4.Drink me! アリスと学校生活!
『1年4組のユウ様。至急生徒指導室まで来なさい』
放送で野太い男の声が、俺を呼ぶ。あれから天皇について学んだのだが、日本の象徴として敬われるはずだ。それなのに・・・それなのに・・・この放送はなんだ!?
めちゃくちゃじゃないか。様をつけて敬っているはずなのに命令口調・・・。
近くにいた、なぜか頭を抱えている日向に文句を言う。
「なあ、俺、敬われるはずなのに命令されてるぞ。今俺を呼び出した奴、社会と国語を学びなおすべきじゃないか?」
「あなたが偽物なのばれたんじゃないの?」
蔑んだ目でこっちを見る日向を睨み返す。
俺が偽物だとバレるなんておかしい。なぜなら、俺は天才魔法使いだったからだ。日向なんかに俺の魔法に関しては侮辱されたくない。だから彼女の発言を無視して、そのまま生徒指導室まで向かうことにした。
その途中でなぜ呼ばれたのか考える。思い当たることといえば、昨日倒した不良の件だが、なにか感謝をしてもらえるのだろうか?
それにしても乱暴な言い方だったな・・・。
ドアを開けると、ゲジゲジ眉毛のおっさんが腕を組んで立っていた。威圧感が半端ないので、生徒指導室のドアをそっとしめた。
「ねえ、逃げるの?不良は倒せたのに教師にはなにもできないの?」
先程しめたドアの奥から凄い威圧を感じる。しかも、相手は煽っているつもりなのかネコナデ声が聞こえてくる。
なめられたままでは、嫌なので意を決しもう一度ドアを開ける。
「座れ」
開けた瞬間いきなり命令される。言い方が不服だが、言われたとおり座る。
「ねえ、皇族にそんな言葉遣いをしていいの?」
「先生はいいんだ。そもそも先生は天皇制は反対だ。国民は皆、平等じゃないのか? おかしいよな?」
これも勉強したことだが、こういう考え方の人間を左翼の典型というらしい。ちなみに、右翼は以前の戦争をしていた日本に戻そうとしている人達のことのようだが、どちらにもより過ぎるとロクなことがないと学習をして思った。
「天皇は日本の象徴ですわ。日本のシステムを根本から否定するのも間違いだと思いますわ」
後ろから女とみられる声が聞こえきた。不覚にも気配を微塵も感じ取ることができなかった。コイツ、一体何者なんだ?しかも、ですわとか使っちゃって・・・正直、痛い。時代錯誤も甚だしい。
「またお前か。お前とは話すことはない」
ゲジ眉は中二女を面倒くさそうに追い払おうとする。ちなみに、中二女だが、容姿は西洋人形のような綺麗な金髪で顔が整っている。また、私服登校が認められているためか、水色のフリルのついたドレスを着ている。
全体を見てもさらに痛い。こんな人間が実在していたとは・・・。
「彼からはこちらで事情をお聞きしますから、生徒会権限で開放をしていただきますわ」
ゲジ眉は中二女に言いくるめられ渋々了承する。この学校、先生よりも生徒のほうが強いのか?
「ユウさん、ついてきてくださる? あなたのことを調べたわ。私はおそらくあなたと同類ね。自己紹介するわ。
また変なのに絡まれたのかもしれない。生徒指導室から連れ出された俺はその隣りにあった生徒会室まで連れて行かれる。
「みなさんは、まだいないようですわね・・・・・・」
「俺に何をする?」
「警戒しないでくださるかしら?先程も言ったように私もあなたと同種よ。まずはこれをお飲みなさい」
差し出されたのは『Drink me』とペットボトルに書かれた飲み物。中身は透明だが見るからに怪しい。飲みたくない俺は首を振る。
「あなたを私達・・・とはいっても今はいないけど、生徒会に迎え入れたいの。本当よ。そのためにあなたを助けたのよ」
検知魔法で調べても毒はない。極めて怪しいが普通の水のようだ。アリスこと中二女もそこまで言うのだし、これもきっと親切心なのだろう。俺は言われたとおりその水を飲んだ。
直後俺は、目の前のものが大きく見えるようになり、転びそうになる。いや、周りが大きくなったのではない・・・俺が小さくなった?
彼女は手程に小さくなった俺を見下ろし、もう一度告げる。
「あなたと同種ですわ」
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