第30話 字がキレイなのです。
ムッツリハンクスのせいで苦戦したのは初戦だけであった。むしろムッツリハンクスのお陰でその後の戦いは緊張感があり、楽ではないが危なげなく進む事が出来た。ムッツリハンクスも丹澤慶子の優しさに触れ、いつも以上に真剣だ。ムッツリを3回も言ってしまった…。
「もう少しでボスよ。頑張って。」
丹澤慶子が檄を飛ばす。
「ここのボスは予習してあります。指揮してもいいですか?」
「相変わらず感心ね。もちろんよ。頑張ってねフェミちゃん。」
「フェミちゃん。ここのボス、スキュラだっけ?どんなんなの?やっぱりエロい?」
タマ、もうエロさはいいだろう…。
「エロさを私に聞かないで!!まぁ、上半身は綺麗な女の人よ。」
「上半身は?」
「そう。下半身は魚よ。」
「ほ~。人魚ってワケだね。」
「後、お腹辺りに6個犬の顔があるわ。」
「………。」
「後、人間の首の首飾りを…。」
「もういいよフェミちゃん…。エロさを上回るグロさだという事が分かった。」
タマはげんなりとした表情になる。ハンクスは少し残念そうだ。反省しても残念か?ハンクス。
「いいから聞いてよ。姿はどうでもいいんだけど、戦い方が重要でしょ?
下半身が魚って事で移動力はあまりないわ。剣を持ってるんだけど、攻撃力もそれほど高くない。」
「余裕で勝てそうだな。」
「それが、そうもいかないのよ。魔法が凄いのよ…。今まで私が盾になってたけど、私…魔法防御はからきしなのよね。」
フェミちゃんが心なしか申し訳なさそうに言う。
「じゃあ、どう戦えばいいの?」
ハンクスが心配そうに聞く。
「魔法防御が高い職業なのは先生とハンクス君よ。先生に盾になってとは言い辛いから…。」
一同ハンクスを見る。
「え?僕が盾になるの?」
「ハンクス…汚名挽回のチャンスだぞ。」
「タマ君、汚名は返上するんだよ。挽回してどうするの?」
「う…うるさいメガネ!!ハンクスが挽回するのは汚名くらいがちょうどいいのさ!」
自分の言い間違いをハンクスの悪口に変えるとは…友達なくすぞタマ。
「分かった…。やるよ。」
「ありがとうハンクス君。自分の回復に集中してね。」
ハンクスの後ろめたさを逆手に取った見事な作戦である。
「う~ん…。70点かしらね。」
え?ダメなの?
「フェミちゃん、先生が盾になってくれるってさ。」
「違うわよ!!魔法防御も物理防御も高い人…人なのかしら?…まあ、いいわ…いるじゃない?」
「あ…。」
フェミちゃんはマー君を見る。
「マー君…やってくれる?」
マー君はコクリと頷く。
「思ったんだけど、マー君って装備なんだから無敵なのかな?マー君が受けたダメージ、タマ君が受けてる様子がないんだけど…。」
メガネが今までみんなが何となく持っていた疑問を口にする。マー君は何やらジェスチャーをしている。
「……分からん……。マー君喋れないからな…。」
マー君が書くしぐさをする。
「ん?マー君字書けるの?え~と…はい。」
メガネがマー君にペンとメモ帳を差し出す。筆記用具を常に持ち歩くとは…真面目か!!
マー君はタマに手招きをする。
「なんだ?俺に何か手伝ってもらいたいのか?マー君に頼られるなんて初めてだな。」
なんか嬉しそう。マー君は近付いたタマをクルリと反転させると背中にメモ帳を置き何やら書き始めた。
「………って、おい!!俺は机か!!持ち主になんたる仕打ち……。」
怒りに震えるタマだが、書きやすいように動かないであげている。書き終えたらしくメモ帳を皆に見せる。そこには書道5段レベルの達筆の文字が並ぶ。
「お~。見事な字だね…。なになに?」
『無敵じゃないよん。タマの体力分のダメージで死亡扱いだよん。でも、あちき防御力高いから、簡単には死なないもんね。タマが死んだら消えるから、一応コイツも大事に…しなくてもいいか(笑)』
「……うん。分かった。」
フェミちゃんは文体をスルーした。
「俺は呼び捨てか!!」
タマ怒り再び。
「マー君の謎が1つ解けたね。
じゃあ、作戦はマー君を盾にして距離を詰めて各自攻撃。ハンクス君は後方で援護で、スキュラが魔法詠唱始めたらマー君の後ろに隠れる…っていうのでどうかな?」
フェミちゃんが言うと丹澤慶子を含め一同コクリと頷く。
「無理はしないでね。マー君!!」
フェミちゃんが気遣う。
「頼んだよ!!マー君!!」
ハンクスが鼓舞する。
「よろしくね!!マー君!!」
メガネが共闘を誓う。
「マー君!!このヤロウ!!」
タマが怒りをぶつける。そして、マー君はそれを無視する。
「じゃあ、作戦も決まったところで進みましょう。」
丹澤慶子に促され先を急ぐ。
そして、誰も気付いていない。タマの背中に『オタマジャクシ』と達筆で書いてある切ったメモ帳が張ってある事を…。どんな意味があるかって?ないよ、そんなもん!!
次回、スキュラ戦!!あの人のセクシーシーンがあるぞ!!……つづく!!
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