第2話 創ろうとしてるのです。

 放課後のチャイムがなる。

 タマとハンクスは職員室へと向かっていた。無論第5ダンジョン部発足のためである。彼らの顔は凛々しく戦いに赴く勇ましさがあった。

 これから様々な試練が彼らに襲いかかるであろう…。


「別にいいわよ。」


 あれ?


「え?」


「だから、別にいいわよ…部活創っても。」


 彼らの担任、丹澤慶子(たんざわ けいこ)国語担当31歳独身、彼氏なし、得意料理はゴーヤチャンプルー…栃木出身なのに…。最近は帰りに大衆居酒屋でもつ煮をつまみにハイボールを引っかけるのが唯一の楽しみである。大丈夫か丹澤慶子。頑張れ丹澤慶子!!


「本当に?」


「嫌なの?」


「いや…。あまりにもあっさりと許可されて拍子抜けというか、なんというか…。

 普通こういう場合、何日以内に部員を何人集めないと許可出来ない!!…とか、部室がないとダメ!!…とか顧問を引き受けてくれる先生がいない!!…とかでなかなか出来ないもんじゃないですか?」


「学園ドラマの視過ぎね。ウチの学校は生徒の自主性に任せているから。更に言えばあなたたち運が良いわ。」


 そう言うと丹澤慶子は鍵を取り出した。付いている木製のキーホルダーには「将棋部」と書いてある。


「去年度将棋部は3人いたんだけど、全員3年生でね…今年度、廃部になったの。まぁ、別に部室がなくても活動は許可出来るんだけど…ないよりあった方が良いでしょ?」


「そりゃもう有り難いです。それと顧問の先生はどうすればいいですか?」


「私がやるわよ。将棋部なくなっちゃったし。」


 丹澤慶子は将棋部の顧問であった。しかし将棋のルールは全く知らない。駒の動かし方を知らないだけでなく、王を捨て飛車を守るような女…それが丹澤慶子である。


「いいんですか?」


「いいわよ。暇だから。」

 

 斯くして暇潰しの為に創った部活の顧問を暇な教師が引き受けた。型通りの申請書類を書き、晴れて第5ダンジョン部は創設された。

 

 そして、忘れてはならない…体育系部活棟に将棋部部室があるというナッパラ高校七不思議の1つが消滅した事を…。これからはナッパラ高校六不思議として語られるであろう。しかし、この物語でそれらが語られることは間違いなく…ない。

 

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