第87話 騒ぎの後で

「あの〜」

 難民達の一人が話しかけてきた。


「もう、解散したら?」

 恵方巻はやらん、難民に配ってたらキリが無い。

 彼は、中々、立ち去らない上、

「あ、でも〜」

 などと、女の子みたいな態度をとる。


 キモッ!

 煮え切らない男は嫌いだ!

 いや、煮えきっていても嫌い!


「はいはい、【邪悪な姫君】はいつでも、遊んであげるわよ」

「帝国を追い出してくれるのですか?」

 あー、うざーい!


「いい、これは、私の喧嘩なの、別にあなた達なんて関係ないんだからねっ!」

 くっそー、言語補正の奴、ぶっ殺してやる。


「ありがとうございます」

 難民が頭を下げる。


「ふん、お礼なんて……」

 あわわ、危なかった、きっと言語補正の奴、「嬉しくなんかないんだからね」と訳したに違いない。


「あ、あんた達も、精々ここで頑張りなさいっ!」

「はい、頑張ります」

 くっそー、言い直したけど、あいつ、絶対勘違いしたぞ!

【ツンデレの姫君】とか呼んだら、本気で、ぶっ殺すからなっっ!


「ツンデレエルフなんて、そんなテンプレ需要は、もう無いのよっ!」

 言語補正の奴、殺す!


 ジャンヌの尊い者を見るような視線……、腹が立つので彼女を代わりにぶん殴る。


「うわーん、マスター、ひどい」

 すぐに、彼女はヒックと泣き出す。

 泣き虫だなぁ……、でも、なんやかんやで暴動は収まり、難民達が帰っていく。


 辛いだろうが頑張ってもらいたい。

 それが、きっと、彼らの戦いなのだろう。


「お姉ちゃん、バイバイ」

 と子供達が手を振るので、ニッコリと振り返す。

「違うよ、鎧のお姉ちゃんだよ」

 はい、そうですか!


「うわーん、また、蹴られた」

 ジャンヌは、へなりと座り込む。

 嬉しそうに手なんか振ってるんじゃねぇよ!


 商館の会議室に戻ると、真っ先に、新しい仲間を紹介した。


「はい、この娘は、ジャンヌ、色々あって仲間になりました」

「ジャンヌです。侵略者は皆殺しです」

 おい、なら侵略者の召喚に応じて手を貸すな!


「うわーん、叩かれたぁ」

 すぐ泣く彼女の実力は、皆周知している上、結局、こちらに被害も与えていない。


 なので、反対する者はいなかった。


 あと、水着を着るのは気にならないらしいが、召喚当初のチビの服装ですら白い目で見る王国のお国柄を考えてやめた。


 魔女さまーー、はおっぱい事件が気になるのか目すら合わせてくれない。


「ソフィ、いいから話を続けてくれ」

 なんか、ジークフリードが呆れている。


「明日の朝、王都に向けて出発する」

 会議室に流れる「はいはい」という空気……。

 少しは、驚けよ!


「私も行くわ」

「そう、レティーシアも……、ええ?!」

 いやいや、駄目でしょっ!


「南部は、軍船を出すわよ」

「行ける訳ないでしょっ!」

 イザベルの申し出を、速攻で断った。


「知らないなら無理もないわね。でも、南部の軍船は飛べるのよ」

 ほっほう、イザベルはこれ見よがしのドヤ顔だ。


 それは、中々、興味深い……。


「王都まで、どれぐらい」

「四日もあれば、着くわ」

 ごめんイザベル、空飛ぶ海賊船は好物だけど、それじゃ遅い!


「駄目よ、二日で王都まで、行くわ」

 テーブルに広げられた王都近郊の地図に、駒を置く。


「明日の昼には、ここで帝国を打ち破り、その翌日には王都で睨み合いよっ!」

 交易都市と王都の中間地点に、広大な湿地帯がある。

 そこには、帝国の大きな駒が置かれていた。

 ホントは無視して、突っ走っても良いのだが、わざとここで戦うのだ。


「馬鹿なことを……」

 文句を言う伯爵の頭をペシペシ叩く。


 最初は、俺とチビの二人で行くつもりだったが、さらにジャンヌが加わった。

 十分過ぎる戦力だ。


「あなただけには、行かせない、私も行くわ、ユニコーンなら文句は無いわよね」

 レティーシアの決意は固い様子。

 確かにユニコーンの移動速度なら文句無い。


「でも乗れるの?」

「多分、大丈夫」

 彼女は、その場で小さくジャンプし、標準より大きな胸を揺らした。


 一国の姫がそんなで良いのかよ!

 まぁ、でもユニコーンには乗れそうだ。


「よし、じぁ、ゴキゲン中飛車作戦で決まりねっ!」


「ゴキゲン中飛車って何?」

 皆の声が揃うが無視。


「明日の早朝、出発よ!」

「ふふふ、侵略者は皆殺し……」

 ジャンヌはヤル気マンマンで嬉しそう。


 交易都市にジーク、エド、シルフィード、クララを残すことにした。

 これだけの戦力を残せば交易都市は大丈夫だろう。

 いざとなれば、魔女さまーー、もいる。


「気をつけろよ」

 エドワードの別れに、


「あなたもね」

 と言い、王都に向けて出発した。

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