第2話 出会い

陽斗との出会いは友達の誕生日サプライズで、誕生日の本人には内緒で集まり驚かせようということで集まった時に初めて会った。



その時は特に意識はしていなかったが、ここで集まったのも何かの縁と思い、連絡先を交換し誕生日サプライズが成功したあとにお疲れ様でしたとLINEで連絡してから、会話が続き

『今度、飲みに行きませんか?』と誘われ、お酒好きの私は即OKの返事を返した。




当日の夜、私の自宅の最寄りの居酒屋で飲むことになり、陽斗はわざわざこっちに足を運んでくれた。

ちょうど私は会社は休みで、陽斗は仕事が終わってからということだったので、陽斗の時間に合わせて集まった。



最初はお互いにぎこちない感じではあったが、お酒が進むにつれて

そんなことはなくなり、会話はテンポよく弾んだ。





お互い同い年というのはLINEで連絡してるときに知っていたため、色んな出来事の共通はあり、その流れで高校の話になった。






「まこちゃんは、高校どこ行ってたの?」



この時はまだ私のあだ名の『まこちゃん』って呼んでたっけ。



「この辺の○○高校ってとこだよ」



「え?」



そのとき陽斗が動きを止め、驚きの顔を見せるので私は首を傾げた。



「…どうしたの?聞いたことある高校だった?」



「……聞いたことあるも何も…俺も、その高校通ってたんだけど…」



「………」



「………」



「え、じゃあ…」



「俺たち、同じ学校にいながらお互い知らないで卒業したんだね」



おかしそうにくすくす笑う陽斗を見ていたら、私もなんだかおかしくなり二人して大笑いした覚えがある。

そこからは高校話が盛り上がり、時間を忘れて飽きることなく話し続けた。



ふとしたときに時計を見たら、もう終電もとっくに過ぎた時間になっており、私は歩いて帰れたが陽斗は電車でしか帰れないため

諦めて朝まで飲もうということになった。

幸いお店は始発の頃までやるお店だったので、朝までいろんな話をした。





趣味の話や好きな音楽、行ってみたい場所、今やっている映画の話。

たくさんのことを話して分かったことは、陽斗との共通点が多いことだった。

こんなに話して楽しいと感じたのはいつぶりだろう…

一年ぐらい誰とも付き合ってはなく、ほぼ会社と自宅の往復で友達とも予定が合わなく、休日は家でテレビを見てるか本を読んでいるぐらいしかやっていない。



家ではほとんど笑わない日が多かった。



その時、直感的に思ったことがある。









―――ああ、私この人と結婚するかも。






付き合ってもないのに、なんで一気にぶっ飛んでその答えになったのか

私にも分からないけれど、本当に直感で思ったのだ。




酔って少し高揚した頬、触ったらふわふわしてそうな短髪に、会社で面白い先輩の話をしながら優しい笑みを浮かべている陽斗はキラキラしているように見えた。








「なんか、ごめんね。話に夢中になりすぎて終電逃しちゃったし、俺に付き合って朝まで付き合わせちゃって…」




始発が出る時間になり、店から出て駅の改札前で申し訳なさそうに言う陽斗に全力で否定した。




「私も話すのが楽しくて時間忘れてたから、そんな謝らなくていいよ!

今日はありがとうね、久々にすごく楽しかったよ」




帰りも気を付けて帰ってねと言うと、言いづらそうに頬をかきながら

「あのさ…」と声を出した陽斗だったが、なかなか言い出さず首を傾げてるとようやく話し始め、






「来週の、土曜日休みなんだけどさ…映画、観に行かない?」




話してるときに誘えなくてさと言葉を続けた陽斗の顔はほんのり赤く染まっていた。



そんな姿が可愛く見え、にやける口元を手で隠してたら勘違いした陽斗は早口で「いや、急だしね!別に今週じゃなくてもまこちゃんの都合がつく日にとかどうかなーなんて!」と焦る陽斗を見てたら

別の笑いが出てきたがなんとか押さえ、





「来週、映画観に行こうか。詳しくはLINEで決めよ」




微笑んでそう言うと安心したように肩の力が抜けたように見えた。






そこで解散して歩いて自宅に帰りながら、先ほどの会話を思い出していた。



来週の土曜日……楽しみだなあ…



そう思うと自然と足取りは軽くなり、朝方の人があまりいない道の中、小さな鼻歌を歌って自宅に帰って行った。











「――…こ」



「ま……と」



なんだか…暖かい。

もうちょっとこのままで……



「まーこーと」



微睡みのなか目を開けると、見下ろしてる陽斗の顔が視界に入ってきたが

まだ寝ていたくて寝返りをして顔をこすりつけてると、自分が陽斗の膝の上で寝てると気づいた。





少しぼーっとしたまま陽斗の方に顔を向けると、不意打ちでキスをされ優しく頭を撫でられた。




「おはよ、よく寝てたね。真琴の寝顔ずっと見れるから良かったんだけど

お昼だしそろそろ何か食べようと思ってさ、何食べたい?」





ご飯のリクエストを聞かれたが、頭がまだ働かずなかなか答えない私に

寝起きの悪いのを知ってる陽斗は少し笑いながら、私の髪をいじり待っている。

私は腕を伸ばし、陽斗の首に絡めぎゅっと軽く抱きしめた。




「どうしたの?」




「……陽斗と会ったときの夢見た。…初々しい陽斗、可愛かった」




「あー、懐かしいね。…あの頃に戻りたくなった?」




「………戻らない。今がいい」





意地悪な質問にそう答え、さらにきつく抱きしめると陽斗も抱きしめ返してきた。

昔のことを否定するわけじゃないけど、付き合ってきた日々の中で今があるのだから、今がいいのだ。

あの頃のもどかしさがあった距離は、すでになくなり自然と手を繋ぐほどの距離になった。




「陽斗…好きだよ」




「俺も真琴のこと好きだよ」




きっと、陽斗も私と同じことを思っている。




「陽斗、パスタ」



「はいはい、ここでお待ちください。お嬢さん」









この出会いは私の宝物だ。

陽斗と出会い私の世界はキラキラと輝き、これからも幸せな日々の中でそれは私の中で輝き続ける。






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