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夏は空中で体をひねって上を向く。そこは永遠に広がる青色の世界とその中に浮かんでいる白い雲がある。そして夏の真上には光り輝く眩しい太陽があった。太陽は世界の真ん中にあって、世界の一番高いところで、とても力強く輝いている。夏はその光に目を向ける。(自然とそうすることができた。不思議だ)
怖くない。痛くない。目だって潰れたりしない。ずっと見ていても不安にもならない。(だから)あの太陽はきっと偽物だ。なら全然怖くない。大丈夫。なによりこの世界でなら私は最強だ。(だってこれは私が見ている夢だから)
だから全然大丈夫。夏は笑う。(さっきから夏は笑ってばかりいる)笑って太陽にピースサインをする。太陽は無言。夏の笑顔を黙殺する。夏の存在を無視している。……まあ、いいよ。いつものことだもん。夏はつまらなそうに口をとがらせる。夏は太陽から目をそらす。そして大好きな空の青色を見つめる。
ここでなら(いつの間にか消えてしまった)あの子とも再会できるかも……。
そんなことを夏は思う。もしかしたらひょっこりと雲の中から顔を出すかもしれない。空の青色の中から夏に会いに来てくれるかもしれない。(懐かしい気持ちになって、私に会いたいと思ってくれるかもしれない。……そういうことってあると思う)
そんなことがもしあったとしたら、そしたら私はあの子に謝らないと、ごめんなさいって、言わないといけない。(私はわたしに対しても責任を持たなくてはいけない。私はずっとわたしを辞めたいって思っていたのに、ちょっと矛盾しているかな? でもそう思うこともわたしの本当の気持ちだ。だから、少しくらい矛盾してもいい。そう思う)……ごめんなさいって私、ちゃんと言えるかな? ちょっとだけ自信ないな。
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