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 部屋というくらいだから、『部屋』を想像していたのだが、そこにあったのは、部屋というより牢屋だった。本物の牢屋に入ったことがあるから分かる。壁は一面以外、継ぎ目のない金属のようなもので出来ていて、その一面も、同じ材質でできた、太い檻になっている。

部屋の奥には、書類に埋もれた小さな机とつぶれた座布団があり、その座布団に座っていたのは、この店の店主、ウィズだった。

ウィズはいつも以上に青白く、やつれていて、少し、透けている気がした。いかにも、死ぬギリギリといった感じだ(アンデッドだからもう死んでいるが)。

「あ、カズマさん。お待ちしていました」

「お前大丈夫か?」

「大丈夫です。さっきまで、バニルさんに言われて仕事をしていたので」

バニル、またウィズを限界まで働かせていたのか。

「ウィズが丈夫なのは知ってるが、無理しすぎると本当に消滅するぞ?まったく、バニルもやりすぎなんだよ」

「ありがとうございますカズマさん。でも本当に大丈夫ですから」

なんというか、ウィズはいい人過ぎるんだよな。

「ん、敵感知に反応が」

どうやら女衆がこの店に来たようだ。バニルが喚く声が聞こえるから、アクアがいるんだろう。この部屋(牢屋)が見つからないといいが。

しばらくして、誰かがこちらに向かってくる音がした。まさか、この部屋が見つかったのか?ならせめて、籠城の備えをしなければ。

「『フリーズ』!」

俺はフリーズで檻のすき間を塞ごうとしたが、威力が足りない。

すると、俺の意図を察したらしいウィズが。

「カズマさん、私に任せてください『カーストクリスタルプリズン』」

ウィズの魔法で、檻のすき間は完全にふさがった。が、俺はあることに気づいた。

「これ、外に出るときどうするんだ?」

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