4-3 再会
その日は肺も驚くような寒さであった。俺は壁にぐったりと背中を預け、いつもと同じように過ごしていた。
「こら!お前少しは大人しくしろ!このクソガキが!」
兵士の一人が声を荒げ、抵抗しまいと足や手をドタバタさせる華奢な少年を連れてきた。しかし、あまりに折れそうな手足をした少年の攻撃は微塵も効いていなかった。俺が来てから、人が増えることが初めてであったため、若干の驚きから、その少年を遠目に見つめてしまった。これがいけなかった。するとその少年がこちらに気づき、目があった。少年は目を見開き、口元が微かに上がったように見えた。少年はぴたりと抵抗をやめ、大人しくなる。
-ガチャガチャ
寒さにより錠が凍っており、鍵がなかなか回らず、兵士の眉間のシワが深くなり、貧乏ゆすりをし始めた。
「あぁクッソ!どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがって!」
兵士の怒りが頂点に達しそうなまさにその瞬間、
-ガチャリ
錠が外れる音がした。
-キィィ
耳に障る甲高い嫌な音と同時に、檻のドアが開く。兵士は、大人しくなった少年に先ほどの怒りをぶつけるように乱暴に放り投げた。
(え)
少年がこちらに真正面に飛んでくる。あまりにも予想のしない事態に、頭が追いつかず、一瞬固まってしまった。
(このままだとぶつかる!)
体を浮かせようと試みるが、瞬時に避ける反射神経などここに来てから捨てていた。
「ヘキ!!危なーーーーーい!」
少年がなんとも間抜けな声で叫ぶ。
「そんなことわかってるよ!」
言葉は音を立てず白い息になって、体は冷や汗とともに凍りつく。
(無理だ、これ)
瞬時にそう悟って、力をいっそう込めぎゅっと目を瞑った。
「ははは、さっきはごめんね・・・。」
少年が正面に正座をし、律儀に手を膝に置き、真っ赤な額とぽっと頬を染めた顔でそう言った。
先ほどぶつけた額がじわじわと痛み、手でさすりながら、目の前の少年をまじまじと見た。先ほどの失態を思い出す。口を凍り付けるように結び直し、二度と開くものかと決心し直す。
少年は戸惑いと若干の緊張を含んだ目でこちらの様子を伺い、俺が返事をする気がことを確認すると、何やらごそごそし始めた。そしてその少年は両手で何かを握りしめ、座り直した。まっすぐと、瞳をこちらに向けた。そこに先ほどの面影はなく、吸い込まれそうな深い瞳で、避けようにもその甘い蜜のような瞳は己の瞳を離すことを不可能にした。
(怖い・・・)
このような感覚は初めてであった。
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