第27話 全高ダンについて学ぶのです。

 丹澤慶子に召集され第5ダンジョン部は再び視聴覚室に集まっていた。

「明日ダンジョンに行く前に全国高校ダンジョン選手権大会について説明したいと思います。特にタマ君、あなたは引く程に何も知らないからしっかりと聞くのよ。」

「ふぁ~い。」

「じゃあ、とりあえずDVDを観てもらうわ。」

「!!ま…まさか、またあの…。」


 DVDを再生すると「栃木県ダンジョン課制作」の文字が大きく映し出される。

「ダンちゃん!!」

「ジョンくん!!」

「たけしの!!」

「全国高校ダンジョン選手権大会講座!!」

 増えてる!!たけしって誰だ!!

「今日は毎年9月に行われる『全国高校ダンジョン選手権大会』について教えてあげるわね。」

 高校生相手のDVDでこの作りはどうかと思うぞ栃木県…。

「ねぇねぇダンちゃん。」

「なぁにジョンくん?」

「こいつ誰?」

「たけしくんよ。」

「こんな新参者、僕は認めないよ!!」

「チッ。」


 しばらくお待ちください


「よろしくね。たけしくん。」

 しばらく待ってる間何があったんだジョンくん?

「よろしく~。」

「さぁ、説明を始めるわよ。全国高校ダンジョン選手権大会、略して全高ダンは栃木県那須町で毎年行われているわ。」

「何で毎年同じ所でやるの?」

「たけしくん、良い質問ね。それは大会を開ける場所がそこしかないからよ。」

「どういうこと?」

「ダンジョンでは他のグループと会う事がないのは知ってるわよね?」

「うん。」

「でも、那須町の道の駅のダンジョンだけ違うの。ボスが別のグループになるのよ。」

「へ~。」

「同時に複数のグループがダンジョンに入ってボスの部屋に入るとランダムで対戦相手が決まるわ。」

「ダンジョン途中で脱落しちゃったらどうなるの?」

「たけしくん、また良い質問ね。もちろん、その段階で脱落よ。ついでに言うと、ボスの部屋に約30分いても相手が現れなかった場合、不戦勝となるわ。」

「じゃあ、一回も戦わないで優勝って事もあるわけだね。」

「理論上はそうね。でも、今までそんな事はなかったわね。」

「そうなんだ~。大会のルールを教えて!」

「分かったわ。まずはグループは4人で構成してね。」

「なんで?ダンジョンには5人で入れるのに?」

「1グループに1人審判が入るのよ。ダンジョン内は中継や録画が出来ないからね。」

「質問!!」

「なぁにジョンくん?」

「何で中継や録画が出来ないの?」

「……現代の通信機器や機械、兵器等はダンジョン内で無力、無効化されるっていうのは基本よね?」

「あっ。そうだった。えへへ…。」

「えへへ…じゃないわよ。次はまともな質問をしてね。」

「は~い。」

「ねぇねぇダンちゃん。」

「なぁに、たけしくん。」

「審判は何をするの?」

「基本的には何もしないわ。ルールもほぼないしね。卑怯な手段を使おうが、全く問題ないわ。ただ、どんな戦闘が行われてどんな結果だったかを記録するのが仕事よ。

 そういう意味では審判っていうより記録員といった方が正しいかもしれないわね。」

「どんな人が審判をするの?」

「学校関係者のダンジョン経験のある人、高レベルの社会人、大学生ボランティアなんかが多いわね。」

「じゃあ、僕は綺麗な女子大生の審判がいいな~。」

「ジョンくんは黙っててくれる?黙らないなら黙らせるけど…。」

「ごめんなさい。」

「ねぇダンちゃん。勝敗はどう決まるの?」

「たけしくん、あなた本当に良い質問するわね。どこかのエロポンコツにも見習ってもらいたいわ…。

 勝敗は対戦相手を全滅させるか戦闘開始から約30分経った時に生き残っている人数が多い方が勝ちよ。また、その時に同じ人数が生き残っていた場合、記録された審判の報告を受けて審判部が判定して勝敗を決めるの。まぁ、そんな事は滅多にないけどね。」

