すべての始まりの場所
ワシントン州 ハリソン夫妻の自宅 二〇一四年六月三日 午後六時三〇分
思わぬ香澄の一言がきっかけとなり、突如ある記憶を呼び起こしたハリソン夫妻。その場所こそ、トーマスが行く可能性がある最後の居場所でもある。
「かつてのトムがリース・ソフィーたちと一緒に暮らしていた場所――それはポートランドだよ」
ケビンの口からポートランドという場所が告げられ、フローラも首を縦に動かす。
「ポートランドと言うと確か――シアトルがあるワシントン州の一つ南にある、オレゴン州の中心都市ですよね?」
「えぇ、そのとおりよ。さすが香澄、何でも知っているのね」
「うん、そうだよ。僕らの家からポートランドまでだと、車で大体数時間ってところかな? ただ道が込んでいる可能性を考慮すると、僕らが向こうへ着くのは大体、明日の午前〇時から二時くらいの間かな?」
ポートランドへ到着するおおよその時刻を逆算し、そこから新たな希望を見いだす香澄たち。そして新たな目的地が見つかったことで、消えかけていた希望の光を灯す。そのことに大きく歓喜し、一同は早速外出するための準備にとりかかる……
オレゴン州にある中心都市のポートランドへ行くことが決定した香澄たちだが、マーガレットが何かを思い出したかのように発言する。
「あっ、ちょっと待って。私たちはこうして車でポートランドへ行くことが出来るけど、トムはどうやって向こうへ行くのよ? あの子は子供だから、車を運転出来るはずないし……」
「メグ、よく考えてもみて。ポートランドはオレゴン州の中心都市で、ワシントン州の一つ南にあるのよ。だからシアトルからポートランド行きのバスも、定期的に出ているはず。そのことを何らかの方法で知ったトムは、おそらくバスを使ってポートランドまで行ったのよ」
「……あぁ、なるほど。その手があったわね。こういう時こそ、やっぱり香澄は頼りになるわね」
「ありがとう、メグ。でも今は一刻を争うわ。早く準備を済ませて、今度こそトムを……私たちのお家に連れて帰りましょう」
「えぇ、もちろんよ。ジェン、あなたもそれでいいわよね?」
「はい、私の準備はいつでも大丈夫です」
横で話を聞いていたハリソン夫妻は、“外出する前に少し時間が必要かい?”と香澄たちへ問いかける。だが必要なものはすでに用意していたためか、“いえ、今すぐにでも出発しましょう”と香澄たちの元気な返事が返ってくる。それを聞いたハリソン夫妻も上機嫌になり、香澄たちを連れて車に乗り込んだ。
「ええ。私の準備もすでに出来ているから、早速行きましょう」
「そうだね、フローラ。……さぁ、みんな。そうと決まったら、僕の車に乗って!」
身支度を終えた一同は、急いでケビンが運転する車へと乗り込む。車のガソリンメーターも満タンで、ガソリンスタンドへ立ち寄る必要もない。そのまままっすぐトーマスがいるであろう、オレゴン州のポートランドまでたどり着くことが出来るのだ。
『ごめんなさい、トム。あなたにはこんなつらい想いばかりさせて。でも今度こそきっと……あなたの心を救ってみせるわ』
各自トーマスに対する想いを
香澄の考察により、ハリソン夫妻たちはトーマスがかつて住んでいたオレゴン州のポートランドへと向かう――果たして香澄の言う通り、トーマスは本当にポートランドに姿を見せるのか? そして再びトーマスを見つけた時に、香澄たちは今度こそ少年を救うことが出来るのか?
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