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「じゃあ、それが技術の到達点ってことになるのかな? ちょっと意外。私、科学ってもっと万能なものかと思ってた」

「科学が万能であることは間違っていないよ」遥は言う。

「問題は人間のほう」

「人間の限界が科学の限界になるってこと?」

「そうだね」

 遥は野菜のたくさん入ったカラフルな色合いのクリームシチューを食べ終わると、お皿の上のパンを手にとって、それを小さくちぎって、一口食べる。その光景がとても美味しそうに見えたので、夏も遥と同じようにパンを手に取って、それをそのまま(遥のように小さくちぎろうとも思ったけどやめた)一口かじった。夏の握りこぶしくらいの大きさの小さなパンはそれだけで半分くらいなくなった。味は普通だった。夏はパンをシチューにつけて、もう一口、パンを食べる。それでパンはなくなった。

「なんか納得できないな。確かに今すぐにはできないかも知れないけど、未来には可能なことってたくさんあると思う。人間の限界だって技術によって解決できるんじゃない?」夏は言う。

「それは夏が希望的観測で人間のことや世界のことを考えてるからそう思うだけ。実際にはそんなに上手くはいかないの。どんなに時間を使っても人は真理に触れることはできないし、目的地にたどり着くこともできない。人は神様にはなれない。神様の偽物にすらなれないし、それどころか本物の神様に会うことすら、ううん、神様に触れることすらできない。神様は人間のフレームの向こう側にいるの。そこから私たちのことをいつでも見守っていてくれるのよ」

 遥はパンをちぎってそれを口の中に入れて咀嚼した。よく噛んでからパンを飲み込むと、遥はホットココアを一口飲んだ。

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