4-2 檻の中


 直接刺すような冷気は衰える気配もなく、ここしばらくの寒さは、檻の中の者に誰一人例外なく凍傷を与えた。誰しもが、肌に刺さったような針と恐怖を取り除くように、ただただ肌をさする。


 特にすることはなく、一日一日をただこの檻の中で過ごす。まともな食べ物は与えられず、残飯とは言い難い家畜の餌が立派な食事と思えるほどである。唯一、水だけは綺麗なものがわずかに与えられた。これがなければ、命の生命線はとっくに切れていただろう。


 この檻には小さな窓があり、そこからかすかな光柱が漏れる。しかし、かすかな光柱が映すものといえば、砂や埃といった類でここの不衛生さを際立たせ、見ていて気持ちのいいものではない。檻の中にいる者は、主に年端もいかぬ子供ばかりで、数日に何回か行われる試験と称した実験の度、その数は減っていった。試験に合格しても、体力のない者も次々いなくなってしまった。ここに連れてこられた時、初めて話した子もその1人である。それからは誰とも口をきかないように努めた。檻の小さい窓から見える空の様子を眺めることが、いつしか俺の退屈しのぎになっていた。



 なぜそこまで、あの手記にこだわっているのか。それはレグルスが死んだ時の戒めだったからだ。もう、次は必ず逃げないと。

 確かなのは、あの手記を取り戻さなければならないという気持ちが、ここでの命を繋いでいたことである。


(いったい、どこにあるんだ・・・)



 ぴたりとして実に心地の良い、体の一部のような、あの違和感の無い感触を思い浮かべられずにはいられなかった。

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