5.Eat me! アリスと生徒会!
「あなたと同種ですわ」
その言葉を聞いた途端、俺の思考は停止した。
「はい?」
一生懸命絞り出した言葉も相手には届かない。なぜなら俺は小さいから。比例して、声も小さくなる。
アリスはまた何かを取り出す。なんだか甘い匂い。周りは白くコーティングされていて、丸い。その物体の頂上には『Eat me』と書かれたプレート。
アリスは小さなスプーンを取り出し、無造作にその物体の一部をすくい取る。
それは俺の口に向かってくるので、必死に拒んでいた。だって、また変なものだったら嫌だもん。
「安心してくださる?こちらを食べると、元に戻りますのよ」
それを聞いた途端、考えるよりも先に口が動いていた。もう、リスクなんてどうでもよかった。やけくそだったのかもしれない。
直後、俺は元の姿に戻っていた。そういえば都合のいいことに、服まで小さくなっていたな。ご都合主義の典型とでも言うべきだろうか?
これは、おそらく魔法、だろうか?
だとしたら、確かに同種だな。しかし、それよりも怒りがこみあげてくる。
「おい、どういうつもりだ?」
「あなたと同種だと信じさせるには手っ取り早いかなと思いましたの」
こちらは名一杯睨んで、迫力を出しているというのにこの女。まるで動じない。それどころか、嬉々とした表情で言う。
「もしかして俺で実験していたのか?」
「ご名答ですわ。やはり賢いですわね。他に質問はありますの?」
「まず、お前何者だ?」
「ええ、申し遅れていましたわね。ワンダーランドから参りましたアリスですわ」
アリス・イン・ワンダーランド。この世界でもっとも有名な作品の一つ。これも金曜日の夜9時に見たので知っている。
しかし、それが本当だとすると、物語の世界から来たことになる。しかし、それはあり得ない。誰かが創り出した世界に現実から干渉することが、出来ないというのはアルカ・ロディアでは常識だったからのだから。しかし、昨日『クンクンドッグ』で調べても魔法の反応はなかった。では、目の前の人物は一体なんだ?
もしや、科学では物語の世界に干渉することが可能なのか?
いや、そんなはずはない。それならばこの世界は非現実で溢れかえっているはずだ。
「ふざけるな。お前はアリスではないだろう!」
「どうして、そのように考えるのか疑問ですわ」
「お前の言っているアリスは物語だからだ」
「ええ、あなたの言っているのは、物語ですわね。でも、私は物語ではなく現実に存在しているワンダーランドのアリスですわ。質問しますわ。あなたは何ですか?」
「皇族という設定だが」
「そういうことですわ。私もワンダーランドからきたアリスですの。つまりね、誰もどこから来たかなんて分からないのですわ。本人にしかね」
「把握した。つまり、事実が分からなければそれが真実になり替わるということだな」
それに対して、アリスはうなずく。結局彼女がどこから来たのか誰なのか。それについて、何も分かってはいないが、話した感じ、これ以上聞いても無駄そうだ。
「アリスの系統は*
「ご名答ですわ。さすがは国家までもを、味方につけるだけのことはありますわね。質問は以上でいいですわね?」
「ああ。聞いても核心について答えるつもりはなさそうだからな」
「物分かりがよろしくて好きですわよ。それでは、もう少しだけお待ちなさいな。もう少しでメンバーが到着いたしますわ」
と言われ、何も話すことのなくなった俺たちは、お互い沈黙していた。
気まずい。もう少しと言われたものの、5分経っても来る気配はない。しかし、5分程度で文句を言っているようでは修行不足と言われてしまうかもしれない。ここは我慢だ。
そういえば、思い出す。潜入調査の時を。
あの時も見知らぬ女と言葉を交わすことなく、気まずい時間が3時間ほど流れていたな。しかも、一斉検挙の前であったからか、緊張した。そう考えるとただ待つのは容易なものだな。
「遅くなってすみません」
どこかで聞いたことのある声、ドアの方を見て俺は驚いた。
透き通るほどの白い肌のコントラストに、美しい顔のパーツ。どれも絶妙な形をしている。そして、胸はスレンダー。
「・・・・・・・・・・・・」
彼女は間違いなく、エクリエルだ。やっと見つけた。
「あれ、そちらはどなたですか?」
「俺だ。ユウ。ユウ・ガ・ロッテ・フィム!」
あまりの胸の高まりに俺は叫んでいた。しかし、エクリエルの方は・・・・・・。
首を可愛く横にかしげる。さすがエクリエルだ。なにをしても可愛い・・・・・。
って、嘘だろ?まさか、この自称アリスに記憶を消された?
「彼は、ユウといいますわ。少し錯乱しているみたいですわね。生徒会の新メンバーですわ」
「そうなのですか!私は・・・旭、です」
俺は全く錯乱していないのだが・・・・・・。アリスは何を考えているのだ?
って、そこじゃない。なんで俺が生徒会メンバーになってるんだよ!?
でもなぁい!本当に錯乱してきた。旭?彼女は確実にエクリエルだ。見間違えるはずがない。しかし、ここは得体の知れないアリスの前だ。話をあわせておくのが得策だろう。
「旭さん。失礼しました。ユウです」
「いえいえ、こちらこそよろしくお願いしますね」
「旭は記憶喪失なのですわ」
アリスの言うことを信じていいのか分からないのだが、エクリエル、いや旭は本当に知らなそうだ。これはどういいうことだろう?
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