第4話 ダンジョンについて学ぶのです。

 4人が集まった第5ダンジョン部の面々は視聴覚室にいた。丹澤慶子が集合をかけたのだ。


「え~今日は君たちダンジョン初心者の為の講習を行います。まずはこの教材DVD を観てもらおう。」


 DVD をプレイヤーにセットするとゆったりとしたピアノの曲をバックに「制作栃木県ダンジョン課」の文字が映し出された。


「ダンちゃん」


「ジョンくんの」


「初めてのダンジョン探索セミナー。」


 明らかに制作費のかかっていない安っぽいアニメが始まった。


「これから私達がダンジョン初心者の皆さんにダンジョンとはどのような所か、どうしたら楽しいダンジョン探索が出来るかの注意点を教えてあげるね。」


「ねぇねぇダンちゃん。」


「なぁにジョンくん。」


「ダンジョンって恐い所なの?」


「そうねぇ。オバケ屋敷位の怖さはあるかもしれないわね。だから、心臓の弱い人や血圧の高い人は注意が必要よ。それでも行きたい人はお医者さんに相談する事をおすすめするわ。」


「そうか~。ケガとかしたりしないの?」


「それは大丈夫!!ダンジョンの中でのケガ、毒、麻痺、石化、死亡は全てダンジョンから出た時点でなかったことになるの。」


「どうして?」


「残念だけどそれは分かってないの…。でもダンジョンに入った人が出てこなかったり、出た後にケガなどが残ったという事例は一件もないわ。」


「それなら安心だね。それじゃあダンジョン探索に出発!!」


「ちょっと待ってジョンくん。ダンジョンに行く準備はちゃんと出来てる?」


「準備?」


「そう。いくら安全と言っても準備は必要よ。じゃあ一緒に準備をしてみようか。」


 チャララランと音が流れながら「ダンジョン探索の準備」の文字が画面いっぱいに出る。


「ダンちゃん、早速始めようよ。」


「その前にジョンくん、昨日はよく眠れたかしら?」


「うん。しっかり10時間は寝たよ。」


「それは寝過ぎね。でも、ダンジョン探索前日はしっかり寝ておくことも大事よ。」


「は~い。」


「じゃあ、始めましょうか。まずは食糧、水を忘れないようにね。低ランクのダンジョンでも2時間位かかるし、高ランクダンジョンだと16時間以上かかった事例も報告されてるの。ダンジョンの中にはコンビニとかないからね。」


「は~い。」


「後はティッシュペーパーも必要ね。ダンジョンの中にはたま~にトイレはあるけど、持って行く事をおすすめするわ。」


「は~い。」


「次に持っていかない物よ。スマホやパソコン、その他電子機器は使えないから持って行っても邪魔になるだけよ。後、ペットも連れて行かない方が良いわ。動物は入れないようになってるみたい。」


「へ~。どうして?」


「ごめんなさい。それも分かってないの。そういうものだと諦めてちょうだい。」


「は~い。後、武器とか防具とかは必要だよね?」


「良い質問ね。でも答えはNO よ。それはダンジョンに行ってから説明するわ。」


「は~い。じゃあ、今度こそダンジョンに出発!!」


 再びチャララランと音がなり「ダンジョン内のルールと注意点」と書かれている。


「さぁ、ダンジョンに到着したわよ。」


「ここがダンジョンか~。暑くもなく寒くもないね。」


「ダンジョン内は常に一定温度が保たれてるみたいね。ただ炎や氷のダンジョンもあるから気をつけてね。まぁ、せいぜい蒸し暑かったり、肌寒い程度だけどね。」


「あれ?急に服が変わった…鎧だ!!」


「初めてダンジョンに入った時点で職業が決定するの。ジョンくん、右腕の内側を見てごらん。」


「あ、見習い戦士って書いてあるレベル1だって。」


「ダンくんは戦士ね。ちなみに私はヒーラー…回復の魔法使いね。職業は自分では決められないわ。勝手に決まるの。不満でも我慢してね。後、レベルが20、40、60、80の時に職業がランクアップするわ。ダンくんの場合レベル20で戦士になるわね。」


