描写の際のざっくり注意点・準備編

 違和感を抑えつつ情報を伝達する方法は三通りです。描写を使って説得しつつ伝達するか、事象だけを書いて解釈は読者に丸投げにする(文豪式)か、定型文を多用してパターン化してしまう(テンプレ)か、です。


 後者二つは省略系の手法であり、前者は加算式の手法であるってことも書きました。描写は、伝える事柄を絞り、不要は一切描写しないというものになります。


 描写をする上で、これだけは要注意として気を付けねばならないポイントがありまして、それは文章を感覚で操っていると陥りやすい、定型文との混合というミスです。描写で、読み辛いほどのレベルで巧くない文章というのは、ほぼコレです。感覚で綴ること自体は構わないのですが、それが定型文多用で為されるせいでチグハグになっているのです。定型文自体が、描写ではあまり歓迎すべきものではないので。


 絵画で色を置くタッチのようなものと考えてください。ドット絵の点々の微調整。これがチグハグになるのが、定型文利用ですので。定型文というのは、所詮は他人のタッチなので、そこだけが浮いてしまうわけです。


 描写を読みなれた人は、作者ごとの個性という統一ルールに従って読んでいるので、そこへ他者の文章が混じれば、それはそのまま違和感になるということです。この感覚は描写を読み慣れていない読者は鈍感なので気付きません。良質の読書をせよ、と言われる理由は感覚の研磨の為です。特に描写は巧い下手の区別が付けられるようになるトコロからが出発点ですので。区別が付かねば書けないは理屈です。


 テンプレで書く癖がある作者は、定型文のパターンの中にある他人の肌触りに鈍感です。それぞれ文体には作者の味が多少は付いていますが、それを平気で混ぜてしまいます。ある部分では誰それ、別のある部分は誰それ、という具合。それは省略系の流し読みで読むケースでは問題にならない微細な点でも、じっくり読みのケースでは問題視されます。前の一文と次の一文との微細なテイストの違いにも気付く読者が相手だということを肝に銘じてください。


 自身が文章を綴る際に、ちゃんと自分の考えた文章で綴っているのか、それとも他人の文章を参考にして模写しているのか、その感覚の違いにまずは敏感になりましょう。これは絵でも文でも同じ、感覚の問題です。


 ゼロからは作れない、結局は他人から貰ったもので構築するのだ、という意見もありますが、一旦自分の中で消化して自分のモノとして吐き出してきた言葉と、未消化でそのまま貼り付けただけの言葉では違う、ということで。


 文章に関してで言えば、文章そのものを吟味しながら構築しているのか、意味さえ伝わればよいとばかりに書き綴っているのか、その違いでもあります。


 私自身がかつては未消化で貼り付けという書き方をしていたので両者の違いはよぉく解かりますが、吟味しながら書くというのは本当にその修飾語、助詞、副詞、てにをはの当て嵌めに至るまでを、いちいち考えながらで書いていきます。

 それを当たり前にやってきた人たちは、そうではないもう一つの書き方が理解出来ないくらいに、それが自然となっています。逆もしかり、この書き方が想像も出来ないという作者さんもいらっしゃいます。こういう作者さんに教えようとして、未知との遭遇が起きたのが、件の事件でした。アドバイスのしようがない、という。


 異文化との遭遇。深刻さが伝わればよいのですが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る