感傷に浸る間もなく

    ワシントン州 レイクビュー墓地 二〇一四年六月三日 午後三時三〇分

 彼らの姿が消えた後、トーマスは両親の墓前の前に膝を落とし、心のむなしさや孤独が一気に解放された。それによって、彼は気持ちより先に涙が溢れだし、両親の墓前に悲しい音色を奏でている。

「……い、一体僕はこれからどうすればいいの? どうすればパパとママに……もう一度会えるの? 今さらケビンたちの家に帰られるわけ……ないよね」

 亡き両親への想いをしっかりと受け止め、そして理解することが出来なかったトーマスにとってこれ以上つらいことはない。黒色のカーテンが巻かれている世界の中で、何度も大きな声で“パパ! ママ! 一体どこにいるの!?”と叫び続ける。だが心の中で一人叫ぶ続けているということもあり、トーマスの問いかけに答える者は誰もいない。

 

 強い孤独がトーマスの心に荒波としてただようなか、深い愛情や温もりを求め続けている。そんな哀しみに打ち浸れる中、ふとしたことからトーマスはあることを思い出した。

「そ、そうだ……僕にはまだ行っていないがあったんだ。ここからだと少し遠いけど、このままだと僕は先に進めない!」

 突然何かをひらめいたのだろうか――これまで生きがいを失っていたと思われるトーマスのまなざしに、再び光が見えはじめる。そして何かを決心したのか、両親が眠るレイクビュー墓地を後にしたトーマスだった。


 少し前までは香澄たちの元へ戻ろうと考えもしたトーマスだったが、突然彼の前に亡き両親が姿を見せたことにより、事態は一変してしまう。トーマスのもう一つの居場所とは一体どこなのだろうか? そして香澄たちは、そんな彼を見つけることが出来るのだろうか? トーマス少年の自分の未来を決める旅は、まだ終わりそうにない……

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