人生がクソゲーなのは俺の神様がクソゲーマーだからだ
5A
第1話
さて問題です。
下は大火事、上は17階で大ピンチ。これなーんだ?
わかるかなー?わかるかなー?
正解は俺が今置かれている状況そのものでした!
あつーっ!マジあつー!!
住んでいるマンションが火事になった。出火元はおそらく下の階のどこか。
俺は10階に住んでいる一介の学生。10階なのにね。
間取りとか風呂トイレ別とかは敢えてここで説明しない。だってこの部屋も燃えてしまうんだから。それぐらいすごい火災みたいだ。そして今、俺は何をすべきか途方に暮れている。
脱出方法がないのだ。
玄関を開けたら黒い煙が立ち込めていて廊下は夜みたいに暗く、生まれてから一度も体験したことの無い光景に驚愕し、その拍子に煙を少し吸っただけで喉が焼けるような感覚がした。咳が止まらない。これはもう廊下から地上へ降りるのは完璧に無理だ。
ベランダから飛び降りるのも無理な話。だってここは10階。なるほど天国に一番近い部屋ということになるな。
いやー、さすがにそんな事言ってる余裕も無くなって来た気がする。だって部屋がすごく熱いもの。火の手がここまで廻ってきているんじゃないですかコレは!!うおー焦る!!やっぱ飛び降りるしかないの?。一か八かにかけて世紀の大ジャンプ!?ムリムリムリ!だって人がゴミのようだし、ここから落ちたら結果的に俺がゴミのようになっちゃうし、受け止めてくれる親方も少年も居ないし。そんなことをしていると下の方から大きな爆発音が鳴り響き、俺の恐怖感を煽ってくる。、
こうなったらいよいよ飛び降りに賭けるしかないのか。
覚悟を決めろ!
涙を拭け!
せーのっ。
ジャーーーーーーンプ
「ちょっと待ったーーー!!!!」
飛び立とうとした瞬間、Tシャツの襟を引っ張られて窓から出ていた半身が元居た部屋に引きずり込まれた。急な引き戻しでバランスを崩し尻餅をついた。衝撃で嗚咽をあげる。何事かと引っ張られた方を見てみるとそこには女の子が仁王立ちしていた。
「そっから飛び降りたって助かるわけないだろー!10階だぞ?頭を使えこのあほうが!!」
俺と同じTシャツにジャージのハーフパンツで日本人…ではなく外人の子ども。サラサラの金髪ロングで目が宝石みたいに青い。剥きたてのゆで卵みたいにハリのある滑らかな白肌、こう…ロシア人の娘みたいな、洗練された美しさはまるで御伽噺の妖精か、神ロリ絵師が描いたような女の子。
「バカヤロー。私は妖精じゃない。神だ!!」
「うわっ!!幼女がしゃべった!!!」
スパーン!!頭を蹴られる。
「幼女でもない!もっと崇めやがれ。神だぞバカヤロー。」
すごく日本語が流暢で汚い。ここまで口悪いガキを俺は知らない。出会った直後は可愛い幼女だったけど、ク
ソ生意気なガキにクラスチェンジ。
「えーっと、お嬢ちゃん。隣に住んでる子かな?お父さんとお母さんは?」
「てめーまだわかんねーのか。アタシは神だっつってんだろ。裁くぞ。ていうかお前!能力値低すぎ!運動性能も知能も運も平均以下だし、アタシが今までどれくらい苦労してきたと思ってんだ!」
「は?なに言ってんだクソガキ。お前の相手は後でするからとりあえず今はここから出ないと死ぬんだって!」
明らかに年上の俺へ訳も分からない世迷言を連発するクソガキの相手をしているほど時間は無い。火の手は刻一刻とこの部屋へ近づいて俺達を襲おうとしているに違いない。
「あーそうだったな。とりあえず今はポーズしとっか。」
クソガキはポケットから今は懐かしい昔のゲームコントローラーを取り出して、その真ん中にあるスタートのボタンを押した。
ポピーーーン
電子的なFM音源的な音が響き渡り、部屋の真ん中に『POSE』のロゴが現れた。
なんだこれ。なんか周りが、止まってる?
