第9話 神獣ユニコーン

「あははは、お前ら、みんな、皆殺しだ!」

 突然、男は天を仰ぎ、召喚したウインドドラゴンの存在を思いだす。


 上空、空高くに、偉大な風の王、ウインドドラゴンは佇んでいる。


 その巨体に風を纏う天空の覇者は、地上の虫けら達を、蔑むように眺めていた。


「天空の覇者、偉大な風の王よ! 逆らうもの全てを滅ぼせ!」

 男は叫ぶと、両手を広げ、その場で回り始めた。


「あははは、皆殺し、皆殺しだ! 男も、女も、動くもの全て、そう、全てだ!」

 踊るのをやめ、男は、突然、冷静を取り戻した。


「やはり、結果は変わらない、いや、やっぱり、君も殺してあげる! きっと、君の奏でる鳴き声は素晴らしいに違いない! 素晴らしい、なんて素晴らしい!」

 他の生き残った竜騎士達も、期待を込め天を見上げている。

 このドラゴンがいる限り、俺達、いや帝国に敗北は無い!

 それは、彼らの確信であり、揺るぎない未来だった。


 俺は、隣のセシリアの肩を叩く、無策では、万一という事もある。


 先程、セシリアに耳打ちした、あれがあれば、ユニ子達は、神獣と神話で謳われた力を発揮するに違いない!


「え〜〜! ホントに大丈夫なんですか? 相手は、ドラゴンですよ! 昨日みたいに、ソフィアさんが、バーンって魔法を使えば良いじゃないですか!」

「ユニコーン達を信じてあげて! お願い!」

 奴らの習性は、神話となっているぐらいだ。

 絶対に上手く行くって!


 ふ〜、セシリアは、息を吐き、勇気を出す為に力を溜めている。


「あははは、あははは、抗っても無駄だ! ドラゴンに敵う者など、この世界にはいない!」

 再び、男は、天空を仰ぎ、叫んだ!


「さあ、ブレスを使え! ウインドドラゴン!」

 やばい、時間が無い、セシリア、早く!!


「ユニコーンさん達、こっちを見て!」

 ユニ子達は、硬い皮鎧を外したセシリアに目を奪われた。

 彼女は、今、Tシャツ姿だ!


「ユニコーンさん達、あのドラゴンを倒して! おねがい! が、ん、ばっ、てぇ〜!」

 セシリアは、ユニ子達に叫んだ!

 彼らの目が血走りはじめた。

 特に、激励のセシリアのジャンプ四回で、完全に逝った!


「ありがとう! 姉さん! もう死んでも悔いは無い!」

 あるユニコーンは、そう叫ぶと、ドラゴン目掛けてジャンプした。


「あんた、最高だぜ!」

 また、あるユニコーンは、賛辞を叫び突撃を始める。


「いいもの見た!」

「もう、死んでも構わない!」

「おっぱい最高!」

「巨乳、バンザイ!」

 ユニコーン達は、ドラゴン目掛けて突撃していく!

 あの世界の至宝は、俺達が絶対に守る!

 ユニコーン達は、その角を矢じりとし、一本の槍とその身を成す。


 幾多もの、白い槍がドラゴン目掛けて、地上より放たれていく。


 天空の覇者、風の王、ウインドドラゴンは、恐怖した。


 その槍から、感じる、凄まじい情念に。


 一本目の槍がドラゴンに刺さり、役目を終え、力無く、地上へと落ちていく。


 そう、一本では、ドラゴンは倒れないだろう。


 今、放たれた槍の数は、三百だ!


 倒れない筈が無い!


 白き槍、三百に串刺しにされた天空の覇者は、その力を地上に刻む事なく敗れ、光となり消えた。


「そんな……」

 帝国の竜騎士達は、力無く膝から地面に崩れた。


「ありえん! ありえん! ありえん!」

 諦めの悪い男は、俺に剣を振りかざしてきた。


 その剣を左手で掴む。


 男は、剣を取り戻そうと必死だが、俺は微動だにしない。


「ば、化物……」

 男の目は、恐怖に支配されていた。

 剣を手放し逃げ出そうとする。


「教えてあげるわ、花は愛でるものでなく、咲かせるものよ」

 右手の手刀で男の首をはねた。


 頭を失った胴体から、赤いハマユリのように血が噴き出した。

 その血は、地面に生えた草も、赤く赤く染めていく。


 こうして、帝国の竜騎士は、完全に敗北した。


「もう、やめて、くすぐったい」

 ユニ子達は、セシリアにたかっている。

 しばらくは、放っておいてやろう、ご褒美だ。


 やはり、ユニコーンは神話にあるように、処女、しかも巨乳好きの変態だ……。

 ノアが箱舟に誘った時も、処女がいないという理由で、断ったとか……。


 処女の俺を嫌う奴らは、もしかしたら、俺の魂の有り様を見破っているのかもしれない。




「ドラゴンが……ユニコーンに……」

 バーナード団長は、夢の世界にお出かけしている。しばらくは、帰ってこないだろう。


「あ〜ん、もうっ、やめてっ!」

 セシリアのくすぐったい声が辺りに響く。


 そして、俺は、朝食を再開した。



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