61

 夏は緊張して全然眠れない。さっきから隣ですやすやと眠って居る遥の寝息が聞こえてくる。どきどきする。

 ……おかしい。あれだけ疲れていたのに、どうしてこんなに眠れないのだろう? さっき地上で仮眠したことで眠気が失われてしまったのだろうか? 夏は開いた目をぱちぱちさせる。

 暗い部屋の中、大きなディスプレイだけが淡い光を放っている。 それは夜に見ると本物の水槽のように見える。そう思うのは、ディスプレイの中を白いクジラが優雅に泳いでいるからかもしれない。夏は遥の寝ている横顔を見る。遥はパジャマに着替えをすると同じくパジャマに着替えをした夏と一緒にベットに入って、それからすぐにすーすーと寝息を立てて寝てしまった。自分から誘ったくせにすごく冷たい。

 どうしよう? とりあえずもう一度目を瞑ってみる。そのままじっと時間が過ぎるのを待つ。

 ……だめだ。全然寝れない。夏はあきらめて遥を起こさないように気をつけながら、その体をベットの上で上半身だけ起こした。それからぼんやりと薄暗い天井を見つめる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る