第85話 騎士姫
天空の魔法陣から一人の少女のシルエット。
稲光と共に、文字が脳裏に刻まれる。
聖ミカエルが加護を与えし聖人、
オルレアンの麗しの乙女、
聖なる殉教者にして、神の
ド派手な演出は、今、この他にいる者全てが体験したようで、
「聖人??」
「神の
などの声が聞こえる。
地上に降ろされた光の中から、騎士姿の少女が現れた。
凛とした空気を漂わせ、透き通る声で、
「我が名はジャンヌ、大天使ミカエル様の声を聞きし者」
堂々と言い切った。
「さあ、我を呼び覚まし者よ、何なりと命じよ」
「あの女を殺せ、我が
帝国の間者は、威勢良く、俺を指差す。
あのジャンヌ、ステカン、現凸、フルスキル!
「あれは、エルフか……、銀髪に、イフリートの加護だとぉ!」
ジャンヌは、騎士のくせに、名乗り合わず、突然、俺に剣を振りかざす。
彼女を見た瞬間、準備していたヘルメスの杖が悲鳴をあげる。
「折れたら弁償して貰うわよ」
彼女を力一杯、弾き返し、【フライ】で上空に退避する。
彼女も当然、地上を離れた。
「貴様だけは、許さんっっ!」
彼女は何故か激おこモード。
「そいつの四肢を切り裂け、ジャンヌ!」
地上からは、間者が吠える。
「天界の神々に、聖ミカエルの祝福を受けし、我ジャンヌが願い
詠唱物理! 最大火力の必殺技!
くそ、いきなりかよ!
現出した無数の刃が彼女を取り囲むように宙に浮く。
彼女が向ける切っ先に、それらは全て標的を定めた。
聖なる祝福を帯び、神々しく輝く数多の剣に、思わず畏れを抱く。
「滅せよ、
彼女が命に、全てが従い向かってくる。
衝撃が天を覆い、閃光が視界を奪う。
連撃数はゲーム中最大を誇り、効果範囲も広い、優秀な固有物理攻撃技【
余波が地上を襲い、皆を守る為、シルフィードが結界を張った。
「くっ、何よ、この威力」
彼女の声が震えるも、地上を余波からしっかりと守る。
「見よ、これが帝国の力だ! 次は、お前らに味あわせてやる!」
間者が益々勢いづいた。
閃光で痺れた視界が晴れ、俺の姿が夜空に浮かぶ。
彼女の全てを受けきり、高らかに宣言する。
「ジャンヌ、貴方じゃ、私に勝てない、降参するなら、今よ!」
デュエル一位、舐めんなっ!
サシの勝負で、俺に勝てる奴なんていない!
彼女を見たとき、魔防転換で、物防の基礎値を上げていた。
彼女は、伝説級なのに、全く魔法が使えない稀なキャラ、使いどころを間違えば、命取りになる戦術も、彼女には、有効だ。
それでも、補正値を無視する【
彼女の物攻は高くない。
無傷で彼女の最大を受け切った。
「き、貴様だけは絶対に許さない!」
彼女の足が僅かに震えた。
その隙に背後に回る。
殺気を帯びたジャンヌの剣が反応し俺に迫る。
流石に勘は良いようだ。
それでも、難なくかわし、飛び蹴りを彼女に決める。
「くっ」
彼女の悲鳴。
また、別の固有スキルを発動されたら流石に厄介なので、
続けざまにかかと落としで、ジャンヌを地上に叩きつけ、馬乗りでボコボコに……、
「や、やめろ、ま、参った、うげっ」
「今さら、遅いのよ」
ジャンヌは強い、彼女を好んで使うプレイヤーも多く人気キャラだ。
しかしデュエルでは、百位止まりで五十位の壁は越えることは出来ない、それでも、伝説級では優秀な性能とも言えるが……。
「う、うえーん」
あっ、泣いちゃった、ちょっと可哀想なので手を止める。
そんな彼女の真骨頂はパーティ戦だ。
優秀な固有スキルを数多く所持するジャンヌだが、現凸してもステは低い。だから、仲間のバフを必要とする。
しっかりバフで強化すれば、神話級とも充分張り合える優秀さ、ちょっと扱いが面倒で難しいが、多くの人が彼女を支持し愛用した。
一人では、実力を発揮できない。
仲間を得れば、その強さは、目を見張る。
彼女の敗因は、単騎で召喚されたこと。
相変わらず、帝国は下手くそだ。
ジャンヌが可哀想になり自由にしてやる。
ヒック、ヒックと泣きながら、
「悔しくなんかないんだからね」
と彼女は強がった。
「ま、待て、や、やめろ」
間者の方は、ワンパンで片が付いた。
南部の兵士が駆け寄ってくる、後は彼らに任せよう。
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