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 シャワーを浴びて夏の意識が復活した。

 夏は浴室を出ると、濡れた体のまま脱衣所に移動する。

 大きな白いタオルで体を拭いて、新しい下着を身につけて、持ってきたパジャマに着替えをする。青色で統一されたパジャマ。それは夏のお気に入りのパジャマだったのだけど、さっきまで制服の上に着ていた服も青色のジャージだったので、着替えてみるとあんまり格好が変わらなくて少し恥ずかしい。遥を探すのに夢中で服装はほとんど気にしていなかった。

 失敗したかな? 

 青色は夏の一番好きな色だった。

「ただいまー」

 夏が部屋に戻るとそこに遥はいなかった。……待ってるっていったのに。約束したのに。相変わらず遥は自分勝手だ。夏は自分を棚に上げてそう思った。それから少しだけ腹が立った。

 遥はどこに行ったんだろう? 照子の部屋だろうか? 

 照子も椅子に座ったまま眠るわけじゃないだろう。どこかに就寝する場所があるのだ。きっと秘密の部屋がある。……どうしよう? 私もそっちに行こうかな? 

 夏は照子の部屋に移動するか、このまま遥の部屋に残るかで迷ったが、やっぱり部屋で待つことにした。

 待つことは夏の得意技だった。

 夏はしばらくの間、ベットの上に腰を下ろして、部屋の様子を観察したりしながら大人しくしていたが、やがてコーヒーが飲みたくなったのでキッチンに移動した。

 キッチンでピンク色のやかんを使ってお湯を沸かす。適当にいくつかの棚を開けるとインスタントコーヒーが見つかったので、自分のカップを洗い物置き場の中から発掘して、それにゆっくりとお湯を注いでコーヒーを淹れた。

 とてもいい香りがする。

 インスタントのくせに生意気だぞ、と夏は思う。

 夏はコーヒーカップを持って遥の部屋に戻ってくるが、遥はまだ帰ってきていない。

 することもとくにないので今度は椅子に座ってコーヒーを飲みながら遥を待つことにする。すると大きなディスプレイの画面が夏の目に留まった。画面の中を白いクジラが泳いでいる。夏はじっとクジラを見つめる。

 こうしてじっくりと観察してみると、なかなか可愛らしいクジラだと夏は思う。

 しばらくしてコーヒーを飲み終えた夏は椅子の上で体を丸める。

 鼓動が少しだけ速くなる。

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