やってはいけないこと=設定編=

 文章技巧的なやっちゃダメはもう書いたんで、次は設定におけるやっちゃダメについて。設定でのタブーなんてのは本当はないようなものですが、これはヤバイぞというような事柄だけ、2~3挙げときます。


 まず、これ、二次創作においても嫌われてますんで、どこかで聞いたような話だと思いますが、「踏み台」「アンチ」「〇〇下げ」この三つは嫌いな人が多いと思うので注意してください。そもそもで、主人公を引き立たせる為に周囲を下げて見せるというやり方は、大人向けのジャンルではあんまりいい顔はされません。やっぱ読んでいて気分のいいもんじゃないんで。子供はその構図に気付かないので素直に喜ぶでしょうが、ちょっと大人になれば、その程度は見抜けるので。


 例外的に、警察小説や探偵小説、テンプレ小説などで見られるこれらはもはや形式という位置付けなのであまり喧しくは言われません。いわゆる「水戸黄門的黄金パターン」ですね、いじめっ子が調子乗ってラストにぎゃふん、ていうのは様式美。三倍返しだ!とかもこのパターンの小説で、大人にも大人気です。


 これらはやはり、ある意味でテンプレートと同類と言えると思います。


 警察小説や探偵小説で、無能なエリート刑事なんかが山盛りに出てきたりしますが、実際には刑事事件担当の刑事っていうのはその地域全体からの生え抜き、選りすぐりの精鋭陣ですから、無能なんてのは一握りのはずです。常識で考えれば。

 政治家や資本家が汚い連中と思われ、オタクという人々がああだと思われるのも、これ全て、イメージに過ぎないわけです。社会通念ね。


 そういう事は大人でなくともある程度の年齢ならば当たり前に解かっている事柄だったりしますよね。冷静に、深く考える状態において、それは当たり前に解かります。このエッセイでしつこく書き方に二種類あるって言ってますんで、だいたい、予測がつくかと思いますが、書き方によってはこういう様式美は使えないって事です。


 描写は、読者の読むスピードを下げ、注意深さを呼び戻します。じっくり読むということは、単に文章を味わうというに留まらず、注意深く読むということですから、読者は細かいことによく気付き、こういう様式美といった誤魔化しを受け付けなくなります。考えながら読むからこそ、行間だの空白だのまで読もうという思考も現れるからです。


 なので、一人を抜きん出ているように見せかける為に、周囲の人々を下げても、その意図がバレてしまって逆に不興を蒙るのです。アザとい手法には違いないので。

 シリアスで重厚な物語では、こういう安易なお約束は使われません。常識で考えて妥当な人物像がそれぞれに当て嵌められ、決して主人公の為の引き立て役などといった役回りは出てこない作品が多数だと思います。


 これ、米国で探偵譚が廃れた原因の一つとも言われたそうなんですね。頭一つ飛びぬけた人物なわけです、探偵というのは。その頭一つ抜けているという表現で、周りを下げる以外のやり方が難しいのと、FBIやCIAといったエリート捜査陣の能力向上があり、彼らの上を行くという人物を書ける作者が居なくなったからだ、とも言われたようです。ほんとかどうかは知りませんけど。


 作者より頭の良いキャラクターは作れない、という言葉もありますが、実際のところは、どこかにも書きましたが、専門職が専門に行き過ぎて、一般的読者の理解の範疇を超えてしまった、というあたりの事情が関係するのでしょう。映像ならまだ辛うじて解説が出来ているけれど、文字だけで全てを賄う小説のジャンルでは難しい話だと思います。


 推理ジャンルというのはまた特殊ジャンルでもあり、相撲のように「横綱相撲」なんてのを求められてしまいます。フェアである、という一事ですね。


 品格みたいなものを言われてしまう世界です、ただ「あっ!」と驚かせばいいというわけじゃない、みたいな事を言われてしまうジャンルです。他のジャンルとは別の意味での足枷は多いのですね。色々と、やっちゃダメ、があります。


 例えば、ある洋画であったケースですが、ナレーターを兼ねた主人公が、実は犯人というパターンがありました。推理モノにあるまじきアンフェア。(笑


 これ、なんでダメかというと、「お前、自分が犯人ならそこにも言及しろよ、自分の心の中だろ!?」という。

 その映画は完全にダメな見本でしたけども、この、「文章上の先入観」を利用するという手法、叙述トリックには多いんですけども、これはどこかにモヤッとした読後感を残します。私なんぞは、これ、フェアと言いきれるのかどうかちょっと疑問視です。”文章”は”トリック”じゃないよね、という。もちろん、OKなんですけどね。


 さて、二次創作における「踏み台」「アンチ」「〇〇下げ」というのを一応解説しておきます。二次では、もちろんですが原作の登場キャラを使いますね、このキャラたちを、独自解釈に基いて、特定の別のキャラクターの為の引き立て役に使う手法のことです。「踏み台」というのはAの失敗をBにフォローさせることでBを引き立てる事で、「アンチ」は自分の嫌いなCというキャラを文中で理不尽に扱う事で、「〇〇下げ」はいわゆる、こんなに不幸なボクチン可哀想、を原作無視でやる行為、でしたっけ? まぁ、興味のある人はWikiとかでググってくだされです。


 表現の自由ってことで、何をやろうが別に構やしませんけどもね、米国あたりじゃ好きなキャラほど残虐に殺したいってイカレたファンも珍しくはないしね、創作の上なら何やったっていいとは思いますけども、逆上した別のファンに叩きまくられて泣くなよ?というわけでね、自己防衛ってのは常に頭に入れときましょう、て話。(見知らぬ誰かへの配慮だなんてそんな歯の浮く話じゃないです、脳みそ通して考えてからUPしろて話ね)


 どんなコトでも、ギリギリのラインてのはあります。見極めが大事です。

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