第28話 日本人の心なのです。
代謝アップのダンジョンは高校から自転車で10分程の所にある。
「これは…見事な…。」
珍しくメガネが率先して進んで行く。
「この枝振り…根張り…古さも申し分ない…片枝気味なのが欠点かもしれないがそれもまた個性と言っても良いかもしれないな…。」
「おい。メガネ、さっきから何ブツブツ言ってるんだ?」
「ああ、タマ君。この盆栽だよ。実に素晴らしい。」
代謝アップのダンジョンは盆栽園『五行園』にある。園内にはたくさんの盆栽が並んでいる。メガネが興味があったのは代謝アップではなく盆栽だったようだ。
「凄いんだろうな~…ってのは分かるけど…ごめん、正直分かんねぇや。」
「あ…これ可愛い。」
フェミちゃんが紅い実が成っている小さな盆栽を見付けて眺めている。
「みんな、触っちゃダメよ。観るだけね。」
丹澤慶子が注意する。
「お。いらっしゃい。ダンジョンかな?メガネの君はよく観てくれてるね。若いのに関心関心。」
建物の中から30代の男性が現れた。代謝アップのダンジョンがあるのにやや恰幅が良い。
「こんにちは。電話した那須野ヶ原高校第5ダンジョン部です。今日はよろしくお願いします。」
丹澤慶子が挨拶するとそれに倣って皆挨拶をする。
「盆栽って気難しい爺さんがやってるのかと思ったらそうでもないんすね。」
「こらタマ君失礼でしょ!!」
「いえ、そういうイメージだよね。サ○エさんの波○さんとか、ド○え○んのカ○ナリさんとか。」
「そうそう。後、ちび○子ちゃんのじいさんとかね。」
「はっはっは…。確かにじいさんばっかりだな。やってみると面白いんだけどな~。」
「分かります!!僕やってみたいです!」
こんなに熱いメガネは初めてだ。
「おう。いつでもおいで。観るだけならタダだし、手頃なのもあるしね。」
「ちなみにこの盆栽はいくらくらいするんですか?」
タマがメガネが最初に観ていた盆栽を指差す。
「ん?それか?それなら250万くらいかな。」
「2…ひゃく?マジっすか…。」
「マジっす。」
「じゃあ…この子は…?」
フェミちゃんが恐る恐る先程の紅い実の盆栽を指差す。
「それはピラカンサスって樹で…う~ん…若い人なら1500円でいいや。」
「ほんとですか!?買っちゃおうかな…。」
「若い人ならって事は先生なら5000円くらいですか?」
タマ…また余計な事を…。
丹澤慶子は園の人に見えないようにタマの尻をつねる。つねる…ひねる?…いや、ねじ切る勢いだ。
「先生だって若いじゃないか。ましてや吉祥寺ダークナイトさんには安くしちゃうよ。」
「え?」
「え?だよね?丹澤さん、何回か一緒にダンジョン行ったじゃないですか。」
「……あ…、小平ブレイカー?」
小平ブレイカーっていうと小平市をぶっ壊すみたいな名前だな…。
「思い出してくれましたか?大学時代は御世話になりました。体型変わったから分からなかったでしょ?」
「…小平ブレイカー…あの?」
フェミちゃんが震える。
「何?フェミちゃん知ってるの?」
「丹澤先生が活躍していた同時期にいたダンジョンプレーヤーよ。東京都小平市に住んでいたから『小平ブレイカー』と呼ばれていたらしいわ。上級ダンジョンのボス『レッドドラゴン』をアックスの一撃で倒した伝説は今でも語り草になってるのよ。」
「へ~。そんな人が何で代謝アップのダンジョンがあるのに小太りなんだ?」
「タマちゃん聞こえるよ!!」
ハンクスの初セリフ、ちゃんといたんだね。
「聞こえてるぞ。良い事を教えてやろう。代謝アップしてもそれ以上に食えば太る!!」
まぁ当たり前だね。
「じゃあ、ダンジョンに案内するよ。こっちだよ。」
小平ブレイカーは園の奥に案内しようとする。
「あっ。お支払いは?」
「そんなもんいらないよ。吉祥寺ダークナイトには何度と助けられたからね。」
またタダで入れてもらえるみたいだ。ラッキー!!
ダンジョンは盆栽園の裏手にあった。地下タイプのダンジョンのようだ。ダンジョン入口にも盆栽が飾ってある。
「これもまた…まだ若いけど良い五葉松ですね。」
メガネが食いつく。
ここで盆栽豆知識。松にも五葉松、黒松、赤松と種類がたくさんあるぞ!!五葉松にも産地で特徴があって、栃木県那須産の五葉松は「那須五葉松」といって世界的に有名なんだぞ!!ワケわかんねぇだろ!!
かくして第5ダンジョン部は代謝アップダンジョンに挑むのであった。……あれ?今回ダンジョンの話より盆栽の話しかしてない気がする……まあいいか!!つづく!!
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