部屋の雰囲気がおかしい。さっきまで聴こえていた喧騒が急に止んだ。そして部屋の壁掛け時計の秒針が止まっている。
「いいか、お前の人生はアタシがゲームのようにプレイしてやってんだ。この世界の人間は皆、アタシ達『神』のプレイで人生の問題をクリアしていくんだよ。お分かりしていただけましたでしょうか?神だぞ?覚えとけよ。」
プレイ?意味が分からない。この子、若くしていや若いからこそゲームと現実の区別がつかなくなってしまったのでは?小学生がアンケートで人が死んでもゲームみたいに生き返るって答えたヤツと同じ部類なのかと思うと少し同情して肩を下ろした。
すると俺の手や足が意思とは関係なく突如勝手に動き出した。ジャンプしたり屈伸運動したり。状況が飲み込めなくて声を上げ焦る俺を見て幼女がゲラゲラ笑っていやがる。
幼女の手にはゲーム機のコントローラーの様なものが握られておりピコピコ音を鳴らしながらボタンを押したりしている。そのボタンに連動するかの様に俺の体も勝手に動いてしまう。
「な?わかっただろ?お前が生まれてから今日までを操作していたのはこの私だ!」
「マジかよ…だとしたらなんで俺の元に来てるの?神様ってふつう現れなくない?」
「うぐっそれは私があまりにも下手で万年見習いだからこのままだったら人口少なくなっちゃうって言われて無理矢理修行の為に上司に落とされゴニョゴニョ…」
どんな教育方針なんだ天界は。しかしこれはチャンスだ。ショックを受けている暇は無い。本当にコイツが神様だったら何かチートとかそういう都合のいい技を絶対に持ってるハズ。
「おい神様。じゃあこの絶体絶命な状況を打破するために裏技とかないのか?」
「うーん。チートは無いけど死んじゃったから攻略不可能でしたーパターンだったらあたし怒られないしどうかな。」
「無しの方向でお願いします。」
深々と頭を下げてまるで神社にお参りするかのように二拍一礼でお願いする。
「仕方ない、それじゃあがんばってクリアしよう。お前の残機が最後の3機だから確実な脱出方法を見つけなければね。」
「え、残機3?最初はいくつあったの?」
沈黙。
何も答えず遠くを見る幼女。死んだ目で幼女を見つめる俺。コイツ、さては俺でもかなり失敗しているな…。
「…だって仕方ないじゃん!?こんな難しいステージ出てくるなんて知らなかったし、色んなやり方を試してみたけど最後は絶対お前死ぬし!!!もっとお前が空飛んだり水を出したり英霊呼び出せたりできれば良かったんだ!」
「んなの無理に決まってんだろがー!!!」
幼女は目に涙を浮かべながら弁明したけどそんなの誰が納得できようか。
ああこいつはアレだ。神様なのにゲームが下手なんだ。糞ゲーマーってやつだ。思い返せば俺の人生、学校で友達できなかったり勉強できなかったり上手くいかないのはコイツのせいだったんだな・
こんなヤツに俺の人生が操作されているのは大変ショックですが、今は一旦落ち着こう。
「えーと神様、どういった方法を試した結果俺は死んだんでしょうか。教えてくださいませ。」
「最初は単純に窓から落とした。んで画面枠からはみ出たら死んだ。マ○オの穴みたいな感じだね。」
うん。なるほど。
「次にドアから廊下に出て1階までダッシュで降りようとしたら途中で死んだ。多分一酸化中毒?」
へー。なるほどね。
「あとエレベーターが近くにあったからそれで1階へ降りようとしたらエレベーターが最初から1階で止まってたみたいで待ってたら死んだ。」
そっかーなるほどなるほど。
「んで、あとは」
「お前何回俺を殺してんだー!!!!!」
「しょうがねえだろ!!可能性は全部試してみないとどこでクリアできるか分からないんだから!!」
言っていることは分かるが、やっぱり自分の知らないうちにコイツのせいで命を削られていってるのが納得いかない。特にエレベーター待ちで死ぬとか残念すぎるだろ。
「あ、でも隠しアイテム見つけたぞ。コレを見てみろ。」
そう言うと神は玄関に言って片腕を天に突き上げジャンプした。するとそこには何もなかったはずの空間に大きな立方体が現れ、その中から光り輝く星型の物体が出てきた。これはもしかして…
「無敵になれる星『ムテキ君』だ。ほれ。受け取れ。」
神からムテキ君を受け取った瞬間、その星は俺の体の中に吸収され、体全体がキラキラと輝きだした。おぉ、これはまさにあの配管工のアレだ。何となく軽快なミュージックも鳴っている!…ような気がする。
「よし。今なら無敵だから炎の中でも苦しくないし死にもしないぞ。行け!走れ!!」
「よしきた!うおおおおおおお!」
神がポーズを解除した瞬間に俺は玄関のドアを突き破って向かい走り出した。ミッションは1階まで降りて外へ脱出することだ。確かに黒い煙が充満しているのに全く苦しくないし走っていても息が上がらない!
階段を急いで降り10…9…8…
ダッシュで下るだけの作業に少し思考する余裕が生まれる。このムテキ君の効果は何時まで続くんだろうか。
そんなことを考えると体の輝きと軽快に流れる音楽がゆっくりと失われていき、今まで軽かった体が段々と重くなり息苦しくなってきた。いや息が出来ない。明らかに体に良くない空気が体の中へ入っていく。
咳がでる。そして空になった肺にまた毒性のある煙を入れてしまう。酸素が足りない。苦しい。何も出来ない。熱い。吸ってはいけない煙を呼吸したいが為に取り入れてしまう。これはもう助からない…。
やがて目の前が真っ暗になった。
1機死亡。
「やっぱだめだったか。クリアするにはムテキ君の時間が足りないんだよなー。」
「お前分かってんだったら言えよー!!!無駄に死んじまったじゃねーか!めっちゃ苦しかったし怖かったじゃんよ!!!!」
気がついた時には自分の部屋にいた。腕を組んで他に代案がないか悩んでいる神。どうやらここがセーブポイントらしい。
でも、良かった生き返ってこれて。本当に良かった。まだ助かってないけど。
「しかしムテキ君の効果が1階に下りるまで持たないってなると、いよいよヤバイな…あと残機は2機。しっかり考えてくれ。お願いします。」
おれは険しい顔で神に土下座した。ほんともう死にたくないのでマジ。ムテキ君の効果が切れた瞬間の事を思い返すと今でもゾッとする。
「うーん。どうしよう。でも本当に粗方考え付くのは今のを含めて全部やったんだと思うんだよなー。こんなに難しいんだったら先輩からこの人間引き継ぐんじゃなかった…」
深いため息を吐いて人の人生に対しての愚痴を言う幼女。
土下座をしている俺の前でよくそんなこと言えるなこのクソガキ。ぶん殴りたい。
「なぁ、あのムテキ君って無敵以外にも効果あるのか?さっき使った時は玄関ぶち壊して行けた気がするんだけど」
「ダメージ無効化、パワー増大、運動能力増大の3つの効果がある。ただ1分しかその効果はもたないんだ。そもそもお前はパワーも運動能力も人並み以下だからせいぜいオリンピック金メダル選手ぐらいの
能力にしかならない筈だよ。」
オリンピックって。一般人の俺からしたら相当なレベルだ。でも、今の話が本当ならなんとかイケるんじゃないか?
