第3話 報復
舞香の携帯にはとてつもないデータが大量に残されていた。
全身に痣や傷をつくり泣いている葵の姿、着衣を全て引き裂かれ、下着姿で服を買いに行かされる動画、留美子が行った万引きを、葵が身代わりとして店員に連れて行かれる姿。
見ているだけで殺意が込み上げてくる。しかしそれは、葵を殺した奴等に向けてのものではない。
込み上げてくる殺意は、葵がこの様な目にあっている事に気付くことが出来なかった自分自身に対してのものだった。
とりあえず全てのデータを自分の携帯に保存して、舞香に携帯を返す。
「このまま何もせず、他の連中とも関わるな。そうすればお前だけは見逃してやる。ちなみに、警察に連絡した場合はお前らの今までの行いが全て晒される事になるからな。最悪今の俺よりも罪は重くなる。邪魔する奴は問答無用で…………殺すからな」
「ひぃっ!!」
短い叫び声を上げ、腰を抜かす舞香。その無様な姿を見ると、ほんの少しだけ心がスッとした。
普通の人間がこの現状を見ると、
『復讐は何も生まない、彼女もそんな事を望んでなどいない』
とでもほざくだろう。そんな事はとうの昔に知っている。
だが、今のこの世界にはこのクズ共を裁こうとする奴はただの1人もいない。なんせ親だけはそこそこの権力者ばかりだからだ。
俺から大切なものを奪い去った此奴らが何の罰も受けないのは納得いかない。
誰もしないなら俺がやる。
今回の収穫は相当なものだ。奴等の犯行のデータ、録音、携帯番号にSNSのアカウント。そして次のターゲットも決まった。
関城 留美子だ。
取り敢えず此奴から地獄を見せてやる。
下唇をぐっと噛み締め、血の飛び散った廊下を後にした。
3時間後
校舎の屋上、そこには留美子と舞香がいた。
「そう、よく言ってくれたわね舞香。この借りはしっかりとお返しするわ」
普段と変わらない冷静な表情で留美子は言った。その声からは、焦りなど微塵も感じられない。
「舞香の親って確かこの町の病院の院長だったわよね?」
「そうだけど、それがどうしたんですか?」
そう尋ねた舞香に対し、留美子は悪魔の様な笑みを浮かべて言った。
「少し調子に乗ってる様だし、殺しちゃおっか♪」
カラオケに行こう。
普通の女子高生がそう言うのと同じ様なトーンで留美子は言った。
やっぱりこの人達は異常だ。
葵の時もそうだった。
最初はただからかっていただけだった。でも何をしてもずっとニコニコしている葵に段々と虐めが悪質なものに変わっていった。
目の前で葵が死んだ時、彼女らは、
「あーあ、死んじゃった。つまんないな。でもまぁ玩具ならもう一つあるしいっか。それよりどうやって片付ける?」
平然とした笑顔でそう言った留美子に、流石に舞香も恐怖を感じた。
この女に逆らえば確実に次のターゲットは自分になる。でも、従い続ければそこそこのお零れが期待できる。
「勿論、あなたも手を貸してくれるわよね、舞香?」
再び留美子が顔を見つめてくる。
自信、プライド、自尊心、そういった物で溢れる視線はやはり冷たい。
実際に目が合っていても、その瞳は全く舞香のことを見ていなかった。だが、その状態である事が有難い。
『美しい薔薇には棘がある』とはまさに留美子の為にある様な言葉だ。
頭脳にルックスは完璧、その上で両親は政治家で家庭は裕福。完璧なステータスを持った彼女だが、その眼に映るという事はまさに『死』を意味する。
歯向かう者は問答無用で襲いかかる。社会的な死か本当の死か、それは彼女の気分次第で左右される。
だから私はこう応える。
「わかりました。何でも行くことを聞く所存です」
何故ならもう私達は既に手を汚してしまっているのだから。
和也の暴力事件は教師にばれて罰を受けることとなったが、舞香への口止めが効いたのかそれ程重い罰ではなく、1週間の自宅謹慎という事でこの事件は幕を閉じた。
この一件で顔に泥を塗られた留美子グループは確実に何かしらの報復を行う筈だ。
この謹慎中に必ず何か仕掛けてくる。あの高飛車ビッチの留美子の性格なら、確実に自らの手で報復しに来る。それも間違いなく暴力で。
それだけならまだ対策のしようもある。それならこの謹慎中に必要な資材や情報を限界まで集めなければならない。
次に行う作戦を限界まで考え、葵のいなくなった学校生活1日目が終了した。
やはり周囲は葵が居ないだけでそれ以外に目立った変化は無かった。
今まで葵が引き受けてくれていた分の執拗な虐めが和也に返ってきたくらいだった。
そうして其々の思惑が交錯する。
邪魔者の排除、自らの保身、そして想い人を奪い去った者達への復讐。其々が其々の目的の為に行動した。
そして和也の暴力事件から2週間が過ぎ去った頃……………………和也の母親が死んだ。
復讐学園 轟 闇風 @123654789
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。復讐学園の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます