理想的彼氏。

冬木 麻衣

第1話 大好きすぎて…

普段晴れているときは二人でカメラ持って外に出かけるのだが、今日はあいにくの雨。



なので、部屋で二人ソファーに並んで座りのんびり映画鑑賞。

私がアニメ好きということもあり、某アニメ映画を観ているのだが

彼はあまりアニメを昔から観る人ではなく、みんなが知っているようなアニメも知らなかったする。



しかし、私がおすすめのものを見せたりするのでアニメの知識は増えてきているので、私的にはむふふと口元がにやけるのだ。

なぜならば、私色に染まってるようじゃないか!


まあ…そんな私も彼の好きなものの知識は増えているので、私も染まっているようなものだ。




「あーー、この映画よかったー…」



観終わりメガネを外し、感動して目元に溜まった涙を拭った。



「確かに良かったね。俺も涙でそうだったわ」



「…そういえば陽斗さんの涙、見たことないなー」



そう言ってじーっと横顔を見つめていたら、私の視線に気づいたのかこちらに顔を向け、いたずらっ子のような笑顔を私に向けた。



「俺は感動して泣く真琴さん見れるからラッキー♪」



まだ少し残っていた涙を拭った陽斗に、私の顔をはどんどん赤くなっていくのを感じ恥ずかしくて顔をそむけた。




「お、照れてる」



「…照れてません」



「いやいや、照れてますって。かわいいな、もー」



そうつんつんと頬をつつかれた。

つつかれるのが嫌だったので手を払って、



「やめいっ!!」



と、陽斗を睨んだが効果はなく、にこにこと頭をなで始め

「怒ってる顔もかわいい」と言う始末。




喜ぶ陽斗も好きだが、あまりかわいい、かわいいを言われると……



「あんまりかわいい言ってると、そのうち私がその言葉に慣れてスルーしちゃうかもよ?」



「え、そうなの!?それはちょっと悲しいかも……でも、かわいいのは本当だし…」


うーん、と悩み始めた陽斗はすぐ何か閃いたようで腕を広げ暖かい笑顔で私を見た。




「え、なに?」



「…かわいいって言葉に慣れさせないように、たまにはかわいいとセットでギューも取り入れたいと思います」



この提案どうですか?と聞かれたので、「……乗った」と小さくつぶやき陽斗の腕の中に入ると苦しくない程度に抱きしめられ、

耳元で「真琴、かわいい。…好きだよ」

そう囁かれ、くすぐったさで身をよじったがそのぬくもりに身をゆだね、

服から出てる首元に顔をすり寄せた。




陽斗の匂いがする…。

シャンプーでも柔軟剤でも香水でもない、陽斗自身の匂い。

やっぱり…すごく落ち着く。

陽斗は私の癒しだ…



私の息が少しくすぐったいのか小さく笑う振動が来て、薄く目を開け首元が視界に入ってくる。

ああ、やばい。私のフェチがうずく……

我慢ならず、口を開けパクリと陽斗の首元に噛みついた。




「ははっ!出た、真琴吸血鬼。そんなにおいしそうな首元してますか」



もう慣れっこの陽斗は私の好きなようにされるがまま。


「とってもおいしそうな首元してますよ。知っててこの提案言ったんでしょ?」



「だって首元にすり寄せたり、噛みついたりする真琴さんめちゃくちゃかわいいんだもん!…ねぇ、もっとしていいんだよ?」



ちゅっと頭にキスをし、首元から顔を上げた私を熱い視線で見つめてくる。

目が言っているのだ…”俺にキスして、もっと噛みついて”と。

何年付き合っても慣れないのはあるもので、少し目線を外して気持ちを落ち着かせてから、意を決し触れる程度のキスをした。



少し不意を突かれたのか、目を大きく開け驚いた顔をした陽斗が目に入り

こんな表情もするのかとまじまじと見つめていたら

目元を手で覆われて陽斗が見えなくなった。



「ちょっと…手、どけてよ。もっと見たいのに」



「……見なくていいです。…もう、真琴さん好きすぎてどうしよう…」



言葉とともに甘い吐息を吐く陽斗に嬉しくてにやけるのが抑えられない。





「ねぇ、陽斗さん」


「ん?」


「私も陽斗さん大好きすぎるんだけど、どうしたらいい?」




一瞬の沈黙の後、目元を覆っていた手が緩み優しくどけると顔を赤くさせた陽斗と目が合い、少し悔しそうな顔で口をすぼめながら



「……俺の方がもっと好きだし」


そうつぶやいた陽斗がかわいく、勢いよく抱き着いた。








彼は私を色々翻弄するけど、私も彼を翻弄させる。

翻弄されっぱなしは嫌でしょ?

そんな陽斗は私の理想的彼氏。

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