「おい神、こんなのはどうだ。」
「いい案思いついたのか?言ってみろ。」
俺は自分の思いついた方法を神に言った。
まず星を取って無敵状態になる。そこからダッシュでエレベーター前に向かう。エレベーターは1階にあるから待ってたら星の効果が切れるって?違う違う。エレベータの扉を無理やり開いてそこからエレベーターのロープを滑って降りるんだ。そしてエレベータの箱の上に着地したら箱の中に入って、そこから1階フロアに出るっていう案だ。
「…お前すごいな!天才だな!それだったら1分でいけるかも知れない!お前すごい!馬鹿じゃなかった!!」
目を輝かせ鼻息を荒くして興奮する神。最後だけ少し腹立つがまあいい。早速実行だ。
「よし、じゃあ行くか!操作よろしく!!」
「ああ!お互い頑張ろうな!」
3、2,1、GO!!!の合図で隠れブロックを叩いてムテキ君をゲット。
そこから全力で走る!玄関ドアを突き破り階段とは逆方向のエレベーター乗り場へ走り到着。
閉まっている扉の僅かな隙間に指を入れて力づくで開く。
「ぐぬぬぬぬっ!!」
ムテキ君の力で身体能力が向上してるので割と簡単に開いた。扉が開かれると本来は中は真っ暗な空洞。下のほうまで繋がっている。真ん中にエレベータの箱を吊るして移動させる為の鉄線のロープが垂れている。
これを掴んで下まで滑り降りれば1階まで行ける。しかしもしかしたらエレベーターの表示が火事によって故障し、途中に乗客を乗せる箱があるかもしれない。
でもここまで来たし、残機は2機。ここは賭けるしかない!そう思った瞬間、目の前に赤い矢印が発生した。「GO!!」と表示されてクルクル立体的に回ってる。これが神様の遊ぶゲームなんだったらこのルートは正解ってことだろう多分。
俺はレスキュー隊員がポールを滑り降りるようにエレベーターロープを滑り降りた。
通常であればこの速度と材質と長さで手の皮が剥け肉が裂け骨が見えるぐらい悲惨なことになっている所だが、ムテキ君の効果で無傷でいられている。星すごいよ。
ある程度降りると地面のようなものが近づいてきた。。エレベーター本体だ。
本体の上に着地し急いで非常用脱出口から中に進入し扉を力づくで開ける。そしてフロアの扉をまたもや力ずくで開けるとそこは真っ黒い煙が充満して前が見えない。しかしまだムテキ君の時間には余裕があるようで正面玄関へ向けて走り出す。
光が見えてきた。太陽光だ。俺は無我夢中で走った。ロビーのガラスを突き破り消防隊員と野次馬のが集まるマンションの敷地内に到着した。同時に体から光が消えてムテキ君の効果がギリギリだったという事に気がついた。
「生存者がいたぞー!!!」
救急隊員の声が周りに響き渡り俺を毛布で包み込んで抱きかかえてくれた。
「君、大丈夫か!怪我は無いか?10階から降りてきただと!?信じられない…今病院に連れて行ってやるからな。」
体は無傷だが心が疲れきった俺を支えてくれる救急隊員のおじさん。ストレッチャー持って来い!と指示を出している。
周りを見ると様々な消防車や飛び降り用のクッションなどが用意されていたみたいだ。まあでも俺が選んだルートが正解だったんだろ。GOって出てたし。こうやって助かってんだし。
何は友我、終わった…これでクリアだ。と思った瞬間、マンションの一室が大爆発した。ガラスが派手に割れて地面に降り注ぐ。あぁ、あそこって俺の部屋だ。あぶねー。もうちょっとあの神とケンカしてたら普通に死んでた…
あれ、あのガキはどうした?
まさか死んだのか?
いやいやいや。神様なんだから死なないし、自分でどうにか出来るだろ?
え、ウソ。お前出てこいよ。神様。死んだのかよマジで!おい出てこいよ!いるんだろ!?
