第3話 約束
休みが重なったこの日。
天気は良好、お出かけ日和でカメラを持って車で遠出をすることになった。
「うわーー!見て見て!陽斗、お花が一面に咲いててすごく綺麗だよ!!」
「おーー!調べてた時に写真で見たけど、想像以上にすごいね」
横ではしゃぐ私と景色を見て感動してる陽斗。
そんな綺麗な景色を二人で眺めてたが、ハッと気づき慌てたようにカメラを持って撮り始めた私を見て、少しおかしそうに陽斗は笑った。
「そんなに慌てて撮らなくても景色は逃げてかないよ」
「でも、この瞬間を早く収めたいじゃん」
興奮気味に言う私に陽斗はカメラを構えて私を撮った。
一瞬なんで私を撮ったんだ?と思い首を傾げると、陽斗はさっき撮った写真を見て優しそうな笑みを浮かべ、首を傾げる私に…
「真琴さんが言うこの瞬間を撮ってみました」
得意げに言いながらさっき撮った写真を私に見せると、興奮しながらも嬉しそうに笑う私が写っていた。
「真琴が言った言葉で思ったけど、景色は逃げないけど真琴の表情はころころ変わるから確かにこの瞬間を撮らないと逃しちゃうなって思って撮ってみた」
その言葉の後に「データ、携帯に移して待ち受けにしよ」と言った陽斗に
全力で拒否した。
「ダメダメ!もっとかわいいのにしてよ!恥ずかしいよ」
恥ずかしいよの「よ」を言ったときにまた写真を撮られ、「恥ずかしいがってる真琴の写真ゲット~」にやにやと笑う陽斗の腕を叩き、
「もー!私ばっか撮ってないで景色撮るよ!」
「怒ってる真琴さんかわいい」
そう言って離れてた手をぎゅっと繋ぎ、少しむくれながら頬を染めた私を愛おしそうに見ながら「じゃあ、この先に行ってみようか」と言った陽斗に「…うん」と頷き、歩き始めた。
一面に咲いた花の間にある道を歩きながら、写真を撮り陽斗はちょこちょこ私を写真に撮りながら公園内を歩いて行った。
「…あ」
陽斗が何かに気づいた声をあげ、何を見つけたのか目線の先を見るとウエディングドレス姿の花嫁とビシッと着こなした少し緊張気味の新郎が写真撮影をおこなっていた。
綺麗だなあと思い、陽斗を見上げると同じ気持ちなのか微笑ましそうに笑みを浮かべてる陽斗を見ていたら気づいた時には写真に収めていた。
シャッター音で気づいた陽斗が私を見て、
「真琴さん、写真に収めたくなる瞬間あった?」
「うん、あった。すごくいい顔してた」
「見せて?」
「…やだ」
「えー、ケチ」
ついさっき撮った陽斗の横顔はとても綺麗に撮れていて、私を待ち受けにしようと言った陽斗の気持ちが分かった。
私もこの写真は待ち受けにする。
カメラの液晶を眺めていると、少し力を込めた手のぬくもりを感じ陽斗を見るといつもの優しい笑顔を浮かべて言った。
「来年もさ、この花を見にここに来ようか」
「うん!来年も一緒に見に来よう」
素直にそう答えると嬉しそうに笑い、「あっちに売店あるから食べに行こうよ」と手を引いて一緒に歩いて行った。
来年も再来年もその先も陽斗と一緒に行った場所は、また来ようねと約束の場所になり、二人の思い出の場所に加わる。
これからもそんな場所は増えていくと思うとなんだか嬉しくなり、心が温かくなる。
「はーるとさん!」
「どうした?」
「アイスクリーム食べたい!」
この先も陽斗と一緒に思い出を作っていく。
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