第29話 男だから仕方ないのです。

「このダンジョンで1つ注意点があるわ。」

 丹澤慶子が唐突に言った。

「なんでしょうか?」

「いや…フェミちゃんはいいのよ…。他の3人…男の子達にね。」

 丹澤慶子にしては歯切れが悪い。どうした?二日酔いか?

「違うわよ。」

 もはや何も言うまい。

「文句ですか?苦情ですか?クレームですか?それとも、文句ですか?」

 文句を2回言った。

「違うわよ。それほぼ同じ意味だし…。このダンジョンに出現するサッキュバス、ハーピー、そしてボスのスキュラっていうのが…その…女性型モンスターなのよ。」

「それで?」

「ゴールドモフモフの時も言ったでしょ?見た目を武器にする敵がいるって。こいつらがまさにそれなのよ。男にはね。つまりは…う~ん…露出が多いモンスターなのよ。」

「それは見た目がエロいと言う事ですか?」

「まあ…端的に言えばそうね。惑わされずに戦う事!!いいわね?」

「分かりました!!楽しみにしてます!!」

 丹澤慶子とフェミちゃんに溜め息をつかれた。


「僕はそんなことに興味ないから大丈夫だよ~。」

 ハンクスが丹澤慶子に聞こえるように言う。かっこつけてるつもりだろうが、本当に興味がないなら自分からは言わないよね。いわゆるムッツリだ。

「メガネはどうよ?」

 聞くなよタマ。

「え?それ聞く?まあ、人並みには…ね。でも、出来るだけ邪念は払うよ。そう言うタマ君は?」

「俺は自分に正直だからな。」

 世間ではそれをワガママとか自分勝手と呼ぶのだよタマ。

 短所は長所、長所は短所とはよく言ったもので、世の中には言い方を変えて短所を良く見せる事がはびこっている。例えば、倹約家という名のケチ、天然という名の馬鹿が挙げられる。因みに作者は個性的という名の変態である。

「そういえば、マー君は男なのか?」

 一同がマー君を見る。マー君は首を横に振る。

「え?女だったの?マー君じゃなくてマーちゃんだったのか?」

 マー君は首を横に振る。

「タマ君、鎧に男も女もないんじゃないの?マー君はマー君よ。」

 マー君はコクコクと首を縦に振る。フェミちゃんには本当に良くなついているな。

 

「出たわ。1、2、3…サキュバス3のハーピー2ね…。」

 丹澤慶子とフェミちゃん、マー君が構える。前方にフワフワと飛ぶ姿が見える。サキュバスは黒いコウモリの様な羽、ハーピーは白い鳥の羽の姿だ。そして…

「うむ…。確かにエロい姿だ。」

 サキュバスは半裸、ハーピーは4分の3裸だ。タマは仁王立ちで感想を言う。

「邪念は捨てる邪念は捨てる邪念は捨てる…。」

 メガネは経文のように呟きながら構えをとった。あれ?ハンクスは?

「みんな、あいつら地味に強いわよ。指揮はフェミちゃんが取りなさい。数が多いから私とフェミちゃん、メガネ君、マー君が前衛横一列に展開して撃破するのよ。タマ君はその後ろで危ない所をサポート、ハンクス君は回復だけに集中して……ってハンクス君?」

「………。」

「ハンクス君!!」

「え?あっ。はい…全然、全然大丈夫ですよ!!アハハ…。」

「…そう?じゃあ…突撃!!」

 丹澤慶子の号令で一気に距離を詰める。タマとメガネはやや「く」の字に体を屈めている。ハンクスに関しては「フ」の字に体を屈めている。何でかって?教えない!!

「敵が右に固まってる…。隊列変更。先生は一番左で後ろに回り込もうとする敵を足止めしてください。右端は私が固める…マー君が私の隣で次にメガネ君ね。やや扇状に

敵を包み込むように展開して!!」

 フェミちゃんの的確な指示で敵を右側に押し込む事が出来た。一体、また一体と確実に仕留めていく。

「ハンクス君!!メガネ君を回復して!!」

 フェミちゃんの指示にハンクスは反応しない。

「ハンクス君!!」 

 後方を確認する為に振り向いたフェミちゃんに隙ができハーピーの攻撃が襲いかかる。

「キャッ!!」

 マー君が押し戻そうと右に寄るとメガネとの間にスペースが空きサキュバスが間をすり抜けてしまった。

「まずい!!タマ君、お願い!!」

「あいよ!!」

 タマはブンブンとヒノキの棒を振り回しサキュバスの更なる進行を防いだ。あんまり効いてはいないみたいだけど…。

「先生ごめんなさい!!タマ君助けてあげてください!」

「しょうがないわね…。」

 丹澤慶子の斬撃一線タマと対峙していたサキュバスは塵と消えた。

 タマはそれを確認するとハンクスの所に走って行きヒノキの棒で思いきり殴った。パカーン!!と気持ち良い音が出る。

「痛い!!なんだよ!!タマちゃん!!」

「なんだよじゃねぇ!!ちゃんとしろ!!グダグダしていいのは俺だけだ!!」

 グダグダしていい奴なんていない!!タマはハンクスの胸ぐらをつかむ。

「おっぱいか?お前はおっぱいに見とれているのか!?俺だってな、もっとゆっくりと鑑賞したい!!だが、今はおっぱいにうつつを抜かしている場合じゃないだろう!!いいか?おっぱいはな…。」

「もういいわよタマ君。」

 丹澤慶子が話しかける。気が付けば敵は全滅していた。

「おそらくハンクス君はサキュバスのスキル『チャーム』にかかっていたのよ。だから、もうその辺にしておいてあげて。」

 タマはゆっくりとハンクスから手を離した。

「そうだったのか…。ごめんなハンクス。」

「う…うん。」

 一同は先に進む。

「先生。『チャーム』対策はどうすれば良いんですか?」

 メガネが丹澤慶子に聞く。

「状態異常を防ぐアイテムを装備するっていうのが確実だけど、気持ちを強く持っていれば防げるわね。今回は初めてだったから仕方ないわよ。ハンクス君もあまり気にしちゃダメよ。」

「…はい。」



「ねえ。タマちゃん…。」

 道中ハンクスがタマに小声で話しかける。

「なんだハンクス。」

「僕、『チャーム』になんかかかってないよ。」

「何?」

「タマちゃんの言う通り、ただおっぱいに見とれてただけなんだ。」

「先生が気付かないワケないだろう?自分でも気付かないうちにかかってたんじゃないのか?」

「そうだよ…先生が気付かないワケないんだよ…。きっと先生が庇ってくれたんだ。やっぱり優しいな先生…。」

「うむ。そうだとしたら、何か言う事はないのか?」

「ごめんなさい。」

「よし。今のは聞かなかった事にしてやる。」

「ありがとう。」

 友情だな。そりゃ見るよ…男だもの。見るよね?今「いやいや見ないし…」と思った男に言ってやりたい!!嘘つき!!!!

 今回女性の方には不快な思いをさせてしまったかもしれない……だが、作者は声を大にして言いたい。目を背けるな!!これが男の真実だ!!

 物凄くカッコ悪い事を宣言した所で……つづく!!


 



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