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普通、街中の女に命を狙われたら、誰だって人生諦めるだろうが、あいにく俺は普通じゃない。魔王を倒したカズマさんだ。

潜伏スキルと敵感知スキルを使えば、見つからずに移動など楽勝だ。敵感知スキルは、モンスターに限らず、俺に敵意や殺意を向けている相手全てに反応する。この場合は、街の女どもだ。

敵感知を常に発動し、なるべく路地を通ったお陰で、誰にも遭遇することなく、ウィズの店の前に着いた。それにしても、ダスト以外の男はどこに行ったのだろうか。

すると、店の扉が開き、誰か出てきた。俺は慌てて潜伏スキルを発動する。

しかし、それはこの店の店主ウィズだった。

「カズマさん、いるんですよね?私は味方なので、早く店の中へ」

よかった。やっぱりウィズは向こう陣営じゃなかった。本当にマジ天使だ。リッチーだけど。

俺はウィズの前まで行き、潜伏スキルを解除する。

「わ、本当にいたんですね。どうぞ、中へ」

ウィズに押されて店内に入ると、ウィズが後ろ手に扉を閉じる。

「いや、ありがとうウィ...」

振り返った先にいたのは、美人店主ではなく、仮面のバイトだった。

「フハハハ!最近仲間に好かれているからとハーレム作る気満々で調子に乗ってしっぺ返しをくらった小僧よ、見てくれだけはいい貧乏店主に救われたと思ったか?残念、我輩でした!」

最悪のシチュエーションだよ。

「お、意外にもなかなかの悪感情だな」

「バニル、俺をどうするつもりだよ、みんなの前に突き出すのか?」

「いや、我輩としても、お得意様が女どもになぶり殺しにされても困るのでな。店の奥に、貴様をかくまうための部屋がある。事が治まるまではそこにいればよかろう」

なんだ、助けてくれるのは本当なのか。

「あぁ、それから、その部屋にはあの穀潰し店主もいるからな」

え、ウィズが?まさか、ウィズが俺を待ち構えていて、そのまま...。

アンデッドの王リッチーと、普通に戦って勝てるわけがない。

「安心しろ、あやつはずっと店の中にいたからな。貴様の友人のチンピラが言いふらしたことは聞いていない」

なるほど、だからギルドの宴会にもいなかったのか。

「あやつには、貴様がとある理由から命を狙われているとだけ伝えてある。早く行った方がいいぞ、貴様の仲間のネタ魔法使いがこっちに向かってきた」

めぐみんかよ。見つかったら、店ごと爆裂魔法で吹き飛ばされるかもしれない。バニルは残機が減るだけだか、俺とウィズはそうはいかない。魔法に強いウィズでも多少のダメージは受けるだろうし、俺は確実に死ぬ。

急いで、奥の部屋へと向かった。

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