウゴェェ…。」
吐いた。
「これは…あれね……。」
丹澤慶子が呟く。
「あれって何ですか?」
「悪酔いよ。安酒を飲み過ぎるとああなるわ。」
「ハンクスだから安酒なのかな?スキュラには悪い事したかな?」
スキュラを気遣う位ならハンクスを気遣ってやれよ。何気に失礼だし。
「いずれにしてもチャ~ンス!!みんな叩け!!」
タマが号令をかけると一同が攻撃を再開する。全裸のハンクスも振り乱しながら回復に勤める。何を振り乱してるかって?髪の毛じゃないかな?短髪だけど…。
スキュラは明らかに攻撃のサイクルが遅くなっていた。そして、ついに大きな悲鳴を上げたかと思うと灰となって消えた。その瞬間マー君の石化が解ける。
「あっ。マー君大丈夫?タマ君のお陰で何とか勝てたよ。」
フェミちゃんがマー君にタマの活躍を
伝える。
「おい!!マー君!!オタマジャクシってなんだコラ!!」
忘れてなかったか…。マー君はメガネからメモ帳とペンを借り何やら書いてタマに貼った。
「ん?『カエル』?」
「あら。良かったわねタマ君。オタマジャクシからカエルに成長したわけね。マー君の感謝とお詫びなんじゃないかしら?」
「良かったねタマ君。」
フェミちゃんが満面の笑みで言う。
「良かったねタマちゃん。」
全裸でなくなったハンクスが言う。
「おめでとうタマ君。」
今回よく喋ったメガネが讃える。
「あ…ありがとう。」
雰囲気に呑まれタマはそう答える。そしてタマが納得いかないまま第5ダンジョン部は光に包まれダンジョンを後にした。
今回は品のない話だったな…。次回は格調高い上品な話に……する……かも?……え~と…無理!!出来もしない事を約束するのはやめよう…。つづく!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます