戦火のニュース、朝靄、神様

転寝から覚めると腰が痛んだ。伸びをした腕が車の天井に当たり、思い出した。昨晩からのことを。自分がどこに誰と居るのかを。

カーラジオは切れ切れに朝のニュースを伝える。隣国の核実験さえ、波音の間に、落ち着いた男の声で語られれば遠い物語めいて聴こえる。リビア内戦もガザ侵攻も、この海で聴いた気がした。勉強に煮詰まった夜、模試が会心の出来だった夜、よく朝までのドライブをねだられた。

水平線から朝陽が顔を出し、窓の外に目をやる。潮が満ちれば消える波打ち際で、足を洗わせるのが見える。金の靄のなかの君が眩くて、惹かれながら同時に手を伸ばせない存在であることを知らされるようで、目を細めた。細まった視界が潤む。滲む。疑いもない声が甦る。


「大学の時間割出たら、また連絡するから、センセ」


もう、君に教えられることなんて、何もないんだ。この先、君とどうなったらいいのかもわからない俺なんだ。朝陽が作るシルエットはもう、男の子でも少年でもなく、青年のかたちをしている。


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蒼条さんは遠くの街の戦火がニュースになった日、潮が満ちれば消えさる浜辺でぼくの神様にあったことの話をしてください。

#さみしいなにかをかく

https://t.co/NuV5HsVJhh

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