「よく分かったよ。反則とかはないんだね?」

「1つだけあるわ。」

「え?卑怯な手段をとってもいいのに?」

「ええ、それは審判への攻撃よ。まぁ、超広範囲全体攻撃は仕方がない…っていうのが連盟の考えだけど、意図的な攻撃は反則になってペナルティが課せられるわ。」

「どんな?」

「審判死亡で失格、意図的な攻撃で1人倒された時と同じ状態とみなすのよ。また、判定になった場合は無条件で負けとみなされるわ。」

「今までそんな事はあったの?」

「審判死亡は過去に1件、意図的な攻撃はないわね。良い子のみんなは絶対しちゃダメよ!!」

「は~い。」

「ジョンくん、さっきから黙ってるけど何か質問はないの?」

「毎年どのくらいの参加者がいるの?」

「!!驚いたわ。ジョンくんがまともな質問をするなんて…。世も末だわ…。」

「酷い言われようだね。」

「まあ、いいわ。毎年全国から200チームくらい参加するわ。近隣の宿泊施設はウハウハね。」

「一枚噛みたいねダンちゃん。」

「そうね。たけしくん、一緒に期間限定で民宿でもやろうか?無許可で…。」

「犯罪だよダンちゃん!!」

「刑罰と儲けとを天秤にかけて見積りを出してみるわ…。」

「ジョンくん!!ダンちゃんが本気だよ!!」

「たけしくんは分かってないなぁ。ダンちゃんはそういう女だよ。気を付けてね。」

「ジョンくん、ちょっとこっちにいらっしゃい。」


 しばらくお待ちください。


「…と、いうわけで全高ダンについては分かったかな?たけしくんはどお?」

「は…はい!!よ…よく分かりました!!ダンさん、ありがとうございました!!」

「それじゃあ皆さん優勝目指して頑張ってね。またね~。」


 軽やかな音楽と共にDVDは終了した。

「さて…、何か質問はあるかしら?」

「先生!!」

「はい。タマ君。」

「ダンちゃんのモデルは先生ですか?」

「違います。後でちょっと顔貸しなさい。」

「ごめんなさい。もう言いません。」

 フェミちゃんが手を挙げる。

「先生。過去の優勝チームはどんな人達なんですか?」

「タマ君、質問っていうのはこういうのを言うのよ。フェミちゃんを見習いなさい。」

「ふぁ~い。」

「大体レベル50は超えているチームね。日頃ダンジョンに行きやすい栃木県が強いけど去年は北海道の小樽東高校が優勝してるわ。」

「どんな構成のチームだったんですか?」

「ちょっと待ってね……。ランクAの双刀使いレベル58、ランクAのバーサーカーレベル60、ランクAのグラップラーレベル52、ランクSの聖女レベル52のチームね。回復系最強の聖女がいたのが最大の特徴ね。」

「先生から見て、私達がレベル50まで上げた場合、大会に出てどの辺まで行けると思いますか?」

「難しい質問ね…。ウチにはタマ君がいるからね~。不確定要素がありすぎるのよ。まあ、みんなまだ一年生だし、出てみる価値はあるわよね。みんなどうする?」

「もちろん出たいです!!」

 フェミちゃんが食いぎみに答える。やる気があるのはもちろんの事、鈴木会長が丹澤慶子の事を黙っている条件でもあるから当然であろう。

「やったみたいです!!」

 メガネもやる気だ。将棋部に入ろうとしてたのが嘘みたいだね。

「ぼ…僕だって!!」

 ハンクスもモジモジしていて出遅れたがやる気だね。

「そう…。タマ君は?」

「え?」

 タマの手元を見るとノートに角の生えた人を落書きしていた。下手だが、それが丹澤慶子である事は容易に分かる。

「すいません。聞いてませんでした。」

「それは何?」

 やばいぞタマ。

「これは…え~と、そうだ!これは家の母ちゃんです。」

「あれ?タマちゃんのお母さんって髪短くなかったっけ?」

「こらっ!!ハンクス!!」

 

 この後の事はとてもここでは書く事は出来ない。タグに暴力描写有り、残酷描写有りと付けなければならないからだ。ジャンルもホラーにするしかないだろうし…。恐ろしや恐ろしや…。でも大丈夫!!次回までには何事もなかったように普通にしてるぞ!!………え~と…つづく!!

 

 

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