「へ~。レベルはいくつまであるの?」


「100までよ。そこまで上げても攻略の難しいダンジョンはたくさんあるけどね。ほら、あそこに石像があるでしょ?ダンくん触ってみて。」


「うわ!!頭の中で声が聞こえるよ!!『何が入り用だ?』って聞こえる。怖いよ~。」


「大丈夫よ。それが『ショップ』よ。ダンくん、もう一度右腕を見て。レベルの下に数字が書いてあるでしょ?」


「うん。100って書いてある。」


「そう。それがダンジョン内で使えるお金みたいな物ね。ショップで武器や防具、回復アイテムとかを買えるわ。誰かにあげたり貰ったり出来ないから注意してね。」


「へ~。どういう仕組みなの?」


「しつこいわね。それも分かってないの。素直に受け入れてちょうだい。」


「は~い。」


「さて、私達は2人で来たけどダンジョンには最大5人で入ることが出来るの。出来れば最初は経験者を入れたパーティで入る事をおすすめするわ。」


「ダンジョンが混んでたらどうしよう。」


「それも大丈夫。何百人入ってもダンジョン内には一緒に入った人たちしかいないのよ。だからダンジョン内で人に会う事はないわ。」


「へ~。どうして?」


「いい加減ぶっ飛ばすわよ。それも分かってないの。2度と聞かないでね。」


「は~い。」


「さぁ、いよいよ探索開始よ。」


「やった~!!」



「ダンちゃん鎧着てるのに何だか体が軽いんだけど…。」


「良い所に気づいたわね。ダンジョン内では身体能力が上がるわ。鎧や剣も重みは感じるけど思ったほど重くないの。そうね…鉄の鎧で段ボールで出来た鎧位の重さかしら?」


「へ~。どうし…いや、なんでもない。」


「危なかったわね。でも、現実世界での身体能力も反映されるから体を鍛えるのも攻略の近道ね。」


「あっ!!何かいるよ!!」


「ダンジョン内のモンスターね。」


「青くてブヨブヨで気持ち悪いね。」


「あれはスライムよ。最弱のクソヤロウだからジョンくんみたいなデクノボーでも簡単に倒せるわよ。」


「凄くディスられてるけどやってみるよ。えい!!」


「やったわね!!こんな風に戦闘を繰り返すとレベルが上がっていくわ。お金も貰えるからどんどん戦いましょう。」


「本当だ。ちょっとだけお金が増えてる。」


「この調子で進むわよ。」


「は~い。」



「さぁ、このダンジョン最深部まで来たわ。」


「ダンちゃん!!何かいるよ!!」


「このダンジョンのボスね。あれを倒せば攻略完了よ。倒せば入り口まで飛ばされるから余力を残さず全力で行くのよ。」


「分かった!!え~い!!」


「よくやったわ!!これで攻略完了よ。」


「ダンちゃん。僕の10円ハゲがなくなったよ!!」


「そうね。ここの報酬は小治療だったみたいね。ダンジョンを攻略すると様々な報酬が貰えるの。治療系だと何度も貰えるけど、能力系…腕力や視力、記憶力なんかは一度しか貰えないから気をつけてね。」


「へ~。どうして?」


「チッ。」


しばらくお待ち下さい。


「さて、皆さん。ダンジョンについては分かったかな?それでは楽しいダンジョンライフを!!」


 軽やかな音楽と共にDVD は終了した。



「さて、基本中の基本の説明だったけど何か質問はあるかしら?」


「先生。」


 タマが手をあげる。


「はいタマ君。」


 いつのまにかアダ名で呼ばれている。


「あの後ジョンくんはどうなったんですか?」


「そうね~。ダンちゃんにボコられたと先生は思うわ。他にないかしら?」


「先生。」


 ハンクスが手をあげる。


「はいハンクス君。」


「ジョンくんの……」


「ジョンくんの質問はもういいわ。ダンジョンの質問をしなさい。」


「はい先生。」


 郷田さんが手をあげる。


「はい桐子ちゃん。」


 自分たちも郷田さんじゃなくて桐子ちゃんて呼びたいな~とタマとハンクス、そして石田も思った。


「最初は経験者と行った方が良いって言ってましたけど、誰と行けばいいんでしょうか?」


「私が行くわ。」


「え?」


 男子一同そろった「え?」であった。桐子だけ何故か目をキラキラさせている。


「先生経験者なんですか?強いんですか?」


「まぁ…それなりにね。それと……」


 丹澤慶子から異様な圧が発せられる。


「私がダンジョンに入った事、ダンジョンに入った時の事……誰にも言うなよ。」


 丹澤慶子に何があるのか?。丹澤慶子とは何者なのか?。謎は深まるが多分すぐに分かるであろう。え~と…つづく!!

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