描写の際のざっくり注意点・理屈編

 価値観だったり、好き嫌いだったり、自分の持っている既存イメージだったりとかが記述と違うと違和感になります。ざっくりひと口に言うと。


 なので、小説やらの表現作品というものは、受け取る側の人々との間のこれらのズレを「説得」する形で違和感を埋める必要があるのです。


 その手法の一つが、描写という方法です。


 例えば、崩壊後の世界観というものを設定したとしましょう。読者それぞれに、世界が崩壊したならどうなるかという辺りのイメージは、創作をしない人であってもある程度はイメージされているものです、そこにズレが生じます。

 多くの場合、読者は創作物だからという理屈でそのズレは黙殺してくれます。つまり、フィクション、作りモノだから、という理解。そこから、不都合には目を瞑るということで、本編が始まればたいていは忘れてしまってくれます。

 描写を出来るだけ省いて文体を軽くするジャンルの小説の場合は、この原理を利用するわけです。しかし、描写をすると決めた作者さんは、描写で解決しましょう。


 最初に風景を書く。その描写で、ただ見えるモノを書くだけでなく、象徴的なモニュメントを捉え、場所の特徴や癖までを伝えるようにしたいものです。

 いきなり刑場の風景で始めれば、インパクトを与えられるだけでなく、その世界観がハードで情け容赦のない世界であると知らしめることも出来ます。刑場を見る人々の反応を描写すれば、その世界の人々がどういう考え方を基本とするかも伝わるわけです。これは、みっちり描写をするほど伝えやすい。


 逆に、一人称小説となると、この描写が主役の目や思考というフィルターを通したものとなる為に、それを作者は考慮して書かねばならないという縛りにもなるわけです。三人称の場合は、視点者の思考によって偏向性が加わることはありません。


 これらの目的は、読者に対し、「あなたの思う常識は、この世界では通用しませんよ、」という但し書きです。宣言であり、説得でもありますので、この説得が巧くいくように書かねばなりません。了解を得る、ということです。


 描写をする場合には、しない場合に比べて説得は格段に容易くなり、また、一人称のような面倒なフィルターを考える必要もないという利点があります。

 ただ、描写をすると決めた場合のネックとしては、描写が巧くなければ読んでもらえない、という点が出てきますので、それだけは注意してください。

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