心の声なのか本当に口に出てしまっているか分からない。それぐらい焦っている。
最初現れたときはひょっこりと脈絡も無く出てきたのに今は全く現れる気配が無い。
喪失感と絶望感が俺の心に圧し掛かってくる。重い。なんだこれ。全然ダメだ。息をしているのに生きている心地がしない。1回目の脱出失敗の時よりも息が出来ない感覚。
残機はあと2機。もう一度今と同じルートを辿れば。いや、ムテキ君は一個しかない。俺が担いでもっと早く走ってあいつにはその間息を止めてもらって、鉄線は片手で担ぎながら降りて…エレベーターは脱出口をもっと早く見つけて…
頭の中で必死に2人で助かるシュミレーションを繰り返す。上手く行かないかもしれない。あんなヤツ別に助ける義理は無い?バカって罵られるかもしれない。2回目は上手くいかないかもしれない。次が死んだらラスト。
それでも俺は…再び黒煙立ち込めるマンションのロビーへ戻って行った。
残機 1
「お前は本当にバカかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっ!!!!!!!!」
幼女のフライングニーが俺の顔面を強襲した。
「何で戻ってきた!!意味が分からん!やっと難関箇所を私の神的テクニックプレイで潜り抜けられたのに、なんで戻ってきちゃうかなー!改めて問います。お前ってばか?それともあほ?」
「いやいや、あのまま部屋にいたら神様が爆発で死んじゃうと思って、最後の一機で一緒に脱出しないとなと思いまして…」
幼女の膝を顔にめり込ませながら弁明する。幼女はそっと膝を顔面から抜き、出会ってから初めて見る驚きと表情と頬を赤らめた表情が一瞬垣間見えたが多分錯覚だったっぽい。
「クソアホーーーー!!!わたしゃ神様だっつってんだろ!!!自由にテレポートできるに決まってるんだろうが!!!」
ですよねー。何となく分かってましたが、万が一の為に戻ってきましたー。すみませーん。
「まぁいい。ルートは分かった。とりあえずもう一回さっきの方法でクリアするぞ。まったく…私の神プレイを無駄にするなよまったくもうまったく。」
ブツクサ頬を含ませながらコントローラーを用意した。俺も玄関へ行き、隠しブロックを叩いて星を出す。
「あれ?あれ?」
拳が空を切る。いや、もともとそこには何もないから当たり前と言えば当たり前なんだけれど、さっきまで起きていたハズの事が起こらない。
「おいどうした?早く星を出せ。」
「あのー、出ないんですけど。隠しブロック。」
「は?」
2人の時間が止まった。ポーズボタンは押していない。
そして2人は同じタイミングで悟り。目が合ってお互い悲しく笑う。
ランダム発生とかマジ鬼畜設定かよ。
「うわーーーー!もうだめだ!!おしまいだー。もうお前死ねー。どうでもいいわー。私は万年見習い決定だー。」
「ちょ!あきらめんなって俺まだ死にたくないから!」
「いやーだいじょぶだいじょぶ。天界も良いところだからー。まぁ地獄に落とされる可能性もあるけどねー
コントローラーを床に投げ出して不貞寝する神。もう本当に腹立つコイツ。
しかし、星がランダム発生と言うことはさっきのエレベーターのルートは攻略不可能。もちろん煙の中を突破するのはルート的に間違ってるはずだ。完璧に詰むゲームなんて存在しない!と思う。昔のゲームを除いては。
考えろ考えろ考えろ…。外には飛び降り用のクッション。だが窓から落ちたら機は減ってしまう。外には消防隊が既に色々な車両を用意していて…
ちょっと待て、難しく考えすぎてないか?
