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 夏は孤独に包まれていく。いつものように、だんだんと気持ちが悪くなる。

 嫌な感じ。どうしよう? 一人は嫌だ。やっぱり遥を探しにいこうか? でも足が動かない。怖い。面倒くさい。なんにもしたくない。体を動かすことがどうしてもできない。

 いつもそうだ。私は待っていることしかできないんだ。私は子供なんだ。一人ではなんにもできない子供。ただじっとここに座っているだけの無力な子供。大きくなったのは体だけ。その身体だけ。心はずっと小さいままだ。

 私は本当に自分の意志でここに来たんだろうか? 私は本当に遥のことが好きなんだろうか? 自由意志なんて幻想なんじゃないか? 愛なんてものはどこにも存在していなんじゃないのか? すべては夢で、幻で、私はここにいないんじゃないだろうか? 私はこの世界に生まれてなんていないんじゃないだろうか? 

 本当は私は、私が大嫌いなんじゃないだろうか?

 怖い。助けて。

 夏の目から涙がこぼれる。

 その涙が頬を伝ってテーブルの上に落ちる。

 ぴくっと夏の体が反応する。夏は顔を上げで頬を触る。そこには確かに自分の流した涙の跡があった。なぜこんなものが自分の体内にあるのか理解できない。なぜこんなにも透明な感情が自分の内側に存在するのか理解できない。その熱のある雫のついた指を夏は不思議そうな目で見つめる。

 瞬間、夏は口を左手で押さえる。それは鳴き声を上げそうになったからだ。夏は慌てて深呼吸をする。でもそれは間に合わない。いつの間にか涙が溢れてくる。ぽろぽろ、ぽろぽろとそれは夏の両目からとめどなく溢れてくる。夏の外側に逃げ出していく。

 なんで自分は泣いているのだろう? そんなことを夏は思う。

 怖いから泣いているのかな? それとも不安だから泣いているのかな? 一人ぼっちだから、泣いているのかな? 一人は、嫌だな。一人になんて絶対になりたくない。

 助けて。助けて遥。……私を見捨てないで。

 ついに我慢しきなくなって夏はテーブルに顔を伏せて、子供のように声を上げて泣きじゃくった。夏は泣いて泣いて、……泣き叫んだ。

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