【寄り道】まだ救いのある絶望②
はい、前回はなんとも萎える話をしました。なんでかっつーと、ホラーとかシリアス展開な物語では、これの対策が必要不可欠だからです。
観客は、絶対的に安全な場所からポップコーンでも食いながら観てます。
安心安全、と言えばもう一つ、『主人公はとりあえず最後まで安全パイ』という法則もありますね。どんな危険な目に遭っていようと主人公である限りは死にゃしないだろう、という安心感です。ラストでない限りそのピンチはただのフェイント。
これも物語の緊張感をゴリゴリ削いでくれる厄介な心理です。こんなのがあるから、すごくシリアスな話ですごく危険なシーンを描いていても、なんかの拍子に笑いが起きてしまったりするわけですわ。読者、観客、ヨユーで観てますから。
これをなんとか怖がってもらう、ハラハラしてもらうにはどうするか?
方法は何通りかあります。一つは、サブキャラの活用。そう、安全パイなのは主人公ただ一人ですので、あえて危険な目に遭わせるのは他のキャラにした方が、読者や観客のヨユーは吹き飛ばせるのですね。
ヒロインが複数居たりするなら大いに結構。一人や二人欠けてしまう危険は高いと思わせるために、あえてキャラ被りを用意するなど、工夫が出来ます。どいつもこいつもに早いうちからフラグを立てておきましょう。死の前日くらいに大活躍というのも使い勝手の良い、有名なフラグです。
また、殺してしまうと読者や観客が煩そうだなという時に便利なのが『生存不明フラグ』です。絶対に死んでるだろコレな状況はあえて作らず、死体がないだとかの処置をしておいて、様子を見て復活させちゃうというのもアリです! 恐怖心を煽るとか感動を煽るのにヒロインを殺すのは最高の一手ですが、これは危険な諸刃の刃でもあるので、いちおう抜け道は用意しておくわけです。後から、蘇らせる方法が知らされるとかも変化球ながら生存不明フラグです。
この手段はしかし、「生き返る」という現象そのものが、世界観的に興醒めな場合には一気に茶番劇と評価されかねませんから、よく考えて使わねばなりません。
さて、世界観的に生存不明フラグが難しいなら準レギュラーを簡単に殺すのは躊躇われます。そういう場合は死に役のキャラを新たに作るのも手です。しかし、ポッと出の死に役を置くくらいなら、筋道を考える段階で、準レギュラーの誰が死ぬのかを予めで決めておく方がいいでしょうね。
物語の最初から、懇切丁寧に、読者や観客に向けてのケアを施しておくわけです。誰か死ぬよ~、この人死ぬよ~、そのうち死ぬよ~、もうじき死ぬよ~、と。
何重にも渡るクッションの親切設定は、読者に心地よく、覚悟を促せるのです。
あるいは、最初から景気良くポンポコ盛大に殺してって読者を慣れさせましょう。
もう一つ。いっそ、そういう危機感だのハラハラだのは演出を諦めてしまう、というのも一周回ってアリです! 昨今のラノベでは一部読者はこういう演出を極端に嫌うデリケートな層もありますので、そこを見込んで、これまでの事を逆に逆に使用するのもアリアリです。
まず、『主人公は(最終回以外)絶対死なないの法則』、これがあるので、危険はすべて主人公が一手に引き受けるとか。その際に主人公に不死身属性だの無敵属性があればなお安心。
これを使ったのが映画「デッドプール」ですね。他の連中の危険は、あれよあれよのスピード展開のうちに押し込んでしまい、目立たなくしてあります。世界観もあのカル~いテイストですから。「ワンパンマン」も近しい。
シュワルツェネッガーやスタローンは、この法則に苦しめられた俳優でした。なにせ彼らが登場すればそれだけで、「なんとかなってしまうだろう安心感」が演出されてしまうので、本来の「死人が出る」という演出の効果が期待できないばかりか、逆効果さえ生みかねなかったのですね。なんで間に合わないんだ、それでもヒーローか、という感じ。「スーパーマン」なんかもそう。
強すぎるという属性は、実はこれも諸刃の刃な設定なのでした。死にそうなメインキャラが出た時に間に合わない、それは強いという設定に違反するのですね。「ドラゴンボール」の場合はポコポコ死にますが、「失われてしまう」という意味合いではありませんから、あの世界観。(笑
最強だとか、無敵だとかに限らず、ある設定が別のある要素に重要に影響してしまうという事はよくあることですので、ご注意ください。
まったく意図しないところに影響しているが為に、読者には台無しと受け取られて、それを作者ばかりが気付かない、なんて事すら在り得るのです。ご注意。
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