「おい神様、別に無理に脱出しようとしなくても良いんじゃね?」
「は!?遂にあきらめたのか?」
「いや、だってさ…さっき脱出成功したときに見たんだけどさ…」
「お前何言ってんの。なんか特殊なアイテムでも見つけた…あ。」
俺は外を指差した。神様もその指の先を見てあるものに気づいたみたいだ。
そして俺達2人は窓を開けて下に待機している『はしご車』へ向けて割れんばかりの大声で叫んだ。
「助けてくださーい!!!ここでーす!!!ここにいまーーーーーーす!!!!」
「いやー。まさかあんな簡単な選択肢があったなんてなー。ごめんね。沢山機を使っちゃって。」
病院のベットで寝ている俺の横に座ってばつが悪そうに笑いながら話しかける神様がいる。
はしご車に助けを呼び先端の籠に載せてもらった瞬間、部屋が爆発した。俺はその爆音に驚き転倒。膝を強打。そして骨にヒビが入ってしまった。火事で怪我をしたのではなく、ただ単にビビッて傷を負うとはなんとも恥ずかしかった。いや、命が助かったんだから贅沢は言ってはいけない。
「なぁ、その機を増やす方法ってないのか?正直これからお前に俺の人生をプレイしてもらうのは不安で仕方ないんだけど。」
「まぁあるにはあるんだけど、めんどくさいんだコレが。でもお前入院中暇なんだから私の変わりにやっといてくれよ。暇なんだろ?友達もいないんだし。
友達いないし暇のは認めるが、コイツにはいつかビンタだ
「でもなぁ、怪我してるからあんまり動けないぞ?」
「あぁ、それなら…今回はおお礼を兼ねて。特別だぞ。」
神様がニコッと笑って俺の怪我している足を撫でるとさっきからジンジンと響いていた痛みが消え、寧ろなにか調子が良くなった気がする。いや、これ治ってる!立ち上がって体重をかけても片足で跳んでも痛くない!!!すげー!!!
「な…内緒だからな!あと残機を増やす方法は…」
神様が俺の耳元で妖しげな単語を繋げた卑猥にも取れる言葉を言い出した。その言葉を幼女とはいえ女性の声で聞いて顔を真っ赤にする俺。
「はっ!?ナンダソレ!?」
「たのんだぞー!私は用事があるから帰るからなー。」
神様は俺に手を振りながら走り去った。病院は走ってはいけません!と看護士に言われてびっくりしてる姿のおまけつきで。見た目は幼女だから普通に怒られる姿にやっぱりどこか神様らしさが足りないと思った。
そして俺は神様に言われたとおり残機を増やすため病院内にある小さな池へ向かう。
「なるほどね。でもほんとにこんなんで機増えるのか?」
おれは半信半疑になりながらも病院で飼っている日光浴をしている亀の頭を撫でている。そう、神様の言うとおり亀頭を優しく撫で回せば残機がドンドンと増えるらしい。
まぁ配管工のあのオジサンも亀踏んで機増やしてたもんな。おっなんか亀の頭上に文字が浮かんだぞ。1撫でするごとに1Up1Up1Up1Up1Up1Up1Up1Up1Up…おもしれー!99機にしちゃおう。これで当分安心だ。
ずっと亀頭を撫で回してるド病院の方から何か音が聞こえる。悲鳴とかガラスが割れる音とか日本でまず聞くことのない銃声。
なになになに!?こわいこわい!何が起こってる!?あたふたと辺りを見回していると病院の玄関から銃を持ったアイツが全速力で走ってくる。後ろにはナース服やパジャマ姿のゾンビの大群が追いかけてきている。
「うおおおおおおお!!!裏技使おう薬品室入ったら変なクスリばら撒いちゃってゾンビ大量発生させてもうたああああああ!!!!!」
「はああああああああああ!??!?!?!?!?」
両手に持っていたマシンガンのうちの1丁を俺に渡して襲い掛かるゾンビたちを蹴散らす神様。
「仕方ない!おい、今度も協力プレイだ。脚を引っ張るなよ!」
ほんともう、このクソゲーマー勘弁してくれ。
俺はゾンビの大群に向けて引き金を引いた。
人生がクソゲーなのは俺の神様がクソゲーマーだからだ 5A @5A5A555
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